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第10話 搜索の光 ~ソウサクのヒカリ~

 螢が目を覚ます。目の前には、知ってる顔が心配そうに涙を流している。

「”志乃か……。無事で良かった”」

「”もう螢が目覚めないのかと思ったよ……”」

 螢は立ち上がろうとするが、痛みで上手く立ち上がれない。

「安静にしたほうがいいよ」

 螢は、外国語で話しかける少女に気付いた。

 少しして志乃は、フロールと螢の目が合ったことに気づき、

「”あの子は、フロール。私を助けてくれたの”」

「”そうなのか”。ありがとう、フロール」

 螢の言葉が分かり、フロールは驚いた表情だ。

「翻訳の魔法だよ。志乃の言葉も分かるはずだ。それに、志乃もフロールの言葉が分かるはずだよ」

 そう言って、螢はしばらく2人に話の場を与えた。自分の魔力はまだ十分回復していない。今は、回復に専念して、魔力をためなければ。


    *


 龍淵島の上空に、警察のヘリが近づく。暗闇のため、着陸の場所を探しており、ホバーリングしている。しばらくすれば、警察が続々と上陸しそうだ。上陸によって、困るのはケンやフロール達である。犯罪一味がどうなるかといえば、捕まるだけである。罰せられるのは、当然のことである。しかしながら、ケンとヤイバは、見つかれば銃刀法違反。熊沢と飛蝗以外は、深夜の外出等で青少年保護育成に反する。そして、不法入国にも当たる。熊沢と飛蝗がどうなるかは、定かではない。動物園にでも保護されるのだろうか?

 シェイ達は、まだ灯台に向かってはいない。一番の難題が解決できていない。扉を解錠しないと、入れないからだ。もし扉を壊した場合は、そのあと警察が灯台に捜索しやすくなり、脱出までの時間が稼げない。できれば、扉を壊すことなく解錠して、全員が入ってから施錠したい。音は立てたくないから、ノックして知らせるわけにもいかない。

 シェイが方法を考えていると

「もしかして、これを探してる?」

 と、ケンが5つの鍵がリングに通された、鍵束を見せた。シェイよりも熊沢が先に反応して、

「もしかして、それは」

「灯台の鍵もこの中にあるはず。灯台に向かう前に、糟谷夫人から受け取ったんだけど、そのときシェイ君は気を失ってたから」

 と、ケンが説明したとおり、シェイが飛蝗に戻るまでの2分間に、受け取ったのだ。経緯は簡単である。ケンが、灯台に向かいたいことを夫人に伝え、鍵の有無を聞いた。すると、夫人が頭領の腰に付けてた鍵束を外して、ケンに渡したのである。夫人はそのとき、『それは、今の私たちには必要のないもの』と言った。気になる言い方だったが、ヤイバがケンの腕を引っ張り、無言でそれ以上の詮索はするなと制止させた。

「最悪でも、5回差し込めば開くはずだけど」

 と、ケンは言うがそんなに時間はあるのだろうか。灯台の入口は遮る物がない。灯台下暗しという言葉どおりに、扉の周辺は暗いとは言え、警察が集まればすぐに見つかり、開く前に捕まるかもしれない。


    *


 緊急事態が発生した。捜査本部では、参事官が頭を抱えている。

「どこから情報が漏れたんだ……。捜査態勢は大きいが、報道規制中で情報はまだ開示していないはずだぞ……」

 会議室の一角に置かれた薄型テレビでは、夜中にもかかわらず、ある民放が番組表と異なる編成でニュース番組を放送している。

 男性のニュースキャスターが、原稿を読み上げる。

「一昨日、居酒屋で発生した暴行事件についての続報です。被害者は、開発大臣の補佐を務める男性で、現在全治2ヶ月の重傷で入院中です。この事件は、複数犯の可能性があり、ある有力な情報として、犯人達が現在海外逃亡を目論見、船を奪い逃走中とのことです。警察からの具体的な発表は、今のところまだありませんが、海上の捜索を行っているとの情報も入ってきております」

 テレビから聞こえた、"警察からの具体的な発表は、今のところまだありませんが"に関して、小渕参事官は

「発表できるなら発表してるさ。……何故、発表しないかぐらい、察しろよ……。誰か、テレビ局に通達してくれ……」

 報道規制は、協定によって、進行中かどうかを含まず、事件について貴重な情報などが外に出ないように、報道しないことを約束することであるが、ここ最近その意味を履き違えた行動を取る報道が一部に存在し、ネット媒体かテレビで堂々と広めてしまうことがあった。過去、悠夏と警部が関わった事件でも、そんなことに巻き込まれたとか、巻き込まれなかったとか……。

 参事官は、深呼吸して捜査員に告げる。

「日の出までに本件を解決に導く。すでに、特課が犯行一味を半分捕らえている。さらに、頭領も抵抗を見せないとの情報もある。早朝のニュース番組までに、会見ができるように急げ」


    *


 悠夏と警部は、眞勢と柴山を確保し、糟谷頭領がいる建物で、事情を聞いていた。ちなみに、糟谷頭領は人の姿に戻っており、悠夏と警部はその正体を見ていない。

「今回の件について、全てお話いただけるということですか?」

 悠夏は逃亡したにもかかわらず、全く抵抗を見せないため、疑うようにそう言った。糟谷夫人は、冷静に受け答えしており、

「はい。しかし、警察の方の理解に及ぶかは分かりません。それに、私たちは人ならざる者です。法で裁けるのでしょうか?」

「問題ないですね。最近、そういうのがやっと認められるようになりましたので。ただ表向きは、人として処理しますのであしからず。どうしましょうか? これ、自首で処理しますか?」

 と、泥沼警部。警察も色々とあるようだ。悠夏は

「自首と判断するかは、上に報告してからかな……。勝手にやると、参事官のライフがますますゼロになりそうだし……」

「それ、僕らのせいですか?」

「そうじゃないと、信じましょ」


    *


 港に船が到着し、警察官が次々と上陸する。犯行グループが全員抵抗していないとの情報を受けたが、他に関係者がいないか島を捜索する指示が出た。ただし、危険海域のため、捜索時間が限られている。懐中電灯と、警棒や拳銃を所持して、何班にも分かれて捜索を開始する。

 ヘリは、船で上陸した警察官の誘導に従い、着陸する。

 このままでは、急がなくては見つかってしまう。ケン達は、灯台の扉の前まで走り、鍵を順番に試そうとする。

 飛蝗は熊沢の両手に乗り、熊沢は周囲を見渡す。ケンは、鍵束から最初の鍵を選び、鍵穴に入れるが回らない。念のため、上下逆したら、鍵穴にさえ入らない。ヤイバは急かすように「急げ、次の鍵だ」と言う。ケンは、2本目を同じように試す。しかし、開かない。3本目も開きそうにない。すると、熊沢が遠くからの光に気づき、

「こっちに来ますよ」

「分かってる。急ぐと慌てると間違えるから待て」

 と、ヤイバがさっきと逆のことを言う。ケンが4本目を試すが、鍵穴に入らない。

「まだ距離はありますけど、あのライトに照らされるとすぐ見つかって、逃げられないですよ」

 熊沢と飛蝗の視線の先には、いつくもの小さな光がこっちに向かっている。

「3本目って、上下入れ替えたかな……」

 ケンが自信なさそうに、慌てているようだ。ヤイバは、

「思ったことは全部やった方が良い」

 5本目の鍵では無く、3本目の鍵をもう一度鍵穴へ。

 すると、カチッと音がし、ヤイバがすぐにノブを回す。押すが開かない。すぐに引くのだと気付いて、扉を引く。ヤイバは扉を支えて

「早く灯台の中へ」

 熊沢と飛蝗が先に灯台の中へ入り、次にヤイバが。最後にケンは、ささったままだった鍵を抜いて入る。扉を閉め、ドアロックを回す。

「取り敢えず、一安心だな……」

 と、ヤイバがその場に腰を下ろす。ケンは、顔の汗を腕で拭い

「変な汗が出た……」

 飛蝗は特に何も言わず、熊沢は心臓をバクバク言わせながら、

「これ、上るんですか……?」

 灯台まで走って、扉の前での緊迫状態から解放されたが、息切れと汗が出ている4名は、しばらく階段に上れず、喋ることもなかった。


To be continued…

残りの4本は、果たしてどこの鍵なんでしょうか。

倉庫とか建物の入口とかですかね?

そもそも、長い年月が経っているので、建物が残っていない説も。

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