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お狐ちゃんのお嫁入り  作者: 熊煮
5章:始まりの冬
41/50

41.寒い日々がやってきた

 秋が過ぎ去った。

 気温が本格的に下がり始め、いよいよもって冬が始まろうとしていた。


「うぅ、さむっ……」


 布団の中にいてもその寒さは中々に堪える。特に朝方はひどいもので、一人で起きると大体震えることになる。もちろん冬香も例外ではない。


「おはな~、おはな~っ」


 そして情けない声で助けを呼ぶのがここ最近の朝の恒例行事と化していた。


「はーい、どうしましたか?」


 そしてその声に反応して台所からヒョコっと顔を出したのは狐少女のお花だ。手にはお玉を持っており朝食を作っている途中だというのがハッキリとわかる。


「さむいー、助けてー」

「はいはいー」


 その言葉に煙たがるどころか嬉しそうに返事をしたお花は冬香のそばに寄り添った。


「ごめんねぇ、毎朝毎朝。おはよう」

「おはようございます。寒くなってきましたからしょうがないですよ」


 冬香は座った姿勢で布団を背中から被り、そのまま包み込むようにお花を前で抱きしめる。彼女は基礎体温が高く、しかも尻尾もフワフワなので自然と暖まるのだ。

 正直暖房をつければと思うのだが、そうしてしまうと朝にこうして抱きしめられないのでつけてないのだ。ぶっちゃけると冬香の我儘である。


「仕事に行ってるとき寒かったら暖房つけてねぇ」

「私は寒さには強いですから大丈夫ですよ」


 お花はそう言って前に回っている冬香の手に自分の手を添えた。狐は寒さに強いという説もあり、それが関係しているかわからないが彼女は基本的に冬でもいつもと変わらない。


「いいなぁ、私も寒いのに強いといいんだけど」

「でも、そうなると朝にこうしなくてもよくなっちゃいますね」

「……やっぱり寒さには弱くていいかも」

「ふふっ」


 紅葉狩りでの出来事があってから、二人の距離は……そこまで変わってはいなかった。ただそれはあくまで客観的に見ただけのもので実のところかなり関係は深くなっていた。

 お互いの気持ちを曝け出したおかげなのか、遠慮という名の壁と溝がなくなり、その結果割と冬香が積極的に動く様になりお花はそれを受け入れる形になっていた。


 まさに今の状況が良い例である。


「冬香さん、そろそろ朝ごはんを食べないと」

「ううー、仕事行きたくないなぁ」

「大変でしょうけど頑張ってください。ちゃんとお弁当も作りましたから」

「わ、本当? いつもありがとねぇ」


 紅葉狩りで弁当を作ってから、お花は何か閃いたのか仕事の日は弁当を作るようになった。どこで学んできたのかしっかりと保温タイプの弁当箱を買ってきて、そのおかげで温かくて美味しい昼食を頂けている。以前のコンビニでパンを買って適当に済ましていたのがもう懐かしいぐらいだ。


「ほら、ご飯冷めちゃいますから。顔を洗ってきてください」

「ふぁい」


 後頭部に顔を埋めていた冬香はそう言われて渋々布団から出る。いつもの流れではあるが何だかんだお互い飽きることなく毎日やっている。


「じゃあ行ってきますー」

「はい、行ってらっしゃいませ。夜も冷えるので早く帰って来てくださいね」

「うー、頑張る」


 出勤前にもう一度ハグする。この前までどこか遠慮していた様子はもう微塵もない。

 別れを散々惜しんでから冬香は出勤する。風が吹くと鋭い寒さが襲ってきて

身を縮みこませる。


 そんな冬香はお花と住んでいるアパートを振り返り、うーんと唸る。ここ最近彼女の中である思いが強くなっていた。

ブックマークや評価、感想や誤字脱字報告などいつもありがとうございます!

次回の投稿は4/19の20時頃を予定しておりますが、仕事の関係でもしかしたら投稿できないかもしれません。その際はまた活動報告などに載せますのでよろしくお願いいたします。

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