始まりの剣と天使
幼い頃から良く同じ夢を見た。
その時の私は全くもって関わりの無い言語を決まって話していた。
しかし、私はそれを当たり前だと受け取るのだ。
夢の中の私は村に生きていた。
夢の中の私は誰よりも信仰していた。
夢の中の私は誰よりも救いたかった。
夢の中の私は剣と旗を掲げ続けていた。
夢の中の私は何度も悲しんだ。
夢の中の私は前を向き続けた。
夢の中の私は焔の中へと散っていった。
今日も今日とて変わらぬ夢を見て私は日常を迎えるのだ。
私の名は神司 鈴奈。かみじ、れいな。個人的に割と派手だなとか思っている。なんだこの名前は一歩間違えたらキラキラネームじゃないか?
さて、私は日本の東京に住む至って普通の華の高校二年生の女子だ。普通に学校に行き、普通に勉強して、普通に友達と遊んだり話したりする女子だ。(少々荒いとは思っているけどね)
「ねぇねぇ、知ってる?また変死体だってさ」
「知ってる知ってる!あれでしょ?表面は綺麗だけど心臓だけ抜き取られてるとかいう死体でしょ?一部じゃオカルトとして有名だよ!」
「嫌だよねぇ、こんな科学の現代にそんなオカルト案件怖くて無理」
放課後、人を待つ間廊下で聞こえた会話。
この話は割と有名で約一年程前から目立ち始めている。何でも心臓だけ無い死体が見つかるらしい。しかしながら、どの死体にも斬られた痕など一切無く不可解極まりない事件として世間を騒がせている。最近じゃ悪魔の仕業だの悪霊だのなんだので変なエクソシストやら神父やらが良くテレビに出る。本当にお疲れ様です。
くそ、遅い。と時計を見た時だった。バタバタと忙しない足音共に待ち人来たれり。「何でそんなバタバタうるさいの?お前は逃走中か?」と言いたくなったがそれはもう無視にしよう。息を切らすこの少女は豊坂明里。名前からして輝いてるが確かに輝いてる、存在が。明るい黒髪ロングと大きいおめめが眩しい美少女である。性格は、残念(そして軽く戦闘狂入ってる気がする)。対して私は本当に普通。私的に。
「ごめんね!ごめんね!遅れた!」
「いや、お前常習犯じゃん?もう私何とも思わないよ?」
「既に見捨てられていた!?」
「お前は既に死んでいるッ!」
「酷いね??取敢ず帰ろうよ?お腹空いた」
「はいはい分かってますって」
「今日も変死体あったんだってね。しかもこの辺」
「みたいだね。世の中どうなってんだか…。今更そんなファンタジられても困るわ」
「この方ファンタジーを無理やり動詞にしてる…」
夕方の何時もの帰り道。私と彼女の家は道中までは一緒なのでそこまでは一緒に帰る。東の空から少しずつ群青が広がり始めていた。
別れ道で明里と別れ帰路に着いて暫くたった頃、私はふと気が付く。寒い。今は六月だ。ここまで寒かっただろうか?早めに帰ろうと足を早める。何かが、私の中の何かが危険信号を出している。早く通り過ぎなければ。でないと危ない。危な……思わず立ち止まった。暗い。こんなに暗いのか?まだ17時30分とかだ。しかしもう既に20時レベルで暗い。
その時、背中に悪寒が走った。ヤバイ何かが、私を見ている。ソレは目の前にいつの間にか居た。直感的にソレこそが変死体の原因と解った。ソレの姿は全身が真っ黒で、獣のような、しかし長い角と尾があって、口が異様に大きくて、漆黒の蝙蝠の翼あって、鋭過ぎる爪があって、まるで醜悪な悪魔だった。
逃げなくては、そう思うも足が動かない。悪魔はこっちを見ると獲物を見つけた肉食動物の如くその巨大な口に笑を称えながら近寄ってきた。
やだ、死にたくない、助けて、喰われる、私は、私は……
どこからか声が聴こえた。私の心の奥底から聴こえた。その声は夢の中の私の声と同じだった。関わりの無かった言語、その意味が解る、何と言っているのか解る。
祈って、信じて、謳って、前を向いて、そう。貴女はできる。貴女は持っている。その力を。
気が付けば私は祈りの姿勢をとっていた。口が独りでに謳い出す。全く宗教とか知らないけれども、これは聖なる詞だと理解している。叫び声をあげた。
「我が名はジャンヌ・ダルク!これより我が信仰の元、剣を振るい、邪悪なる存在を断つ!!」
光が、私を包む。暖かくて懐かしい光だ。私の姿が変わる。髪の毛が伸びるのが見えた、光る金髪。鎧が足や腰、腕に装着された、不思議と重くない。
光が消え去る。先ず自分を見た。完全に西洋式という感じではなくある程度動きやすいようだ。この衣装作った人割と現代について分かってらっしゃるようで。でも良いのか。ジャンヌ・ダルクって聖女じゃないんですか、こんな露出あって大丈夫ですか、えっ?気にしてはいけない?あ、ハイ。
目の前の悪魔は何故だという顔をしていたが突然唸り声をあげ飛びかかって来た。跳ねて避ける……って跳ねすぎだ!運動神経上がり過ぎでは!?慌てて立て直す。なるほどさながら魔法少女と。腰に下げてあった銀色に輝ける剣を抜く。剣の使い方なんて知るわけもないが私の手にしっかりと馴染んだ。悪魔が動揺しているがわかる。先程までの余裕など無くただ単調に飛び掛ってくる。さらりと交わして、剣を構えた。
「終わりだ!散れ!!」
剣を振り下ろす。確かに手応えを感じた。両断された悪魔。その身体は砂になって消えていった。周りが明るくなる。やはり、アレが理由だったようだ。ちょっと整理が追い付かず立ち尽くしていると上から拍手が聞こえた。…上?バッと上を見上げれば、そこにはまぁ何ということでしょう。イケメンだ。凄くイケメンだ。美形だ。後その服高そうですね。そして翼が生えている。飛んでいる。なんだお前。
「いや、凄いものを見させてもらったよ!パートナーとなる天使と出逢っても無いのに自らの力だけで変身するなんて!そうさ!俺が探していたのは君だよ!間違いなく!
天使。まさにそれだった。私が唖然とする中美形君は私の目の前に降り立ち、恭しく跪き私に手を差し伸べた。うわ何だこいつめっちゃイケメンだムカつく。銀髪と白銀の翼が夕日を浴びて光る。誰かサングラス持ってこい。
「俺の名はアラン。君を導く天使さ。ジャンヌ・ダルク…いや、神司鈴奈」
この、アランとの出逢いこそが私の運命を大きく変えたのだった。
ていうかついでにイケボじゃねぇかコノヤロウ。
処女作でございます。こんな奴の処女作を見てくれて感激致します。
少し前からき殴っていたものの何もせず放置マンしていた何かの産物。
対して反省も後悔もありませぬ……。
しかし割とごっちゃである。
なんてこったい……。
そこは反省致します。