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 目が合うと、その美しい顔に浮かんだ微笑みには、なんの不安も浮かんでいなかった。



「貴女には力がある。わたしは、貴女ならばこの程度のことはできると信じている」



 彼はーー信じている。わたしを。



「貴女に選んでもらいたい。どうやって自分の力を示すのか。今はどんなに困難に思えても、わたしは貴女ならできると思っているし、わたしが貴女を支える」



 そのときに湧き上がった気持ちを、なんと表現すれば良いのだろう。


 喜び。


 驚き。


 幸せ。


 戸惑い。


 恥じらい。


 他にもさまざまな気持ちがまぜこぜになって、一気にわたしの頬を染めた。



「わたし……」



 これまで無能と言われるばかりだった。

 でも、銀狼は信じてくれている。

 わたしがわたし自身の力を示せると。


 ならば、わたしはーー。



「わたしは、皆さまにご納得いただけるよう、全力を尽くしたいと思います」


「…………!」



 何人かが息を呑む音がした。

 銀狼がにやりと笑った。



「ああ、貴女ならできる」



 そして彼は腕を振り払って言った。



「試しの儀式は5日後! 皆が納得するよう、護衛術師の儀式で計れる最大の値を彼女が超えることを示そう」


「かしこまりました」


「ご随意に」



 その場にいた皆が、わたしを含めてそっとこうべを垂れた。



    ⌘ ⌘ ⌘





「知りませんでした。黄蓋が四大老のひとりだったなんて」



 夜のことだった。

 銀狼、黄蓋とわたしは、こじんまりと落ち着いた部屋に集まっていた。


 あの四大老との会談のあと、慌ただしく湯を使って着替えると、ここに案内されたのだ。


 床には絨毯が敷かれ、壁際には使い込まれて飴色になった家具が並んでいる。


 先ほど四大老と会った部屋が、かしこまった会談のためだとしたら、こちらの部屋は個人の私室の趣だった。


 片隅には寝台まで設られていて、わたしはなにか既視感を覚えた。


 そうだわ。


 以前、掃除のために入った泰然の母ーー叔母さん部屋。

 あの部屋の雰囲気に似ている。

 もっとも、叔母の部屋はもう少し雑然としていて、彼女の集めた宝飾品や衣服などを納めた籠が積み上げられていた。


 それと比べると、こちらの部屋の主人は、厳選した品々を長く愛用することを好む人のようだった。



「狭くて悪りぃな。この本邸に泊まるときはどうもここじゃねぇと落ち着かなくってよ」



 黄蓋がどすんと寝台に腰掛けながら言った。



「黄蓋の部屋なのですか?」



 わたしが尋ねると、彼は肩をすくめて笑った。



「なんだかんだそうなってんな! 俺が泊まるたびにここを使うから、今じゃ俺専用みたいになってる」


「もっと良い部屋を準備するといっても、黄蓋はここが良いと言うのさ」


「そうなのですね……なんだかわかる気もします。ここは居心地が良くて、なんだか温かい気がします」


「おっ、姫さんはいい感性をしてるねぇ」



 黄蓋は嬉しそうだった。

 そのとき、


「入るよ」


 艶っぽい声がして、カタンと戸が開いた。


「おや、銀狼さまと美雨さまもいらっしゃったのかい。急にお邪魔してすみませんね」


 それは、あの四大老のひとり。

 色っぽい女性だった。

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