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第16話 守護石の傳承 ~シュゴセキのデンショウ~

 事態はまだ緊迫状態である。首長竜が、お口いっぱいに焦げた饅頭を頬張っているというシュールな光景だが、あの饅頭が無ければ島がひとつ吹っ飛んでいた。

 こんな状況だが、時間を少し遡り、本部での供述に戻る。龍淵島を厄災から守るもの。守護石に関してである。

 柴山の場合。守護石に関して訊くと

「守護石は、龍淵島を守るものだという伝承を小さい頃から、耳にたこができるぐらい聞かされましたね。壊落したところに祠がありました」

 眞勢の場合。同じように、守護石に関して訊くと

「島に(ほこら)があって、島に大勢人が住むようになったときも、祠の伝承を書き記した立て札があったので、島に住んだ人は何度も目にしてるはずよ。まぁ、今の現代人は信じないでしょうけど」

 他のメンバーも、祠や立て札など同じような情報だった。

 そんななか、畔柳が伝承について語った。

「伝承は表と裏が存在します。基本的には、立て札や子どもに訊かせるときは、表の伝承。成人になった時に、一部の人のみ知る本当の伝承が、裏の伝承です。本当は、早くあの島に戻らなければならないのですが、犯した罪は償うべきです。証言や捜査の協力も可能な限り行っています。島に戻ったら、これから起こり得る厄災を防ぐ必要があります。罪を償った上で、同胞の尻拭いをする。それが、我々の考えです」

 一味がすぐに投降したのは、そのためだった。伝承について、再度、警察官から訊かれると

「表の伝承について簡潔にまとめると、大昔に彼方からやってきた怪物が封印されている。怪物は海の上を泳ぎ、海中の生物を主食とする。怪物は過去にいくつもの島を消滅させた。龍淵島は被害から免れた。救世主により、怪物は長き眠りについた。しかし、もし邪悪な者が祠に立ち入れば、怪物は再びこの世に解き放たれるであろう。まずは、龍淵島が壊落し祠が海に沈むであろう」

 裏の伝承については、畔柳は語るのを拒否した。

「本当の伝承は、由緒正しき者にしか話すなと言われており、堅く口外を禁じられている。捜査上必要であれば、糟谷さんから訊いてください。私からは(おきて)で言えませんので……」

 結局、一周して糟谷 泰典に戻ってきた。ちなみに、夫人は畔柳と同じく、掟を理由に言えないと答えた。

「表の伝承だけでは、捜査に支障が出ると言うことですか? 裏の伝承は本来、龍淵島に永住する者にしか話せない決まりですので、捜査に必要ないのであれば、表の伝承で(とど)めてください」

 しかし、警察官はとことん調べるのが(さが)というかなんというか。糟谷は、ため息をつき

「分かりました。掻い摘まんでお話ししましょう。しかし、調書に残したところで、誰も信じないような内容ですので、役には立たないと思いますよ」

 そう前置きして、糟谷は裏の伝承を短く話す。

「表の伝承は、ほとんどが嘘です。裏の伝承は、龍淵島に住んでいた少年に懐いていた怪物が、悪い大人達に利用されようとして、暴走し、島をいくつも沈めました。怪物は自ら眠りにつき、それを祠に封印したという話です」

 糟谷が話した内容は、とても掻い摘まんでの話だった。警察には語らなかったが、実際は次の通りである。


 大昔、海で遊んでいた少年が、入り江で傷ついた首長竜を発見した。少年は首長竜を手当てをした。首長竜は、少年と海で遊び、楽しく過ごしていた。

 しかし、ある日のこと。悪い大人達が、少年のあとを追って、首長竜を発見する。少年は、首長竜の前で暴行され、首長竜は網で無理矢理自由を奪われる。少年は体の数カ所から流血した。それを見た首長竜が怒り心頭に発し、エネルギーを放出する。入り江の一部が崩れ、網から脱出した首長竜は、我を忘れて、近辺の島に次々とエネルギーのビームを放つ。龍淵島の周辺の島々が沈んだ。さらに、悪い大人達が、船で近づいたらしいが、その船は首長竜が転覆させたらしい。

 ボロボロの体の少年が、海岸まで歩き、首長竜のことを呼ぶ。首長竜は、少年を攻撃しようとしてしまうが、少年の必死な叫びに、自我を取り戻した。

 しかし、首長竜は自分の過ちに後悔して、その身を自分で封印する。守護石となった首長竜。少年は、その守護石を肌身離さず持ち、少年が高齢になった時、祠を作った。2つの伝承を作り、継承者に、守護石と自分の遺骨を納めさせた。

 2つの伝承を作ったのは、首長竜が再びこの世に復活して暴走しないために作ったらしい。

 ところで、首長竜はどこから来たのだろうか。それは伝承には示されていないし、当時の少年も知らないだろう。


    *


 時は戻って、首長竜が饅頭に悶え苦しんでいる。鼻があるので、窒息はしないだろう。この時間に、作戦を考えなければ。簡単に言うと、フロールと螢以外は戦力外である。作戦を立てようにも、この状況で何が出来るだろうか。船は敵なのだろうか。

 全員が手を(こまね)いていると、船に動きがあった。気付いたのは熊沢だ。

「船から何か落ちてきます!」

「さっきの砲丸と違うものか?」

 シェイが差異を見ようにも、距離がありすぎて分からない。魔法が使えれば、こんなにももどかしくは無かっただろう。

 落下物は空中で破裂し、網が広がる。ヤイバはそれを見て、

「アレを捕獲する気か?」

 巨大な首長竜である。ただ、網は十分捕獲できるぐらい大きい。網が首長竜の全身を覆うと、高い電流が流れて、首長竜の体力を削る。その光景を見て、ケンは

「本気で捕まえる気だ……」

 船からいくつもの矢が飛ぶ。おそらく、麻酔だろうか。首長竜の声が段々小さくなる。すると、首長竜のエネルギーが限界を迎えたのか、体が光ってだんだん小さくなる。守護石の姿に戻ろうとしているのである。

 灯台にいる者達は、全員、見届けることしか出来なかった。守護石となったであろう首長竜は、船に回収された。

 船の目的は、首長竜の捕獲だったようだ。しかし、その目的を達したにも関わらず、すぐに立ち去る様子は無い。

 ケンとヤイバは、次に備えて、お互い顔を合わる。なんとなく、敵の攻撃が来そうだと感じる。嫌な予感である。螢も嫌な予感がしたようで、志乃の名前を叫ぶ。

 嫌な予感は的中し、船から光の矢が、灯台に向かって放たれる。螢とフロールが魔法を唱えるが、間に合うか。


To be continued…

首長竜の名前は、龍淵島の近くだから、リュッシーなのかな?

……と、冗談はさておき、首長竜は船に回収されたが、

フロールやケン達のピンチはまだ続くみたいです。

最終話まで残り少なくなってきましたが、最後までよろしくお願いします。


追記。一部、文字が抜けていたので修正しました。

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