第2話 君に、誰よりも一番に好かれたい。
公邸までの往路でも、デゼルはすれ違った人を何人か昏倒させて、みんな、世にも幸せそうな死に顔だったけど(死んでないよ)、ガゼル様はさすが、すごく驚かれたけど、昏倒されたりはしなかった。
「ええと、つまり、自分の魔法で三歳になって、そうしたら、魔法の使い方がわからなくなった?」
「はい」
ガゼル様は公務でお忙しいはずなのに、デゼルのことで至急、ご相談させて頂きたいことがあってと伝えてもらったら、割とすぐに時間をとって下さったんだ。
後でマリベル様から聞いたんだけど、大切な公務を端からドタキャンされて、あのガゼル様がって、みんなを驚かせたんだって。
ガゼル様をお断りする時に、私が公妃になるときっと国が乱れるって、デゼルが言ってたの、本当だったみたいだ。
これだけデゼルを溺愛されてるガゼル様が、高熱を出して寝込んだデゼルを放っておけるはずがないもんね。デゼルってほんとに、よく、体調を崩すから。デゼルが寝込んだら、傍にいてあげないと、どんどん悪くなるんだ。
「サイファのこともわからないの?」
僕がこくんとうなずくと、僕からさっと、ガゼル様をじーっと見詰めるデゼルを抱き取ったガゼル様が、デゼルに聞いた。
「ねぇ、デゼル。私が好き?」
あ。
そうきたか。
ガゼル様って、ほんとに、デゼルが大好きなんだ。
いつもは、デゼルが僕を大好きだから遠慮して下さってるけど。
ガゼル様をじーっと見詰めたデゼルが、可愛らしく首を傾げた後、こくんとうなずいた。
ガゼル様が、すごく嬉しそうに微笑まれて、それから、デゼルを優しく抱き締めた。
デゼルは心地好さげに、ガゼル様の胸にもたれておとなしくしてた。そうかと思えば、幼い子供らしい怖いもの知らずな遠慮のなさで、ガゼル様の胸に零れた綺麗なプラチナ・ブロンドの手触りを試したり、つかんだりして、ガゼル様を笑わせてた。
僕、デゼルの気持ちわかるな。
僕も、ガゼル様に抱き締めてもらうのは心地好くて好き。
ガゼル様はすごく綺麗だし、誠実で優しい方だから、傍にいて下さると安心するんだ。
「ねぇ、デゼル。私とサイファ、どちらが好き?」
あ。
ガゼル様、そんなこと聞くんだ。
やっぱり、僕より先にデゼルに会えていたらって、思ってたのかな。
デゼルはガゼル様をじっと見て、それから僕を見て、また、ガゼル様を見て、僕を見た。
「うぅん」
むずかしそうな顔をして、デゼルが可愛い眉間にささやかなしわを寄せた。
それから、澄み切った蒼の瞳で、ガゼル様をまたじっと見た。
「だぁれ?」
あ、そうか。
「私はガゼル」
ガゼル様も、期待と緊張の入り混じった碧の瞳でデゼルを見詰めた。
う。
わ。
どうしよう、ガゼル様が本気すぎる。
これ、デゼルにガゼル様って答えてもらえなかったら、すごく傷つかれるんじゃ。
なんだか、見てる僕の方がハラハラしてしまうような。
ガゼル様って、答えてあげて欲しいような。
僕はガゼル様と比べて迷うくらいデゼルに好かれてるなら、それで満足なんだ。
だって、ガゼル様だよ?
僕、同性だったらガゼル様が一番好きなんだ。
僕がガゼル様と比べて遜色しないなんて、そんなのって、すごく嬉しい。
「んぅ~、んぅ~、がぜる……さいふぁ……」
デゼルが泣きそうな顔になって、ガゼル様を見た。
「でぜる、わかんない。がぜるはすごくきれい」
「サイファは?」
「さいふぁ……」
聞かれたデゼルが、花が綻ぶように、嬉しそうに笑った。







