34.何事も二人一緒に
投稿時間がだいぶ遅れてしまいました。申し訳ありません
本当のお花について知った冬香であったが、その関係が大きく変わることはなかった。
お花は自分自身を落ちこぼれだと思っているらしいが、実際のところそんなことはない。努力の成果というか、そうならないために必死に頑張ってきたことがちゃんと出来ているのだから冬香からすれば十分過ぎるのだ。
「でもいい機会だから、お互いに役割分担をしましょう」
「役割分担ですか?」
だけど、本当のお花の気持ちがわかったことは大きい。今まで何でも出来そうだからと気にせず頼っていたが、それを続けていたら間違いなく彼女の負担になっていたはずなのだから。
「まぁ役割分担といっても私は平日に仕事があるし、とりあえず土日ね。その日はお花の休日にするから」
「えっ……ええ!?」
それを聞いて驚いた声をお花があげる。冬香の役に立つことで存在意義を見いだそうとしていた彼女にとって土曜日と日曜日何もしないというのは不安になる事案だ。
だけど今回は冬香にも譲れない部分がある。愛想を尽かされる怖さは彼女が最も知っているからだ。お花に無理をさせて出ていかれたら今度こそ立ち直れないかもしれない……それぐらいちょっと依存気味である。
「別に何もするなって言ってるわけじゃないからね? でもよく考えればお花にも休日はいるじゃない?」
「私は別に任せて頂ければ何でも……」
「だーめ! お花は家事手伝いさんじゃないでしょ? 一緒に暮らすなら協力するのは当たり前でしょう?」
「それは、そうかもしれませんが……」
とにかく! と冬香はちょっと無理矢理に話を区切り、お花の肩に手を置いた。
「私はね、お花に家事をして貰いたいんじゃなくて傍にいて欲しいの。お花はそれじゃ嫌?」
「い、いやなんかじゃないです! でも……何かしないと、役に立たないと迷惑じゃないですか……?」
「そんなことない。お花は私が役に立たないからって追い出す人間に見える?」
「それは、見えないですけど……」
「そうでしょう。ほら、じゃあこの話はお終い。ひとまず次の休日から実践してみましょう」
「は、はい……」
お花は完全には納得していなかったが冬香が頑なに譲らないことがわかったのか、渋々と承諾した。
それから初めての休日を迎える。
「あ、あの本当に何もしなくてもいいんですか?」
「いいよいいよー。お花は昼寝でもしてて」
「さ、流石にそれは……!」
土曜日の午後。昼食を済ませてからしばらくして部屋の掃除を始めようとしたお花を冬香は制止していた。今日の家事は彼女が担当するつもりらしい。
「まあまあ、テレビでも見てゆっくりしてて」
「あうぅ」
何もしないということになれていないお花は掃除や洗濯をする冬香を見ながらオロオロするばかりだ。
「そういえばお花は何かしたいことはないの? 行きたいところとかそういうの」
「え? うーん……急に言われてもちょっと思いつかないですね」
「それもそっか。じゃあ昼寝とかどう? お花って昼寝好きでしょ?」
「え!? べ、別に私は好きってわけじゃ」
「隠さなくてもいいって」
付き合っていて気づいたことではあるが、お花は結構な頻度で昼寝をしている。昼食後に眠くなるのか日差しが入ってくるとよくそこでウトウトとしているのだ。
この前の夕食の作り忘れも昼寝のし過ぎだったらしいので、そう考えたのだが反応を見ると正解らしい。
「じゃあひと段落したし昼寝しよっか」
「うー……」
ちょうど窓から日が入っている場所に布団を敷く。以前までは冬香も疲れ切ってよく昼寝はしていたが、今日のそれはちょっと違う。
「じゃあ目覚ましをかけて、今日の夜は私が作るからね」
「あの、いいんですか? 掃除とかその他諸々……」
「いいのいいの。はい、おやすみー」
「わぷっ」
布団に寝転がってお花を抱え込む。ちょっと困惑しているようだったが何だかんだお花も大人しく腕の中に収まったので良しとした。
このままお花も気を少し緩めてくれればいいんだけどと冬香は思いながら、秋の昼を睡眠に費やした。
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