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 目覚めると、目の前に銀狼の美しい顔があった。



「ーー!!」



 驚いて息を呑む。

 いったいどういうこと?

 頭が混乱して、とっさに身じろぎして起き上がってしまう。

 吐息が感じられるほど近くで、銀狼と向かい合って眠っていたのだもの。


 どうやら先ほどの卓の近くを片付けて、簡易的な仮眠用の敷布を二組敷いて横になっていたようだった。片方にわたしが、もう一つの敷布には銀狼が包まっていたようだけれど、どう見ても無理矢理つくった空間なので、少し寝返りをするだけでお互いに体が触れてしまうほどの狭さだった。



「う……うん…。起きた…か?」


 わたしが動いたせいだろう、銀狼が目を覚ます。


「おっ、おはようございます!」


「ふふっ、おはよう。美雨」


 ふぁっとあくびする銀狼はまだ眠そうだった。


「起こしてしまいましたか?」


 心臓がどくどくと鳴っているのを無視して、なるべく平静を装ってうかがってみる。


「もうすぐ…もともと起きる予定の時間でもあった…ちょうど良かった」



 そう言いつつ、またうとうと目が閉じていて、なんだか可愛らしかった。意外と寝起きは弱いのかも知れない。寝起きでも銀狼は美しかった。すこしだけ寝乱れた髪さえ色っぽく、わたしは慌てて自分の髪を見苦しくないように整えた。



「よく眠れたみたいだね」


 微笑んだ銀狼にそう言われて気づいた。陽がずいぶんと傾いている。


「今……もう夕方ですか!?」


 慌てて敷布から飛びあがったそのとき


「おっ? ふたりとも起きたのか」



 布で仕切った向こう側から黄蓋の声がした。

 そして、目をパチパチと瞬かせた銀狼の焦点がしだいにあってきて、わたしの顔をしっかりと見つめたーー。と思ったそのとき、彼は慌てて起き上がった。



「ああ、黄蓋。少し待ってくれ」


 銀狼はわたしを覆い隠すように敷布をかけると、焦った顔をした。


「美雨! 衣が緩んでいるようだ…」



 わたしも慌てて顔を下に向けると、たしかに胸元で結び合わせていた前身ごろがほどけて、少しだけ肌着が見えていた。銀狼がかけてくれた布の下で、こそこそと身だしなみを整える。



「お見苦しいものをすみません…」


 わたしとしては、白家にいたときのほうが余程ひどい格好をしていたので、このくらい見られても気にならなくなっていた。なにか叔母の気に食わないことがあった夜に、肌着姿で水を浴びせられたこともあったからーー。

 なんの自慢にもならないけれど。

 むしろ、こんなに痩せて鎖骨の浮いた胸元を見せてしまって、銀狼に申し訳なかった。

 けれど律儀に顔を背けて銀狼は言う。向こうを向いた顔は見えなかったけれど、少しだけ耳が赤くなっていた。



「場所がなくてわるかったが、共寝するのは若い娘に対して配慮が足らなかったな……。野営や旅路ではこういった雑魚寝も多いものだから、つい何の気なしに寝かせてしまった」



 本当に悪気がなかったのだろうことがその声からもわかった。

 お互いにきちんと身だしなみを整えると、銀狼に続いて黄蓋のいる側へと顔を出す。

 ただ、ふとそのとき頭によぎった。眠る前の出来事といい、今の言動といい、まるで銀狼は雛鳥の親のようで。

 これはまるでーー



「銀狼、なんだかわたしのお父さまみたい……」



 布をくぐりながら、つい声に出してしまったわたしの想いに、ふたりはあっけにとられたような表情で顔を見合わせたしたあと、黄蓋は思い切り吹き出して「はっはっはっ!」と腹を抱えて笑い出してしまった。


 わたしのしては最上級の愛しい気持ちがこぼれたのだけれど、ひいひい笑う黄蓋と、複雑な顔をした銀狼からすると、言葉選びを間違えてしまったのかも知れない。

 これから学ばないといけないことだらけだ。

 わたしは眉を下げて情けない顔をしてしまった。



「はぁ〜、色男の銀狼坊っちゃんが形無しだな」


「うるさい、黙っておけ」


「あの、申し訳ございません。ご気分が悪かったですよね! まだお若い銀狼を、30を超えた父に喩えるなんて……」



「あぁ、ははは! 姫さんは面白いなぁ。まぁ、年齢っていうより関係性の問題だよな」

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