#5 生首ナイフ
俺は川辺の石に腰掛けポケットからタバコを一本取り出し火をつける。足元ではネロが不思議そうにプルプルしている。
とりあえず何が起こったのか整理しよう。
まずウサギが出てくる
↓
首が飛ぶ
↓
ネロの前には魔法陣が出ていた
これは多分ネロがなんかした結果ウサギを倒したんだろうけど魔法かな?魔法だよなぁ。スライムって魔法使えるの?有名RPGのスライムは火の魔法使えるけどさぁいざ見てみるとマジで信じられない。もしかしてネロ弱ってなくて敵対してたら俺その時点で…いや考えない方が良いな事実ネロは味方になってくれているしとても心強い。ちょっとほんのちょっと怖いけど。
俺は川につけられている首のなくなったウサギの体を見つめる。肉が手に入ったのは行幸だよな。うんそうだよ肉食えるんだよ良かったじゃん。
でもどうすっかなウサギなんて捌いたことないし皮を剝ぐためのナイフが無い。
ナイフのことを考え俺はふとウサギの頭の方を見る。あれ使えるか?とんでもなく趣味の悪いナイフと思えばいけるか?いや行けるかどうかじゃないな今は食うためにとれる手段はとるべきだ魔法のことはその後だ。そういえば魔法でさばけないのか?現にあのウサギの首を切断したのはこのネロだしちょっとお願いしてみるか。
「ネロあのウサギの皮剥ぐことってできる?」
俺は身振り手振りを含めて伝えてみたがうまく伝わらないようでネロは多分首をかしげている。首もないし特に見た目も変わってないから俺がそう思ってるだけなんだけど。
やるしかないか。
俺はウサギの頭を片手に胴体をさばき始めた。意外とこの角は切れ味が良いようで皮を剥ぐことは問題なくできそうだ。
俺が胴体の皮を何とか剥ぎ終わった時
『習熟度が一定に達したためスキル【分離】を獲得しました』
と聞こえてきた俺はまた突然聞こえてきた声にゾクッとしたがとりあえず使ってみることにした。
分離と唱えると手の先が光り手を加えずとも切り分けたいところがスパッと切れた。切れたというよりは別れたというのが正しいと思わされる感じだった。
「おぉ」
俺はにやにやしながらその光景を見ていた。だって一人暮らししてた頃は包丁使って捌いてたんだぜ?そのあと包丁洗う手間とかも全部なくなったとしたら喜ぶしかない。
俺はついでにウサギの頭から角を分離させた持ち手がかなり短いが木の枝にくっつければそのままナイフとして使えそうだ。
俺は切り分けた肉を枝に刺し焚火で焼き始めた。
「ネロも食べる?」
そういってネロに生のままウサギ肉を渡してみたがネロは肉に目もくれず俺の手にくっついてきた。テイムしたときは気づかなかったが俺の体から光の粒子のようなものが出てきてはネロに吸収されている。
何かを吸われているのだろうけど今は特に悪影響が無いのでネロがくっついている右手はそのままに焼けた肉を左手で食べる
「塩コショウがほしい~」
そんなことを言いながらも肉とリンゴを食べ俺はあまりに多くのことが起こった1日を目を閉じ、終えることとした...