安全な食材
「平均寿命がついに150歳を突破しました。」
悟はいつものようにロボットから流れるラジオの音に耳を傾けながら朝食をとっていた。
彼は平凡な中年の男だが、幸せな生活を送っている。部屋は申し分のない広さであり、掃除も行き届いているし、その他洗濯などすべてロボットが行なってくれるおかげである。そして何より、美味しく、添加物の一切入っていない安全な食材を食べることができる。
さらにロボットが毎日の健康状態に加え、毎回食べた食材を記録してくれる。これは彼に限ったことでなく国民全員がこのような生活を送っている。
「しかし、昔と違って戦争やテロは起きないし、犯罪もニュースで聞くことがなくなるとは。平和な世の中になったなあ。」
そう呟きながらロケット発射場へ向かった。
なぜなら50歳になった者は皆、他の星へと引っ越すことになっているからである。
発射場アナウンスが
「土地不足や食糧不足解決のため、引っ越し後は元の星には戻れませんがご了承下さい。」
と告げている。
無論、悟はこの事を知っており、年下の知り合いとしばらく会えないことは残念に思いつつ、平均寿命を考えると、待っていればむこうの星で再会でき、それ以上に老後を楽しむ余暇地であるため高揚していた。ただ彼には一つだけ気になることがあった。
「何でロケットに乗りこむのに健康状態はまだしも、今まで食べた食材の記録の用紙を貼り付けるのだろうか。」....