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 ガタン!と右端にいた審査官が立ち上がった。



「え?」



 他の人々の目線も、じっと見つめる先はわたしの頭の上ーーつまり札が一面に貼られた儀式の結果を見ている。


 この反応は、どういうこと?


 戸惑って声が出ない様子の人々が、しだいに夢から醒めたようにぎこちなく顔を見合わせる。



「かつてこんなことがあったか……」



「ありえないーー」



「でも、これは明確な結果よ」



 続けてほかの審査官たち、そして見学として見守りにきていた若手の守護術師たちや、黄蓋や魅音も。


 かすかな興奮が入り混じったざわめきが、波のように広がっていく。


 わたしは背中の札を見ようと体を捻った。



「えっ……!」



 そこには、思いがけない光景が広がっていた。



    ⌘ ⌘ ⌘



 ⌘ ⌘ ⌘



 札は、全てが染まっていた。


 けれど、それだけではない。


 札を支えていた台座からは、芽吹いた青々しい緑が茂り、ところどころに小ぶりな白い花を咲かせていたのだ。



「これは……一体……どういうこと?」



 何が起こったのだろうか。


 先ほど以上に戸惑いを感じて、わたしは手元の楽器をぎゅっと抱きしめる。


 その時、ドン!とまた太鼓の音が響いた。


 そして、



「静かに」



 凛とした声が場を支配した。銀狼だ。


「皆、静かに」


 ざわめいていた空気が一瞬にして静まった。


「審査官たちよ、札の検分を」



 慌ただしく審査官たちが行動を起こし、すぐに銀狼のもとに駆け寄る。


「美雨」


 彼がわたしの名を呼ぶ。


「こちらに」


「はい」



 示された彼の隣に向かう。泉から上がり、透明な雫を滴らせながら彼を見上げる。

 ふっとわたしに笑いかけてくれた銀狼は、そのまま周囲の人々に向き直る。



「美雨は条件とされていた札全てを染め上げた!」


 朗々とした声は、この天に向かって響いていく。



「皆の者。審査官だけでない、ここにいる全ての者が証言者となるだろう。彼女の示した力に異論があるものはあるか!?」



 その声に打たれたかのように、次々と銀狼に近いものからこうべを垂れ、平伏していく。



「これにてーー儀式を終える」



 しん、と静まり返った会場。そこに、


「美雨、お前ならやると思ってた!」


 黄蓋の野太い声が轟いて、拍手はどんどん大きくなり、うねりのようにわたしの体に響いた。


 中の誰かは、ピュー!と指笛まで吹いて祝福をしてくれたようだった。



    ⌘ ⌘ ⌘



「わたしは、儀式を通ったーーのですね」



 翌日になっても、なんだか夢を見ている気分のわたしに変わって、黄蓋と魅音が祝いの宴を準備してくれている。



「ああ、その通りだ」



 尋ねるたびに、何度でも同じようにほんのりと微笑んで答えてくれるのは銀狼だった。


 彼はここに帰ってきてから、旅の間が優雅に思えるほどに多忙だったけれど、それでも日に一度はわたしとこうしてお茶をする時間を確保してくれていた。



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