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第14話 舩上の邂逅 ~センジョウのカイコウ~

 螢が最初に語ったのは、志乃を初めて見た時のことだ。

「ある船に乗っていた。ただ、海の上を走る船じゃない。僕自身も、最初はそれが分からなかった。外から見ると、船は木製だった。鉄とか金属で出来ていない船。まるで、漫画に出てくる大きな船みたいで、どこかで乗ってしまったのかもしれない。乗る前後の記憶が定かでは無いんだ。乗組員に見つからないように船内を散策していた。途中、ある人に見つかったけれど、その人は僕を匿ってくれた。食料を貰ったり、寝る場所を提供してくれたり。『どこで乗ったのか』と聞かれたけれど、『分からない』って答えたら、その人は『思い出したら、教えてくれ。可能な限りのことは、手伝うよ』と言ってくれた。ある日、僕は乗組員に見つかりそうになって、逃げたところが倉庫のようなところだった。そこには、様々な動物たちが檻に入っていた。どの動物も、声や音を立てない。ただ、沢山の目が、自分を睨み付けているみたいで、怖かった。力が入らず、すぐに移動できなくて、代わりに周りを見渡す時間があった。否が応でも、視界に入る。壁一面の棚は、3段あり、全て檻が置かれていた。檻は多種多彩で、何もいない檻がいくつもあった。視線が部屋を半周すると、奥の方に床に直置きの檻が2つあった。なぜか、棚に置かれていなかった。反対側の壁は見ていなかったから、そっちにスペースがあったかは確認していない。満杯だったのかもしれない。ただ、僕はその檻の中にいる少女と目が合った。それが、志乃だった。もう一つの檻は、空っぽでよく見ると一部が壊れていた。同じように志乃がいる檻も壊せるんじゃないかと思った。やっと、体に力が入って、志乃の檻に近づく。僕の問いかけには全く答えてくれなかった。『君はだれなの?』『何で檻の中にいるの?』『そこから出たくないの?』どれも答えてくれなかった。それから乗組員の目を盗んで進入できる日は、志乃のところへ行った。毎日とはいかなかった。匿ってくれた人に、『最近何処に行ってるの?』って聞かれた時は、『不思議だと感じる場所を見つけて、そこで何かを思い出すかもしれないと思うんだ……。まだ分からないけれど……』そう言うと、『記憶が戻ればいいけれど、他の乗組員に見つかるとどうなるか分からないから、無茶だけはするなよ』とても優しい人だった。見つかったのがこの人で良かった。名前は敢えて聞かなかった。もしものときに、その人には迷惑をかけたくなかったから。風貌は覚えている。眼鏡をかけて、白衣を着ていた。髪は癖毛のようで長髪でも短髪でも無かった。髭も生やしておらず、男性か女性かも分からなかった。他の乗組員は、武装していたりスパイみたいな格好をしていたり、たまに白衣の人も見かけたけれど、この船が何の船で、何処に向かっているか、全く分からなかった。言葉も日本語や英語だけでなく、聞いたことも無いような言葉で話すのを聞いた。むしろ、日本語とか英語の方が希少だった。ある日、匿ってくれた人に、疑問をいくつか聞いてみた。『この船はどこに向かっているんですか?』『それは、航海士や船長、一部の人しか知らなくて……。ごめんね。聞かれても知らないんだ』と答えてくれた。『この船って、見た目は木だけど、本当に木製なの?』これは、純粋な疑問だった。住んでた家は木造建築だったから、歩くとよく軋む音がした。それが、この船では軋む音がしない。でも木の香りはほのかにする。『鋭いね。流石、船の中を隠れて駆け回っているだけあるな。自分も乗船してしばらくしてから、言われて気付いたんだ。木は、表面の僅かに接着しているだけで、実際は金属で出来ているって。なんでそんな構造にしているのかと聞いたら、単純にそういうデザインとかコンセプト的なヤツだろって言われたよ。てっきり、すごく意味のあることだと思ったんだけどね』。僕からの質問はそれで終わった。すると、『他に質問は無いの? 監視が厳しくて、まだ甲板に出たことが無いのかな。それを聞くんだと思ってたのに』『甲板にはまだ行ったことない。無茶をしてまで、往復できるか分からないし……』『ダクトを使えば、甲板まで行けると思うけど、ダクトから甲板に出られないかな。まぁ、船の構造はあまり詳しくないんで、たどり着けるか分からないけれど』。そう言われたからには、志乃のところに行けない日はダクトの調査をした。何処に繋がり、何処へ行けるのか。何回も行ったら、なんとなく分かるようになった。船内の行動範囲も広がった。その分、見つかる危険性も高まった。やっと、甲板へと繋がるルートを見つけ、ダクトから外を見た。甲板には、多くの人がいて外には出られない。しかし、それよりも目を疑うような光景があった。青いはずの空が、様々な色の線で流れていく。線の向きは全て同じ。絡み合う糸のようだ。これは、夢じゃないのか? 知っている世界じゃない。記憶が戻ることは無く、恐怖があった。もう戻れないかもしれない。親に会えないかもしれない。友人に会えないかもしれない。孤独感が押し寄せた。それから数日は、移動できなかった。寝床から動けなかった。『ショックがデカかったか。そんな君に朗報だ。君が見つかるまでの日数さえ分かれば、この2つの世界のうちどちらかが、君のいた世界だ。しかも、そのうち1つは、6日後に到着する。またとないチャンスだ。もし、その世界が君の元いた世界なら、脱出に力を貸そう。直近の事件や歴史を教えてくれ。そこから、合致するか調べてみる。あとは、君が本気になれるかどうかだ』。帰りたい。その気持ちが強くなった。『住んでたところは分かるか?』『日本の四国』『直近の事件や出来事を覚えているか? 何なら、日付でも良い』『好きだった小説の作者が亡くなった。高速道路が開通した。小さい頃に行ったことがあったテーマパークが閉園になった。それから……』知っていること、覚えていることを話した。学校で習った歴史は、実際の出来事とずれて伝わっていることがあるため、あまり参考にならないと言われた。結局、3日前になって、その世界とは合致せず、もうひとつの世界が一致した。同じような世界だけど違う世界。まだ船旅は続きそうだ。それが分かったので、志乃のところに久しぶりに行った。檻が少し錆びていた。いや、腐敗していたのかも。なんとなく、檻をさわってみた。そしたら、檻が壊れた。音が出たので、見つかると思い、志乃を連れてその場から逃げた。匿ってくれた人に事情を話すと、『さっき、いなくなったって情報を聞いたんだが、そういうことか……。君一人なら、元いた世界に着くまで匿えたんだが、2人だと厳しいな。それに、その子はまだ目を覚ましてない』『目を覚ましてないってどういうこと?』『体は動くが、まだ寝ているんだ。眼球の動きが無いだろ。瞬きはしているのに。檻から出たなら、3日後に目覚めるだろうな』『ごめんなさい。勝手なことをして……』結局、迷惑をかけてしまった。『次の世界で下りるよ。これ以上、迷惑をかけられない。この子も、もとの世界に帰してあげるんだ』『心意気は立派だな。ならば、この袋を託そう。もしものときに使いなさい。それがあれば、もとの世界に繋がるアイテムだ。ただ、使用するにはエネルギーがいる。説明はその袋の中に書いてある。本当は、最後まで面倒を見るべきなんだが、これから大事な研究がある。その研究の助手として、君を正式に申請すればこそこそ隠れる必要がないと思ったんだが……』『本当に、ごめんなさい。それと、今までありがとうございました』。その後、着いた世界がここだった。志乃と脱出して、誰にも見つからなかった。けど、失敗したのは、この世界で少しだけはぐれたことだった。志乃は、目覚めてすぐ、糟谷たちの本来の姿を偶然見てしまって、結果追われてしまい、志乃には僕の記憶は無い。だから、志乃を救うために、『お困りかな? 力を貸そうか』そう言って接触した。あとは、志乃を守るには人手が足りないと思い、袋の中から"セツナの歯車"を取り出した。ヤイバとケンに接触したのは偶然だけど、遠くで二人の会話から"セツナの歯車"の話題が出て、この二人に手伝って貰おうと思ったんだ。フロール達は、君らがこちらに来たんだ。偶然とは言え、同じく手伝って貰うために、助太刀した。今思えば、必然だったのかもしれないな。あとは、この灯台に来て、魔法でゲートの位置を移動させて、非常用電源で灯台を稼働させた。もう一度世界を移動するには、あと少しだけ時間を稼げば出来る。何事も無ければ……」


To be continued…


回想シーンに入らず、螢の一人語り。

改行も敢えて入れませんでした。

あまりにも読みづらければ、再編集して改行を入れます。

さて、まもなく物語も終わりそうですね。

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