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    ⌘ ⌘ ⌘



 旅支度を整えて宿屋を出ると、少し風はあるもののからりと晴れたよい天気だった。歩き始めると、わたしの肩に乗った子猫がにゃんと鳴いた。


 結局この子も連れて行くことになったのだ。


 妖となったあとに元の動物に戻って生きていることなどほとんどないのだから、このあとの経過をもう少し診ていったほうが良いのでは?というわたしの意見を受け入れてもらった。

 けれど本当はなにより、可愛らしくわたしたちの足首に体を擦りつけてくるこの子猫を置いて行くなんて寂しくてならなくて……。そんなわたしのわがままを、銀狼たちに色々な理由をつけて納得してもらったのだった。



「出発するが、首都に行く道すがら、妖退治もしながらの旅になる」


「……! そうなのですか?」


 わたしは驚いた。妖封じは激しい戦いになることも多い。戦闘に特化した術師や、術師から宝玉を託された戦士がわざわざ派遣されるものだと思っていた。



「危険が大きいと聞きますが……」



 自分というよりも、当主である銀狼や、その片腕である黄蓋がそのような危険をこの旅で負わなければならないことが心配だった。武術の心得も経験も何もない妖封じにおいて、わたしはただのお荷物でしかないだろう。この子猫のほうがまだしも逃げ足が早いと思う。わたしが傷つくだけならまだしも、そんな足手まといを連れた旅になってしまったことで、彼らが怪我をしないか心配だった。



「これもまた難儀な話でな。今回、君を迎えに来る上で、銀狼家の当主という肩書きは必要ではあったが、同時にこの名に課せられた仕事も多いのだ。それをやりくりして、道中の妖への対処という理由もあって来たことになっている」


「あーあ、めんどくせぇよなぁ。最近はやたらと銀狼家の治める土地での妖の出没が活発になっているし」



 銀狼は「仕方がないだろう」と真面目に諌めていた。高貴な雰囲気をまとっている若い銀狼と、気安いところがある大柄で年上の黄蓋。


 普段は銀狼の美しさや、圧倒的な雰囲気もあって彼がその場にいるだけで空気を支配しているように感じられる。けれど、目立たないように黒に染めた髪や、街並みに溶け込むような服装、そして旅路の気楽さもあってか、改めてこうしてみると、どちらが主従かわからない。


ーーううん、主従というより、まるで年齢差のある友人関係のようだわ。


 さらに黄蓋の肩に子猫が飛び移って、まるで自分が誰よりも偉いかのように胸を張っているものだから、


「ふふっ」


 わたしは微笑ましくなって、思わず笑ってしまった。



「……美雨」


「……お!?」


「にゃ〜」


 いきなり二人と一匹に見つめられて、わたしは戸惑った。


「どうかされましたか?」


「いや……笑った顔も好ましいと思ってな」



 銀狼がその美しい顔で微笑み返してきたので、また顔が熱くなったように感じた。わたしは彼と再会してから、なんだか今までになく気恥ずかしくなったり、胸が変にトクトクと鳴ったりする。



「確かにな。そうやって笑ってていて欲しいもんだな。そうしてくれれば銀狼さまもご機嫌だし」


「ああ、その通りだ。美雨が安心して笑っていられるよう、我々が道中の安全に努めるとしよう」


    ⌘ ⌘ ⌘


 しかし、旅はさっそく異変に襲われた。

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