18.モフモフする権利
少し遅れました。申し訳ありません。
日曜日。何だかんだ食事だけは頼ることになった冬香は今日一日を休養日と決めた。
つまるところ単純に家でゴロゴロする日である。
「あのさー」
「はい?」
時刻は1時を回り穏やかな午後。昼食を頂いた後にまったりとした時間が流れていた。その中で冬香は声を掛ける。
「お花って何か趣味とかあるの?」
「え? 趣味ですか? う~ん」
今までの冬香の休日は非常にだらけたものであった。昼前に起きてから疲れを少しでも減らすために何もしないような休日だ。
今日もとりあえず仕事の疲れを癒すために何をするでもなくぼんやりと過ごそうと思っていたのだが、狐少女が同室しているというのが何とも落ち着かない。だから何となく声を掛けたのだ。
「趣味、というとやっぱり家事とかでしょうか」
「家事……それ以外は?」
「え? う、う~ん」
冬香からすれば自分はだらけているのにお花が掃除していたりすると非常に居心地が悪い。というのも自分よりも年下(見た目)の少女にそういうことをさせて自分が布団に横になっていたらどうだろうか。世間体的にかなりやばい奴である。
(まあ世間が私達のことを知っているわけじゃないからそこまで気にしなくていいんだけども……)
モフモフの尻尾を揺らしながらお花は考えているがどうやら家事以外には思いつかないらしい。いくら何でも他にあるんじゃないかと思ったが、彼女曰くずっとそうして暮らしていたから完全に身についているらしい。
「気になってたんだけどお花の家族ってどうしてるの?」
「家族、ですか?」
「うん。両親とか……」
「あ、私は親はいないんです」
「……え」
何となしに聞いた言葉だったが、その返事に冬香は固まった。それを見てお花は慌てて訂正をする。
「私は物心つくころには任氏様の下にいたので知らないんです」
話を聞けばそれが彼女らの里という場所では普通らしく、そもそも両親と言う存在があるかもわからないという。妖孤とはそういうものですと彼女は言うが冬香は中々納得が出来ない。
まあ、納得できようができまいが何も出来ることもないのだが。
「不思議な事情って奴なのね……」
「冬香さんは全然気にする必要はありませんから!」
「わかったわ。とりあえず今はいいとして……それともう一つ聞いておきたいんだけど、お花って私のとこに嫁に来たのよね」
「はい。そうですけど……」
嫁、という価値観に差異はあれどそれはお花から来たことだ。つまり同性でもあれど夫婦という認識でいいはずだ。
「じゃ、じゃあさ、その例えば私がしたいことがあったらお花に、してもいい……?」
「……私に、したいことですか?」
それを聞いたお花は少しだけ顔を赤くした。見た目は子供だが彼女は年齢は冬香よりずっと上、当然そういう知識は持っている。
「どうしてもお願いしたいことがあるんだけど……」
「わ、私で出来ることなら……」
元よりお花はそういうことを求められたら応えるつもりではあった。
お花は小さく唾を飲んだ。まさかこんな昼間からとは思ってはいなかったが……
「じゃ、じゃあ、あのね……」
ゆっくりと冬香はお花に近づいていき、そして……
♢
「あの……」
「んんんんー?」
後ろから聞こえる物凄く力の抜けた間抜けな声にお花は困ったように声を掛ける。
「その、気持ちいいんですか。これ」
「はっきり言って最高……」
モフモフの尻尾に抱き着いて情けない姿になっている冬香にお花は困惑するばかりだ。
『尻尾に抱き着きたいんだけど……』
数分前、少し顔を赤くしながら冬香はそんなお願いをした。全く別の事を考えていたお花はちょっと拍子抜けしてしまったが、特に拒む理由もないので許可をしたのだが。
「はふー……」
冬香にとってモフモフの尻尾や耳は触りたい対象でしかない。しかもその持ち主が美少女であれば猶更だ。
お花と寝ているときに軽く触ることがあっても、起こしてはいけないから抱き着くような触り方はできなかったのだ。
「んんっ」
頬ずりしながら尻尾を撫でるとお花はピクリと反応する。別段敏感ではないと言ってはいたが感覚はないわけではない。
「は、んぅっ」
欲望から解放されてしまった人間は中々止まることを知らない。お花がビクビクと反応していることも知らず冬香は気が済むまでモフモフを続けた。
何だかんだそれが冬香にとって一番の癒しであることは間違いではなかった。
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