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筋肉バカ 臨死教官 活動開始


諸事情により、月曜日の詳細を飛ばしていきなり火曜日の昼前である。


「率直に、惨憺たる結果だったとしか言えません」


団長室に入るなり、練也は数枚の簡易紙を差し出してそう言った。その表情は、呆れと怒りが入り交じった無表情。


ちなみに簡易紙とは、皮では無く草や木などを素材にした紙で、イメージは藁半紙に近い。


閑話休題。


ザクセンは呆気に取られつつも、その書類を受け取って目を通していった。


「これは……」


読めば読むほどに、ザクセンの表情も徐々に険しくなっていく。無理も無い。


「……合格者が……無し、だと?」


にわかに信じがたいが、しかしそれが事実である。


昨日、一部を除いたイスラ傭兵団所属の兵士全員に対して体力テストが実施された。


目的は、今後の練兵教育の方針決定のための各傭兵団所属兵の体力の把握だった。練也の頭の中では、そのうちの最底辺を見つけて、それを基準に教育計画を立案する予定だった。


だったのだ。


しかし、いざ蓋を開けてみたら、その瞬間練也の頭の中の計画はまるで津波に流されたかのように綺麗に消失した。


まず、二キロメートル走だ。

端的に言おう。最高タイムが九分一七秒。最低タイムが十三分八秒。小学生が走ったのならまだ分かるが、大の大人が走ってこの有様だ。練也には到底許容できない結果である。


青筋が、一本。


次に、二分間腕立て伏せ。

最高回数が五二回、最低回数が一二回。最高回数に関してはまだしも、最低回数の記録保持者は俺に挑戦しているのか、と内心でキレた。こっそり件の輩を捜してみると、その正体は微笑んでいないデブだった。


青筋が、二本。

パリスアイランドの軍曹になってしまいそうになるが、堪える。


三番目の、二分間腹筋については、全員殺してやりたいという衝動を抑えるのに必死だった。

最高記録、二四回。最低記録、八回。思い出したら、蓋をしていた壺から殺意が漏れ出してしまった。


青筋、三本。


最後の懸垂に至っては、もはや何も言うまい。最高記録は十一回。これは、なかなかに頑張ったと言える。しかし、最低記録がその賞賛を消し飛ばした。

 

ゼロ。


ゼロである。


青筋までどっかに消えちまったよ!


いや、いくら何でもこれは酷すぎるだろう。鎧着て剣を腰にぶら下げて歩き回ったり、稽古したりしてるのにどうして、こんなにも結果が散々なんだ!?


もしも、相手がヨボヨボの爺さんなら文句無く許せただろう。しかし、練也は人事書類に目を通して、しかも全員のプロフィールを掌握したから言い切れる。平均年齢三一歳、最高年齢が三五歳、最低年齢が二〇歳と、基本的に兵隊盛りの年齢層だ。


そんな連中がこんな結果を出したのだ。どうして許せるだろうか、いや許せるはずも無い。


「私としては、今後、勤務隊舎で課業実施する団員については可能な限り体力錬成をさせたいと考えています」


言いたい事はまだ山ほどあるが、そこを堪えてあくまで冷静に必要最低限の事だけを口にする。練也は大人なのだ。


「全員、と言うわけにはいかないだろうが……分かった、勤務調整はしてみよう。他に何かあるか?」


「他に……そうですね、あえて言うならば食堂の食事内容について少し」


「?」


可能であればですが、と前置きして練也は話し始めた。


「炭水化物を雑穀パンだけでなく定期的にお粥等の食べやすい物を加えて欲しいのと、肉類の量を増やして欲しい……この二点を要望します」


基本的な話だが、身体を鍛えるのに必要な事項は三つだ。

 

一つは、運動。特に筋肥大や肉体強化を狙うならば、強度の高い運動をする必要がある。筋肉痛はなって当たり前くらいの心構えで全身をいじめるのだ。

 

もう一つは、充分な休養。これにより、超回復を狙うのだ。超回復については割と知られているので説明は省くが、肉体を育てる上で、これをおろそかにしてしまったら強くするどころか逆に壊してしまいかねない。

 

そして最後に、食事である。これが、身体を鍛える上でかなり重要になってくる。動物の筋肉は、タンパク質でできている。身体を鍛えるのならば、炭水化物や脂質、各種ビタミンは当たり前として、より多くのタンパク質も摂取する必要があるのだ。これが、超回復の伸び代を左右すると言っても過言では無い。

 

詰まるところ、この三つの原則を守らない事には、肉体の強化はできないと言って良い。


そして、昨日の結果で分かった事は、絶対的に運動量が足りていない。その上、食事内容も身体を鍛える上では不足気味と言える。この二つの事実だ。


そして練也は気付いた。


今更この傭兵団の団員達の身体の線が細い理由が分かった。連中、あんな重たい装備着けて動き回っているのに、栄養が足りてないんだ。


練也は、自分の観察眼の弱さと、気付きの鈍さに内心で舌打ちしていた。


もっと注意深く考えて見れば分かっただろうに、と自身を叱責するが後の祭りだ。それに、遅かろうが何だろうが気付けたのだ。ならば、改善あるのみ。


「当面は、体力錬成の恒常化と食事内容の改善によって徐々に肉体強化を図っていこうと考えています」


「……成果が現れるまでの期間は、どれくらいだ?」


「一ヶ月」


ザクセンの問いに、練也はそう即答した。

 

「……本気か?」


ザクセンの、正気を疑うような声にも、


「はい。一ヶ月もあれば、現状より大幅に改善されていると断言できます」


練也は淀み無く答えた。


これが、ダイエットや筋肥大等の外観の結果を求める物であれば三ヶ月でも足りないほどだ。しかし、あくまで成果確認を目的にしているならば一ヶ月でも充分過ぎる。あくまで練也の持論ではあるが、“結果を出すには時間がかかるが、成長はリアルタイム”と言う理屈からくる結論だ。

 

「成る程……体力錬成については、実施内容の詳細を書面にまとめて提出してくれ。食堂に関しては、時間はかかるだろうがどうにかしよう」


「分かりました。ありがとうございます」


自分が何かを成し遂げた記憶は無いが、ザクセンはやけに自分を信用している。そうでなければ、こんなにホイホイと具申案件を了承しない。

果たして何故自分がそんなに信用されているのか、それについては思い当たる節が無いが、しかし事実は事実だ。信用に値するだけの成果を見せねばなるまい。


やってできない事は無いのだ、頑張れ広瀬練也。


心の中で自身を鼓舞すると、練也は団長室を後にした。


そして、レンヤが指導官室に戻るとそこには珍しくハラハラした様子のマギアがいた。


「変なこと言ってないだろうね?」


開口一番でこれである。

ヤンセンやザクセンからの謎の信用はあるのに、マギアからはそれが無い。


「まっとうな話しかしてない」


なら良いんだけど、と不安そうに答えるマギア。何故彼女からはこんなにも信用されていないのか。


「あと、さっきニクスが来てたよ。今日の夕食の後、少し時間が欲しいってさ」


「ニクスが? 分かった、ありがとう」


はて、何の用やら。

しかし、思いつく限りで何も思い付かなかったので、練也には分からない話題なのだと判断する。


「まあ、今はそれよりも仕事だ」


「……今度は何さ?」


練也の言葉に、マギアが警戒を滲ませた声で聞き返した。もう二度と腕立て伏せは御免なのだ。


「……昨日」


練也のその言葉で、マギアはあぁ成る程、と察した。


つまりは、体力関係の事だ。


自分に火の粉が降りかかってきませんように、くわばら、くわばら……とマギアは祈る。


「テストの結果が結果だったからな。今後、恒常的に体力錬成をさせる事にしたんだが、その内容を含めて詳細な計画を出せって言われたんだよ」


良かった、紙仕事だ。


マギアは胸をなで下ろした。


しかし___


「で、内容は概ね決まってるんだが、どの程度の強度にしようか悩んでるんで、午後から一緒に体力錬成しよう」


何も良く無い。


マギアは絶望した。


昼食後に運動できる恰好に着替えて朝礼台前に集合な、と言い残して練也は部屋を出た。


部屋に残ったマギアは、火山龍に食われて地獄へ落ちろ、と内心で練也を呪う。彼女の予想通りなら、どうせまた地味なのに異様にキツい内容に違い無い。実際内容はその通りなのだが、今の彼女にはそれを知る術も無い。


「……はぁ」


嫌で仕方ないが、しかしこれも仕事だ。ならば万全を期すのも仕事の内だ、と自分に言い聞かせてマギアも食堂へ向かった。



Another View



ギルドと傭兵団の関係は、現代の日本で例えるなら建物のオーナーと委託警備業者のそれに近い。


イスラ傭兵団も、ファルナスのギルドが雇っている幾つかの傭兵団の内の一つだ。この傭兵団は、市街地の治安維持を主たる任務としているので、騒祭荘の近所にある勤務隊舎の他に、東区、北区、西区の三カ所に分屯隊舎がある。


その日は勤務隊舎を含めどこの隊舎も、中は惨憺たる有様だった。中でも取り分け酷いのが、夜の激戦区と名高い北区分屯隊舎である。


市街巡回に出て行く団員の、動き方のぎこちなさ。隊舎内で勤務する団員達の、呻き声、呻き声、時たま悲鳴。


全員、昨日行われた体力テストで全身筋肉痛に陥ったのだ。


主に、下からふくらはぎ、太もも、尻、腹や腰、胸に背中、腕全体……つまり、ほぼ全身を痛めている。彼等の名誉のために言うと、彼等の筋肉がナマクラだったわけでは無い。鎧をガチャガチャ言わせ、腰に剣をぶら下げて歩き回ったり剣術の稽古をしたりしているのだ。それで筋肉が無いわけが無い。

ただ、そうして育てた筋肉であれど普段やらないような使い方をさせたらそうなってしまうのだ。かの有名な日本人野球選手もこう言っていた。遠投の時に使う筋肉とピッチャーとして投げる時に使う筋肉は別物である、と。


「ぅぐっ!」


北区分屯舎の中、市民相談窓口に座るベルナッドは姿勢を変える度に小さくうめいていた。


彼もまた、筋肉痛に苦しめられている者の内の一人だ。特に酷いのは、背中の広背筋。団内で唯一、懸垂十一回を成し遂げた猛者だ。他は軒並み底辺だったのは秘密である。


「今ならベルナッドに絶対勝てるね」


ベルナッドの隣に座ったニールがそう言った。その声は、聞く限りは何とも無さそうである。


しかし。


ベルナッドが、軋む身体に鞭打って、フンとニールが座る椅子を蹴ったらば、たちまち響く情けない悲鳴。


ニールは、下半身を余すところなく筋肉痛に致している。その上、さっきまで巡回で街を歩いていたのだ。少しの刺激が致命傷になる。


「下半身が崩れているのに、どうやって勝つつもりだ。あ?」


「ソッチこそ、身じろぎする度に痛がってるじゃん。どうやって凌ぐつもり?」


「こうやるつもり……だあ゛!?」


ベルナッド、またも痛いと涙する身体を鞭打って、鈍い呻き声と一緒に蹴りを入れたらば、やかましくこだまするニールの断末魔。一緒にベルナッドも力尽きる。


普段であれば、二人の小競り合いは他の団員達には娯楽と一環として見られているが、今日ばかりはそれを見て笑う者は一人もいない。


げに恐ろしきは、体力テスト。一人あたり、ほんの三〇分足らずの時間、たった4種目、少し本気でこなしただけでこの有様なのだ。


夜の激戦区、北区分屯隊舎。


その日の北区は、少々ヤンチャが過ぎる夜になったそうな。



Another View...end...



昼を過ぎて、場所は勤務隊舎の第二営庭。ザックリと言ってしまえば、いわゆるグラウンドだ。


練也とマギア、そして不幸な巻き添えでザクセンも含む三人は、他の団員達と同じデザインの活動服姿でその外周をゆっくりと走り続けていた。


そう、ゆっくりと。


端から見れば、何であんなトロトロ走ってるんだよもっと速く行けるだろ、と思ってしまうだろう。実際、マギアとザクセンは少し拍子抜けしていた。


「昨日は、拷問もかくやの勢いで、悲鳴が聞こえて、きた物だから、どんな事をしているのかと思ったが……案外、楽だな」


ザクセンが走るテンポに合わせて、軽く息を弾ませながら言うと、


「確かに、今回は楽、だね。前は、殺意も萎えたくらい、だったけど」


と、マギアも露骨に同調してきた。どうにも、あの腕立て伏せが若干のトラウマになっているな、と練也は推察する。


「まあ、そう言ってられるのは、今だけ、ですよ」


推察はさておいて、練也は自分の考えの不理解と、そもそもの知識不足からくる二人の脳天気な発言にほくそ笑んだ。


LSD、と言う言葉を知っているだろうか? 片仮名で言うと、ロング・スロー・ディスタンスと呼び長時間ゆっくりとしたペースで走り続けるトレーニングの事だ。間違ってもクスリでは無い。


練也達が今やっているのは、正に走る方のそれだった。

 

彼の中で最終目標は、団員全員が自衛隊で言う体力検定二級以上の体力水準まで到達する事だ。本物の自衛隊方式ならば、前日実施した4項目の他に、旧体力検定であれば遠投と走り幅跳びが、新体力検定であれば武装した状態で物資運搬走、立ち幅跳び、短距離ダッシュが追加される。しかし、前日の4項目以外はともすれば個人の骨格や筋肉の特性次第ではどうしようも無い場合が生じる時もある。例えば、脱臼癖が付いた肩での遠投は記録が芳しくないのがほとんどだ。

そう言う次第で、練也は四項目だけに絞ったのだ。この四項目であれば、本人達の努力次第でいくらでも成長できる。二級以上の成績で固めるのも無理な話では無いのだ。


まあ、ここまで豪語したはしたが、現状を鑑みればそんな事口が裂けても言えやしない。

何せ、団員全員の基礎体力が話にならないのだ。


だからこその、恒常的体力錬成だ。


そして話はLSDに戻ってくる。


このトレーニングは、体力の低い者が行う基礎トレーニングの一つだ。走りながら話せるくらいのペースで長距離を走る、と言うこの運動は主に持久力の強化が狙いになる。兎にも角にも、基礎体力が無いのならばここからだ。


腕立て伏せができて走れないと言う者はかなりいるが、両方できないと言う者はもっといる。ならば、せめてまともに走れるだけの体力だけは確保せねばならない。


そうでも無ければ、何も始められないのだ。


「それで? 後どれくらい、走るのさ?」


練也の、脳内思惑会議をマギアの声が遮った。現実の感覚に引き戻されて、練也は改めて状況を確認する。


自分はまだ良いとして、マギアとザクセンだ。二人ともまだ顔色は良く、適度に汗もかいている。あごがしゃくれていないところを見るに、まだバテているわけでも無いようだ。


「この様子だと、このペースで、あと一〇周ほど、だな」


そう言った瞬間、明らかにマギアとザクセンの顔色が変わった。残り時間の長さに絶望したのか、はたまた実は意外と疲れているのか。


そう言えばまだ言っていなかったが。このグラウンドは、外周が練也の体感換算で七〇〇メートルほど。


練也にとっては散歩も良いところだが、果たして二人にはどうだろうか?


走りながら、チラチラと後ろを確認すると、そこには死んだ顔が二つ並んで走っていた。怖い。


ペースは変わらないが、フォームの崩れ方が明ら様すぎる。意欲減退アピールがオンパレードだ。


流石に可哀想に思えてしまい、練也は言った。


「……やっぱり、あと五周にしよう」


妥協では無い。断じて妥協では無い。後ろを走る二人のただならぬ雰囲気が、練也にそうせよと語っているのだ。背中で分かるほどに。


結局、このランニングもあと五周どころか三周で終わってしまった。二人の無言の視線に敗北してしまった練也である。


まぁ、合計で一〇周は走ったから良しとしよう。


そう考えて、無念を流す練也。


そう、広瀬練也と言う男は、途中で妥協を強制されたくらいで完全に折れたりはしない。戦略的撤退はしたりもするが、少なくともただでは折れてやらない。


走り終わって、五分ほどが経過した頃合いだった。


「それでは、ザクセン団長、マギア。俺と一緒に、昨日やったテストをしましょう」


練也は、良い笑顔で言い放った。


当然、二人の顔が凍り付く。喉まで凍り付いてしまったのか、声は出さないが、目は語っている。


___頭おかしいんじゃないかコイツ


しかし、そんな事で練也は引かない。少なくとも、やるべき事を全てこなしてから逃げる男だ。


「まぁ、今し方走ったばかりなので今回は二キロメートル走は省いて、腕立て伏せ、上体起こし、懸垂をこなしていきましょう」


二人は知っている。

その三種目だけで、どれだけの男共が男にあるまじき悲鳴を上げさせられたのかを。


「大丈夫です。ほんの少しの時間、ほんのちょっと本気出せば良いだけですから」


二人は悟った。

自分達も自分の性別にあるまじき悲鳴を上げる事になるのだ、と。


実施要領の説明をするので、その後私の指示に従って下さい、練也はそう言って以前マギアにしたように説明を始めた。


説明を終えると、練也達は腕立て伏せ、上体起こし、懸垂の順番で実施していくため、懸垂棒が設置されてあるところまで移動した。そうすれば、まとめて全ての種目をこなせるのだ。

 

さぁて順番はどうしようかな、と練也は考える。上体起こしから始めるか、懸垂から始めるか、または腕立て伏せからか。


実は、この三種目の中で一番簡単なのは腕立て伏せだ。何故なら、この運動が一番どこの筋肉を使っているのか想像が付きやすいからだ。実際には、上腕と胸、腹、腰、そして足まで全ての筋肉に負担がかかるのだが、イメージとしては腕の筋肉を使う印象が強い。そして、腕の筋肉は力を入れやすい、つまり使いやすい筋肉の内の一つなのだ。となると、自然とどうやれば良いのかが無意識に理解できるようになる。


対して、一番難しいのは懸垂だ。理由は、腕立て伏せが簡単な理由の応用になる。

この運動で主に使うのは、腕、胸、背中、腹、腰が基本になる。特に、背中、中でも広背筋はこの運動で非常に重要になってくる。

パッと見ただけでは、懸垂は腕の力だけで上がっているように見えるだろう。実際、逆手でやったり腕を鍛えるためのフォームもあるのだが、基本的に懸垂は腕の力だけでは上がらない。途中までは腕の力で身体を持ち上げるのだが、ある段階で広背筋の力で身体を押し上げる事になるのだ。少し身体を鍛えているが、懸垂ができないという者は、この広背筋の使い方、つまり力の入れ方を知らない場合が多い。そのせいで、懸垂が難しくなるのだ。


まぁ、できる事をやらせた方が勢いも出るな。


結局、さほど考える時間もかけずに練也は結論を出した。


「まず、腕立て伏せから実施します」


そう言うと、マギアが露骨に嫌そうな顔になった。


「どうしたマギア。そんな顔するなよ」


「いや、だって……この間やったアレでしょ?」


マギアにとって腕立て伏せはトラウマに化けていた。今まで培ってきた自信を、たったの二分でへし折られたのだ。無理も無い。


「安心しろ。必ず、前回よりも回数は伸びている。から、やれ」


「……分かったよ」


しかし、練也が更にその不安を真っ向からへし折りにかかった。

実際、一回目よりも二回目の方が回数が伸びている事がほとんどだ。と言うのも、先ほどの話に戻ってしまうのだが、身体が正しい筋肉の使い方を覚えているからだ。そして、筋肉の持久力も僅かに上がっているので、その二つの効果が相乗して回数の増加に繋がるのだ。


練也の、有無を言わせぬ“やれ”の一言に折れたマギアだが、回数が伸びていると言う言葉に希望を見出さなかったわけが無い。でなければ、もう少しごねる。


さて、一悶着も終わっていざ本番である。


「では、いきます……各自、腕立て伏せの姿勢を取れぇい!」


練也の、野太い号令がかかると二人も復唱して姿勢を取る。


「今回は、二人まとめてやるので補助者は無し。よって、あごの先は自力で地面に着けるように……始め!」


号令と共に、二人が腕立て伏せを始めた。


マギア、前回よりもペースは若干遅いがしかし動きが滑らかだ。無理の無いペースで続けるつもりだろう。


ザクセンは、なるほど自前の筋肉に物を言わせて無理矢理やっているのが丸分かりだ。筋肉の張り具合を見るに、腕を中心に過剰に力んでいる。これではすぐに疲れて動けなくなってしまう、が、そこは本人に学んで貰う事にする。


出だしは、二人とも見た目の上では順調である。もう三〇秒が経過したが、マギアが二十三回、ザクセンが二十六回をこなしている。


マギアについては、このペースを維持していれば前回よりも確実に伸びる。ザクセンは、どこまで筋肉が保つかが見所だ。


「ほら、姿勢! 腰を落とすな、怪我するぞ!」


そろそろ一分が経過する頃、練也の怒号が飛ぶ。怒鳴られたのは、やはりザクセン。筋肉に無駄な力を入れすぎたせいで、へばりだしたのだ。


「っくぅ!」


「いきなりペース落とすな! 逆に疲れるぞ! 落とすなら徐々にしろ!!」


マギアも、一分が過ぎた辺りでペースが落ち始めた。その落とし具合が練也の目について、すかさず檄が飛ぶ。

腕立て伏せに限らず、ペースの維持が重要になる運動は、ペースを落とす際に急激に落としてはならない。落としたその一瞬は確かに楽だが、その後にドッと疲労が襲ってくるのだ。


「おら、まだ三〇秒以上残ってんだぞ! チンタラすんな、回数増やせっ!」


「あと二〇秒だぞ! サボるな! 絞り出せ!」


「あと一〇秒切ったぞ! しんどくてもやれ! 一回でも増やせ!!!」


___飛び交う怒号の末に、止めの号令が響いた。


練也の目の前には、真面目に本気を出し切ったのだろう、二人がへたり込んでいる。


マギアは、以前ほどでは無いが疲労を隠せておらず、ザクセンは以前のマギア以上に疲れている様子だ。


「マギア、ザクセン団長。それぞれ、実施回数を申告して下さい」


練也がそう言うと、二人は今にも死にそうな声で、五四回、四二回を申告した。

安心して下さい、五四回がマギアです。

ザクセンは四二回であるが、練也の見立てでは筋肉の使い方を覚えたら特に鍛えなくても回数は伸びると判断する。何せ、あれだけ筋肉任せにやっていて四〇回を越えたのだ。無駄な力や動きを省けばもっと伸びるのは明白である。


「さて、今から五分休憩します。五分後に、次は上体起こしを実施するので、先にどっちからやるかを二人で決めて下さい」


練也がそう言うと、二人は揃って仰向けに寝返った。余程本気でやったのか、胸は激しく上下し、頬は汗の湿りで土汚れが付いている。


やり慣れていない、と言う点を除いても相当頑張っているのだ。その様子に、練也は素直に感心する。


五分が経つ頃には、二人とも一応回復はしていた。とは言え、慣れない運動をした直後だ。回復の度合いはそこまで無いだろうと、練也は考える。


「次は上体起こしですが、どちらから先にやりますか?」


しかし、やる事は成さねばならない。そもそも、今はテストの体裁で実施しているからこうなっているのであって、実際の戦闘行動の中で耐えうる体力を獲得させるのが本来の目的だ。何なら、五分の休憩もいらないと言えばいらないのだ。


そこで一端難しい事を考えるのを止めて、さてどっちからだと二人に視線を戻す。


「私から先にやろう。上に立つ者が先陣を切らねば、示しも付かん」


堂々とした声を響かせたのは、ついさっきまで情けない姿を晒していたザクセンだった。その表情は、成る程自信の有無は別としても上に立つ者を自ら名乗る程度には責任感が滲み出ている。


ああ、この人は信用できる上司だ、と感じながら

 

「では、マギア。補助しろ。準備姿勢は先に教えたとおりだ……上体起こしの姿勢を取れぇい!」


号令が飛び、すかさず二人が姿勢を取る。


今度、時間があればザクセンとは二人で色々とやろう、と考えながら、


「ヨーイ……始め!」


スタートを切った。


上体起こしについては、割と見た目の筋肉が嘘をつかない。つまり、筋肉質な人間は普通にこなせるのだ。そうでなくても、身体が成長した中肉中背程度の体付きでもある程度はできる。

何故なら、身体が大きくなるにつれ、下半身の筋肉はもとより上半身を支えるために背筋と腹筋も同時に成長するからだ。

 

特に男性諸氏には、こんな覚えは無いだろうか?

小学校低学年の頃は腹筋がろくにできなかったが、中学生くらいになれば何故できなかったのかが分からないくらいに難無くできた、と言う経験が。

極端に太っている等、そう言った例外を除けば、大抵は幼少期にできなかった事も成長すればできるようになった、と言うのは割と普通の事だ。


閑話休題。


開始から一分が経過した。


やはり、先ほどの腕立て伏せが響いているのかザクセンの表情は険しい。


しかし、回数の方は一分を経過した時点で五二回だったのでペースそのものは悪くはない。


「良いぞ! ペース維持しろ!」


檄を飛ばすも、内容は叱責では無く激励。


厳しい言葉で追い詰めるだけで無く、褒めて引っ張るのも指導官として重要な要素だ。追い詰めるだけなら、各々でやってくれて結構。褒める他人役は指導官の仕事なのだ。


激励が効いたのか、むしろ先ほどまでよりも若干ペースが増す。

 

「っ何のぉ!!」


ザクセンが、自身に鞭を入れて動きが鈍る身体を無理矢理動かす。そろそろ、筋肉自体がオーバーワークになりかけているのだろう。それでも、ザクセンの動きにプルプルと震えが混ざり始めている。


現在で一分四〇秒を過ぎた。


ザクセンの回数は、七九回目で立った今八〇回になった。


ほう、と練也は感心する。


団長の地位に就けているのはやはり伊達では無いようだ。


「……五、四、三、二、一、止め!」


二分が経過。

ザクセンの記録は、初回にして八八回。かなり頑張った方だ。

自重トレーニングは何でもそうだが、体重が軽い方が負担は少ない。

それに対して、ザクセンは明らかに筋肉質だ。身長は、練也の目算で一九〇センチメートル前後、肩幅は広く、腕は丸太の如く太く、胸板も厚い。下半身も、ハッキリとは言い切れないがそんな上半身を支えてるだけあり発達しているのは明らかだ。つまり、軽くても最低八〇キログラム以上はあるのだ。


そんな身体に、八八回も起こして倒して、を繰り返させたのだ。練也をして、やるな、と言わざるを得ない。


「お疲れ様でした。息が整ったら、マギアと交代です」


「う、うむ……っはぁ! はぁ……」


「ところでマギア。補助者をやった感想はどうだった?」


ザクセンの回復まで少し時間がかかると見て、練也はマギアに話を振った。


「そうだね……足を抑え込むのにかなり力を使った感じはあるよ」


「そうか。まぁ、実際この運動は腹回りだけと見せかけて実は腹筋と下半身に力が入るものだからな。補助者をしていたら、こんな勉強が割とできるぞ」


「ねえ、どうして……いや、後で訊くよ」


「途中で止めるなよ、気になるだろうが。あと、どうしてこう言う事に詳しいかって事なら、前にいた世界でこの手の事はかなり勉強したから、って返す」


「……そう、かい」


「どんな勉強か、内容が気になるなら後で教えるぞ?」


「それこそ、後で考えるよ」


二人が話している間に、ザクセンは立ち上がれるほどには回復した。背筋を伸ばすのが辛そうではあるが、この際仕方が無い。何せ、そうなるような運動をしたのだから。


「じゃあ、次。マギアだ……上体起こしの姿勢を取れぇい!」


号令がかかると、マギアは素早く姿勢を取った。女性自衛官も顔負けの、節度のある動き。


「ヨーイ……始め!」


開始の合図と共に、マギアは___練也の予想よりも更に遅いペースで上体起こしを始めた。


んん? と、流石の練也も怪訝になる。何せ、凄く遅いのだ。


練也の感覚で言うなら、身体を起こして再度倒すまでの一スパンは一~二秒ていどのペースで繰り返す。しかし、目の前のマギアは二~三秒弱ていどのペースでやっているのだ。


自重トレーニングに限らず、こう言った類の運動はローペースでやる方が疲れやすい。何故なら、その分筋肉に負担がかかる時間が長くなるからだ。


しかし、やっているのはマギアだ。それに、何かの意図があるのかも知れない。


そう考え直して、練也は時計に目をやった。


既に一分を経過しようとしている。そして、マギアの実施回数は___


「三九……四〇……四一……」


お? 意外とペースは悪くない。と言うか、よく見たら今のマギアのペースは開始初期よりも確実に速くなっている。


ああ、スロースターターなのか、と練也は納得した。どう言う理由かは個人毎で違うが、最初はゆっくりと、そして徐々にペースを上げていくやり方だ。


納得している間に、マギアはトップペースに入ったのかペースが一定になっていた。一スパンは、一秒と少し。


現在、一分半を経過。実施回数は、七八回を超した。間違い無く事まま伸びる。もしかすると、ザクセンの八八回を超すかも知れない。少なくとも、今のまま行けば間違い無く越える。


さて、どうなる……


練也がそう見据えた瞬間、マギアの動きがピタリと止まった。姿勢は、上半身を起こしたまま、呼吸は荒い。肩が上下している。


相当消費しているようだ。


そこで、練也はマギアのスロースタートの理由に察しが付いた。最初に、わざとゆっくりやってある程度スタミナを残そうと考えたのだろう。そして、今動きを止めているが、すぐにハイペースで再開するだろう。


現在、一分四八秒。実施回数は八四回。


そして、五〇秒になる手前で練也の予想通り再開。


しかし、ペースは思うように上がらないらしく、決して速くは無い。


しかし、回数は着実に稼いでいる。


「……五、四、三、二、一、止め!」


「つっああぁぁ!!!」


止めの合図と、マギアの叫びが重なった。マギアはそのまま動かなくなってしまう。


「……実施回数は?」


間を空けて練也が訊くと、補助をしていたザクセンが、


「……九一回、だ」


と、唖然とした様子で答えた。


その唖然がどこから来ているのかは分からないが、自分がザクセンと同じ立場なら何よりも回数で抜かれた事に衝撃を受けるだろうな、と練也は思った。女性を侮るわけでは無いが、それでもショックはあるであろう事は容易に想像が付く。


そうでなくても、九一回は目を見張る物がある。何せ、初回なのだ。何度も初回を強調しているが、二人とも初回なのだ。


やるな、その一言に尽きる。


特にザクセンだ。団長として部下を引き連れるなら、それ相応の実力が求められる。彼は実力でまだ伸び代があるがつまり、上に立つには充分過ぎるポテンシャルを秘めていると言う事だ。


「では、マギアも終わったので再度五分の休憩です」


マギアの様子が落ち着いた頃合いで練也はそう告げた。


ここまでで、約十五分程度が経過している。たったの、十五分だ。


しかし、目の前にはおよ十五分を過ごしたとは思えないほどに疲れている。それほど本気でやっているという証左ではあるが、練也の評価としては結果が少し物足りないところだ。


まあ、そこは後々から伸びるから良しとしよう。


練也はそう結論付けて、現実にバテ果てている二人を見た。


顔色は、未だ良好。

汗は滝のように流れているが、それが止まっている様子は無い。


「二人とも、汗はまだしょっぱいですか?」


その質問を飛ばした瞬間、は? と言わんばかりの顔が二つできた。


「いや、ふざけているようで実はかなり真面目な質問です」


二人とも、頬を濡らす汗を拭って舐めると、しっかりしょっぱかったらしく頷いた。


汗がしょっぱいのは当たり前、と言うわけでも無い。体内の塩分が不足し始めたら、汗の味がしなくなる。そうなれば、たちまち脱水症状を起こし果ては熱中症になって、最悪死ぬ。


監督者として、実施者のポテンシャルは確実に掌握しておかなければならない。

その立場として、二人に異常が無い事に胸をなで下ろす。


とは言え、だ。


何であれ、二人が疲れ切っている事は変えようが無い。恐らくと言わず、懸垂については芳しくない結果が待っているだろうと予想はつく。


まぁしかし、この二人なら全力は尽くしてくれるだろうと、考える。結果はこの際二の次にする。どうせ、やらせれば伸びるのだ。


何より、今回の目的はあくまで、今後団員にやらせる恒常的体力錬成の強度の目処を付ける事にある。


途中、忘れていたが、今思い出した。それに、二人の結果自体は覚えている。問題は、無いと言えば無い。


いつの間にか、無自覚に見失っていた目的も思い出したところで、


「では、最後に懸垂です」


と、レンヤは言った。


その声を聞いた二人は、残り僅かな活力を振り絞って立ち上がった。その姿は、連戦に疲れ果てて尚折れない戦士のようだ。


二人が、それぞれ懸垂機の真下に立つ。


「三秒毎に合図をするので、それに合わせて身体を持ち上げて下さい。一回遅れても構いませんが、二回目遅れたらそこで失格です。また、堪えきれずに落ちても同じく失格です」


説明を聞く二人は、すぐに終わらせてくれと言わんばかりの目で練也を睨む。


「あぁ……じゃあ、飛び付きヨーイ……飛び付け!」


威圧感に耐えられず、練也は説明を省いて号令をかけてしまった。幸い、二人とも順手でぶら下がっているので問題は無い。


「……一!」


問題無いと見るや否や、練也はすかさず一回目の号令をかけた。しかし、切れの良い号令に対して二人は、プルプルと何とか一回身体を持ち上げられた程度だ。


「……二!」


二人の身体が降りた瞬間、三秒が経過して間髪おかずに二回目の号令。


「ふっ、くぬぬぅ……!」


「むっ……ぬらぁ!!」


二回目も何とか堪えた。


「……三!」


「ふうっ、んん!!」


「ぬぅっ……づあぁ!」


三回目で、マギアが一回目のパス。ザクセンは、辛うじて間に合った。


「四!」


「ふっ、うぅぅんん!!」


「ぐぅっ、ぬあぁ!!」


四回目、二人とも堪えきった。しかし、明らかに満身創痍の風体だ。


「……五!」


「くぅっ、うぅぅ……っ!?」


「ぅぐっ、ぐがぁぁ……ぬぉ!?」


いけるか、どうだ!? と固唾を呑んだ時、しかし二人はドチャッと音を鳴らして、地面に尻から落ちた。


あちゃぁ、アレは、痛い。見るからに、痛い。


練也も思わず顔をしかめてしまう。当の二人は、もはや痛みにうずくまる事しかできないらしい。呻き声も聞こえない。


「あ、あぁ……大丈夫ですか?」


だいじょば無いですと言いたげに、二人が身体をよじる。シュールである。


「二人とも、懸垂機から落下したのでそこで終了です。でそれぞれの実施回数が、ザクセン団長が四回、マギアが三回になります」


一応、本人達も自覚しているだろうが、結果を伝える。


それにしても、ひど……もとい凄い有様だな。


もう無理です動きたくない、と様相で物語る二人を見て、練也はそう思った。


先日の、団員達の体力テストも最後は皆こんな風に、死屍累々たる有様を晒していた。顔を真っ青にして金色モザイクを垂れ流していた者も何人かいた。


とにかく、全員が動けなくなっていたのだ。


となると、やはり初期の間はLSDと腕立て伏せをメインでやらせるか。


と、練也は頭の中で今後の恒常的体力錬成の内容を考え始めた。


この先、二週間はLSDと腕立て伏せをやらせて、三週間目から上体起こしと懸垂も加えるとして、走るのはグランド一〇周で、腕立て伏せは最初は全員二〇回を最低限させて、それから、それから___


二人が再び立ち上がるまでの間、練也はひたすら体力錬成の内容について考え続けていた。



___後日



団長室の机には、恒常的体力錬成原案と銘打たれた数枚の書類が提出されていた。


ザクセンが、壊れたロボットみたいにぎこちない動きで書類を取り、内容に目を通していく。


「……鬼か」


そこに記されていた内容は、以下の通り。


毎日、グランド一〇周、腕立て伏せ三〇回、上体起こし三〇回、懸垂四回を最低限とする。


バカを言うな! と思わず叫びたくなったがしかし腹筋に響いた雷撃がそれを留める。


ザクセンは、怒鳴る代わりにこう呟いた。


「……この先が……怖いな」



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