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第12話 靜寂の時間 ~セイジャクのジカン~

 呼吸を整え、熊沢を先頭に階段を上る。なお、飛蝗は自力で上ろうとしたが段差を超えられなかったので、ケンの肩に乗っている。

「もうすぐ頂上ですよ。頑張ってください」

 と、熊沢は言うが、息切れしている自分に言っているようだった。階段を上りきると、フロールがこちらに気づき

「くまたん、螢さんに会えたよ」

 と、言って手を大きく振る。熊沢は息切れして、小さく手を振った。志乃も手を振る。納屋にいた時よりも元気そうだ。

「志乃さん、よかったですね」

「熊沢さん、ありがとう」

 志乃はわざわざお礼を言い、熊沢のもとまで走ってきた。

 その光景を見たケンは、

「礼儀正しい子だね」

「そうだな」

 と、ヤイバは言い、飛蝗に小声で

「志乃の言葉が分かるけど、これも翻訳魔法?」

「魔法を使っているなら、俺でもフロールでもないから、螢かもな」

 飛蝗はそう推測した。灯台に来る前は、螢が魔法を使えるかどうか否定していたのに、あっさりと認めたようだ。熊沢が今度は飛蝗に問う。

「螢さんも魔法使いってことですか?」

「たぶんとしか」

 飛蝗は言い切らないみたいだ。確証はまだ無いから。次はケンが魔力について聞く。

「ちなみに、魔力とかって感知できたりするの?」

「感知するのにも、魔法が必要だな。結局、魔法が無いと何もできないから」

 と、まるで魔法が使えない自分を(さげす)むような言い方だった。

「……さて、どうやら螢が目を覚ますまでは、体力温存だな」

 飛蝗はそう言って、黙り込んだ。


    *


 おそらく午前2時半ごろ。どうして時間が分かったかというと、灯台の非常用電源に表示されている時刻を見たからだ。日付は表示されないため分からない。とはいえ、この時計が正確かどうかと言えば、おそらくズレはあるだろう。ただ、それっぽい時間だと思われる。

 警察は灯台にまで捜索に来ていないようだった。唯一の光源であり、一番目立つのに、なぜ捜索に来ないのだろうか。それは……


「”まだ礼状が下りないみたいですね”」

 警部は灯台を見上げてそう言った。

「”灯台の捜索令状がなかなか下りないって、よっぽど手続きに苦労しているのか。もしくは、裁判所がまだ非稼働ってことですかね……。逮捕に伴った捜索を行う場合は、令状いらないはずですよね”」

 悠夏の言うとおり、捜索令状がなくても捜査ができるのは、逮捕を伴って捜索を行う時である。だが、今回の逮捕に灯台は関係しないので、令状を取ってから捜索することになった。ただ、令状が下りるまでが遅い。龍淵島を粗方捜索したため、多くの警官はすでに引き上げている。一味がいた建物は、鑑識が調べ終わって、こちらも撤収済みである。

「ところで、仮に捜査令状が下りたとしても、施錠されてますけど、どうするんですかね?」

 警部の言うとおり、施錠されており簡単には解錠できないだろう。悠夏は、タブレットでニュースの続報を調べながら、

「そこは、工具でなんとかするんじゃない?」

「誰が、ですか?」

「誰かが」


    *


 螢が目覚めた。周囲に人が増えていることに、最初は戸惑ったが、いずれも螢にとっては、初対面ではなかったので

「集まったみたいですね」

 とだけ、言った。飛蝗は螢に聞きたいことがあるけれど、フロールがいるため、口にはしなかった。どうして、飛蝗がシェイであることを知っており、なおかつシェイの本来の姿を知っているのか。過去に会ったことがあるのだろうか。熊沢は、本題も疑問も言えない飛蝗を見て、切り出す言葉が分からずにいた。

 よって、本題をケンが切り出す形となった。

「ケイ、久しぶりだね。僕らをこの島に連れてきたのは、ケイなのかな? 理由は分かったよ。僕らは直接会えなかったけど、志乃を救うためだったって。糟谷頭領たちは、警察に捕まったよ」

「ありがとう。そして、巻き込んでしまい、申し訳ない」

 螢は申し訳なさそうな表情だった。

 ヤイバは聞く順番を決める必要があると判断し、ケンより先に

「俺たちは、確認したいことが2つある。最初に、もといた世界への帰り方だ。なんとなくは分かっているけど、問題はそれがどこにあるかだ。2つ目に、君らに何があったか教えてくれないか? 偽の漁師達を捕まえたところで、君らは安全になったのか?」

 2つの質問に、螢は黙り込んだ。ある意味、それが答えだろう。鈍感で無い限り分かってしまった。俯いた螢に対して、ヤイバは察したことを口にする。

「終わりじゃ無いんだな……」

 まだ終わっていない。何かがまだ起こる。その何かを螢は知っている。

「帰り方だけど、この灯台の階段の途中に扉がある。扉は鍵が掛かっているけれど、その中に帰りのゲートがある。もともと、別のところにあったのを、魔法で移動させた。移動できるか分からなかったけれど、魔法を発動させると、問題なく移動した。さっき、鍵が掛かってるって言ったけど、鍵は魔法でしか開けられない。世界を移動できるゲートだ。見つかるわけにはいかないと思ったから……。施錠魔法は、フロールの魔法で簡単に突破できるから。もとの世界へは、いつでも戻れるよ」

 螢は落ち着いており、全て本当のことを語った。帰り方を教えれば、この後起こることに手助けしてもらえないかもしれない。そんな不安が、見え隠れするようでもあった。

 しかし、そんな心配などいらなかった。ケンは帰り方を聞いて、

「ということは、この灯台を守り抜かないとね」

「一番目立つ灯台を守り抜くのか……。かなり大変だな」

 と、ケンに賛同するヤイバ。熊沢も盛り上がりに加わり

「最終決戦ってヤツですか?」

「"最終"かどうか、分からないだろ」

 と、飛蝗が熊沢の発言を指摘する。そして、フロールは

「2人を守り切って、お別れする時は笑顔でね」

 それらを聞いて、螢が驚いたような表情だった。志乃は

「みんな、ありがとう。螢、みんなが手伝ってくれるって」

「ありがとう……。決戦までは、まだ時間がある。全てを話すよ」

 螢がこれまでのできごとを順を追って語る。


To be continued…

ヤイバの一言。「終わりじゃ無いんだな……」で執筆の手が止まりました。

思わず、「え、まだあるの?」って。当初予定の3倍ぐらいになりそうだな。

次回は、盗まれた物と事件に関してです。

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