平和という漢字の中にはエロという文字が入ってる説
タマニに勧誘された日の夜に、マサルはイベに相談した。
ちょうど彼女には聞きたいことがあったし、リコとも共有し易い話題だった。
宿の部屋でマサルの話を聞いたとき、イベはお気に入りの配合で作ったお茶を啜っていた。
リコはサウナあがりで胸元にレースをあしらった寝間着を着ており、少し落ち着きが無かった。彼女は破れたドレスの代わりに何着かマカ・モーカルのツテで用立ててもらったのだが、その中に刺激的な寝間着や下着類も含まれていたのだった。
「なんかさ、あたしだけ気合入ってて、馬鹿みてえじゃねえ?」
「ううん、綺麗だよ。お腹が隠れてるのも似合うよね」
「そそそそ、そうか!? ほんと? そっか……」
ごほん、と咳払いをしたのはイベである。
マサルとリコはそれぞれ自分の茶を啜って、文字通りお茶を濁した。
イベは会話を仕切り直した。
「何をするにしても、まずは、先日の私とマサルさんの間に起こったことを話さないといけません」
お互いの体に起こった異変……あの青い炎の正体。
マサルもある程度は予想をしていたが、イベははっきりと答えた。
「愛の力です」
マサルとリコは仲良く茶でむせてから、イベに問い質した。
「それ本気で言ってます?」
「姉貴、こっちに来てから頭が愉快になってないか?」
二人の言葉にもイベは平然としていた。本気なのである。
「族長と結ばれた巫女は、溜め込んだ生気を送り込むことができる。前の族長から教わってはいたのですが、私も実際に使ってみるまでは加減や効果の程は把握できていませんでした」
その結果として、イベは倒れたらしい。
マサルはその効果の凄さは身をもって味わったから理解は早かったが、リコはあることで引っかかっていた。
「あのさ、それ、姉貴じゃないと使えないんだよな?」
「……はい。それなりの修行や素養が必要なことですから」
下手に誤魔化さず、妹に告げるイベ。
それに対して、リコは頷いた。
「ま、あたしには腕っぷしがあるからな。あれもこれもってわがままは言わねえよ」
「えー? 言うと思ってたのにー! お姉ちゃん寂しいな〜?」
「ひでえ!」
馬鹿なやり取りではあったが、そこにはお互いへの信頼感が見えた。
マサルが感じ取れていた以上に、集落を出てからの二人の間では、お互いを見る目が鍛えられていたのだろう。
「とにかく、あの現象はマサルさんが族長だからできることなんです。だから……族長としてきちんと役目を果たさないと、またああいう危険が迫ったとき、助けられないかもしれません」
「ってことは……まあ、やっぱり神様と一度、ちゃんと話さないとだよなあ」
基本方針は変わらない、ということだ。
マサルは少し考えてから、二人に言った。
「よし、じゃあ明日のうちにここでやり残したことを済ませて、帰ろうか。それで良い?」
二人はお互いを見てから、マサルに頷いた。
それからニヤリと笑って、こう言った。
「じゃあ、とりあえずヤリ残してることをヤッちゃいましょうか?」
「あたし、試してみたいヤリ方があんだよな」