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死んだ奴は永遠にいなくならない

 この集落の家々には百味箪笥やくみだんすがあり、沢山の棚の中にはその家ごとに伝えられてきた配合のための材料が入っている。

 特にイベの家のものは他国の材料のために増設されていて、文字通り無数の棚が壁一面を埋めていた。

 彼女はバラニにいくつかの配合を教えてあげるつもりで、踏み台を使って上の棚に手を伸ばしたが、彼女の体は踏み台から崩れ落ちた。


「わたくしは居間でお茶をいただいてたんです。奥の部屋から大きな物音を聞いて、慌てて駆け付けたんです」

 イベとリコの家の前で、マサルはバラニから事情を聞いていた。

 この家は集落の中でも奥まった場所にあって、横道を使うと族長の家と行き来するのに数分程度で済む。

 今や自宅となった族長邸で話を聞こうかと思ったが、バラニは「イベさんが心配だから」と譲らなかった。

 実際、彼女が手当をしてくれたおかげで、イベの容態は落ち着いている。

 マサルがリコと一緒に駆け付けたときにはもう、イベは綿布団の上で寝息を立てていた。

 病床には今、リコが付き添っている。

 マサルは少し迷ったが、バラニが責任を感じないために、また自分の懸念も伝えるためにも、ガナの街での出来事をかいつまんで話した。

 自分が転生した存在であることや、集落の神の素性の怪しさなどについては、もちろん伏せた。

 バラニは仕事柄から聞き上手で、彼女の相槌につられて、思っていたよりも随分と細かく、マサルは説明していた。その中にはイベの母親のことも含まれている。

 そしてバラニと出会った所にまで、時の流れが追い付いたのだった。

「イベさんが疲れて倒れただけなら、まだ良いんです。今後は気を付ければ済むから。ただ……」

「ただ、お母様の体のことが影響してないかが心配。そういうことですね?」

 マサルが頷くと、バラニは唸った。

 それはそうだろう。彼女はイベの母親を診ていないのだから。現代世界でさえ自分が診てもいない患者のことは言い切れないものだ。

 それでも彼女は、やはり責任感からなのだろう、答えてくれた。

「イベさんの体が弱ってるということはなさそうですし、呼吸も落ち着いています。ですから、体の疲れもあるにはあるとしても……これは当て推量ですが……心労かもしれませんね」

「心労?」

「ええ。例えば親しい方が亡くなったとか」

「ぶっふ!」

 マサルは思わず咽た。

 まさに、その通りの出来事があったのだから。

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