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第6話 暗闇の海上 ~クラヤミのカイジョウ~

 本部では、総動員で動いていた。夜中だというのに(せわ)しない。時刻は午前1時。会議室では座っている者は数名しかおらず、他は資料をまとめて現場へ出たり、その現場から戻ってきたり。

「一課からは、まだ報告が上がってこないのか!?」

 怒号が飛ぶ。すると、一人の男性が近づき耳打ちで

「三課からの情報で、やはり一味は島へ向かったそうです」

「何という島だ?」

「先日、海上保安庁や国土交通省が危険海域に指定していた龍淵島(りゅうえんとう)だと思われます……」

「龍淵島か……」

特課(とっか)がすでに向かってはいるものの、危険海域内ですので、島に上陸できるかどうか……」

「上陸の手続きを進めろ。場合によっては、海上保安庁や自衛隊への連携要請も進めておけ。海外逃亡などされてしまえば、こちらも簡単には動けなくなる」

 先ほど、怒号を飛ばしたのは、小渕(おぶち) 創哉(そうや)参事官である。小渕参事官は、独り言のように

「なぜ、警視正たちが出張中にこんなことになるんだ……」


   *


 夜の海。星空が綺麗だとか言っている余裕は無い。水上警察に頼み込んで、一味を追っていたら、こんなことになった。

 様々な防犯カメラを確認していると、港で船を強奪しているところが防犯カメラに映っていた。船にはGPSを搭載しているが、一味はGPSを切っていなかった。 おそらく、GPSの存在を知らないのであろう。もしくは知っていても、それをオフにする方法を知らないのだろうか。つまり、船舶の免許を持っているかも怪しい。

「よって、窃盗や殺人だけでなく、船舶の無免許運転でも逮捕できますね」

 そういうのは、波飛沫を諸に受けるロボット刑事である。フォルムは、高さが120センチぐらいでそんなに丸っこくはない。かといって、かっこいいかどうかは不明。名前は泥沼 太郎。警部である。ただ、名前が警察にしてはアレなので、警部または別名で呼ばれている。そして、パートナーとして、

「警部、殺人では無く、傷害罪です。それに、そんなに塩水を浴びて大丈夫なんですか!?」

 新人で女性刑事の佐倉(さくら) 悠夏(ゆうか)の2人、というか1人と1体が警視庁特課として、龍淵島へ向かう。

 特課は、捜査一課や三課などに関係なく捜査できる特別な課である。かといって、よくある刑事の墓場だとか、窓際部署では無い。むしろ、警視庁からプッシュされている課である。そのあたりの細々とした話は、別の機会に行うとして、時期は2人の息がそこそこ合ってきたぐらいである。

「警部、錆びますよ……」

「僕もそう思います。関節が動かなくなってきた……」

「えぇ……。飛沫の被らないところへ……」

 悠夏は、自力で動けなくなった泥沼警部を避難させる。なんとも、締まらない状況である。

「もうすぐ、危険区海域に入る。許可は取ってあるんだろうな?」

 船長は、海風で声が消えないようにそう叫んだ。

「許可は取ってます」

 と、悠夏は言いつつも心の中で

(多分、参事官か誰かが許可を取ってもらえるかと……。もしかしたら、まだ申請前かもしれませんが……)

 すると、マナーモードのスマホが震えて、画面は小渕参事官から電話の表示が。その電話は、許可が下りたことを伝える電話であった。突入直前であることを伝えると、小渕参事官は「私の首を飛ばす気か」と怒鳴られた。龍淵島まで、あと5kmほどである。


   *


一度整理すると、眞勢(ませ)柴山(しばやま)が志乃の捜索をしている。鴨志田(かもしだ)河邉(かわなべ)記井(きい)、そして畔柳(くろやなぎ)が海で捜索活動中である。糟谷(かすや)頭領とその夫人は、ケンとヤイバ、シェイと戦闘中。

 食事の時は、男8人と女2人だった。つまり、少なくともあと2人いるはずである。で、2階で眠っていたのは3人。階段ですれ違ったのが2人。以上により、13人はいることが推測できる。だが、その人数はシェイや、熊沢、志乃達も知らない。

 龍淵島の灯台は、明かりが消えていた。普通ならば、船に島の位置を知らせるために、夜や霧のときは点灯していなければならない。

 フードを深く被った人物は、灯台のケーブルを辿る。すると、ケーブルがズタズタに切り裂かれ、近くには使ったであろう斧があった。どうやら、誰かが意図的に斧で灯台のケーブルを断線させたようだ。ケーブルの断面からは、たまに火花が出ており、ショートして火災や爆発が起きそうだ。

 フードを深く被った人物、螢は、階段を上り非常用電源を探す。奴らが、島に誰もいないと考えていたなら、非常用電源までは壊さないだろう。自分達しか島にいないのであれば、常用電源さえ断ちきれば、手動で投入する非常用電源を壊す必要が無い。それに、無人島なら電源は非常に重要な存在だと思われる。それが蓄電池なのか、発電機によって生成する電気なのかは分からないが……。

 暗闇を壁伝いで確認しながら、一つ上のフロアに上がると、施錠された扉があった。しかし、長い年月の経過による風化や腐敗により、扉を蹴ると簡単に開いた。一体、何年この島は無人島なのだろうか。

 壁に取り付けられた筐体の中に、ブレーカーらしきものがあり、日本語と英語で”高圧注意”と”非常用電源ブレーカー”が表記されている。

 螢は、ブレーカーを上げて、電源を投入する。すると、 眩しい光が灯台内と、暗闇の海を照らす。灯台が本来あるべき姿になったのだ。


    *


 ケンとヤイバが糟谷頭領との戦闘中、急に部屋が明るくなった。糟谷頭領は、その光が直撃し、目が(くら)む。ケンとヤイバはこの好機を見逃さずに、鳩尾(みぞおち)延髄(えんずい)を狙い、剱を振るう。殺傷を禁ずる国のため、彼らの剱は鋭く斬れないが、糟谷頭領を戦闘不能にまで追い込んだ。

 戦闘が終わり、一定周期で明るくなる光源について、ケンは

「今の光は?」

「灯台の光……?」

 と、推測で言ったシェイ。


   *


 灯台の光は、納屋の方面からも確認できた。柴山が光源に気付き、

「”なんで、灯台の光が……?”」

「”知らないわよ。だけど、あそこに誰かいるのは確かなこと。急いで、灯台にいる人物を捕まえるわよ”」

「”でも、この納屋は?”」

「”あんた1人で調べなさい”」

 そう言って、眞勢は灯台の方へと走る。柴山は、納屋の扉を蹴り破り、外から中を少し見ただけで、

「”いないから、灯台だな”」

 そう言って、眞勢を追いかけて行った。

 熊沢とフロール、志乃は、物陰から顔を出して、2人がいないことを確認すると、胸をなで下ろした。

「どこかに行ったね」

 と、フロールは会話が分からないため、灯台に行ったことが分からない。熊沢は2人の会話から、

「灯台って、言ってましたね」

 もしも、納屋の中を隅々まで調べられたら、戦うしか方法が無かった。他の出口は結局無かったし、灯台の光で助かった。

 ふと、熊沢が棚の方を見ると、一枚の色褪せた写真があった。フロールも気になって、注視するとその写真には見覚えのある人物が写っていた。


To be continued…

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

早速ですが、『紅頭巾』『黒雲の剱』だけだと、完結しそうに無いのでここから『エトワール・メディシン(仮称)』のメンバーが参加です。まだ、連載前なので初登場です。今年、悠夏と警部の物語に着手して連載を頑張れるように考えていますので、よろしくお願いします。

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