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第一話『人形2』

何の冗談だと思った。

いくらなんでも都合が良すぎるだろう。と思った。

いやいや、ありえないありえない。まだ普通に「霊能力者事務所」とか書いてるほうが信じられるよ。と思った。


今現在、私は異形の怪異に悩まされている。

それは、「私が捨てた人形が復讐のために一日ごとに近づいてくる。」というものだ。

最初の電話からはや四日目の今日。

人形はもうすぐそこまでやって来ていて、今日の夜十二時にはこちらに着くらしい。

そして私を殺す。

そんな迫り来る死におびえ、精神をすり減らしていた私は、目的は無かったが街へ出た。

さして何をすることも無く、日常のヒトコマを過ごしていた私は、これが明日には終わってしまうと感じて、無性に泣きたくなって事実泣いた。

泣き終わってからとりあえずその場を離れ、目に残った涙で前が微妙に見えない状況でふらふらと歩いていたら、なぜか目の前には古びた三階建てのビルがあって、そこの二階の同じく古びた看板には何かの冗談のようにこう書かれていた。


『犬神怪異探偵事務所』


もうなんだか地獄に仏というより、地獄に異文化異教の見知らぬ神様が落ちてきたような感じだった。

私もまだ『犬神探偵事務所』って書いてあるなら普通に見てスルーしたかもしれないが、

何度見直しても「神」と「探」の間に明らかに不要な『怪異』の文字が入っていた。

何度も何度も擦り過ぎて、泣いて目を腫らしていた時よりも目を赤くして、それでも古びた看板の文字は


『犬神怪異探偵事務所』


最近非現実的なことが連続したせいなのか、私はその看板と数分戦った。



「うぅぅ、痛い……」

本当にヒリヒリする。いくらなんでも擦りすぎた。うん、もう少しこれからは早く現実と受け止める事にしよう。

結局、いくら目を擦っても看板の文字は変わらす、私は素直に事実として受け止める事にした(所要時間約五分三十秒)。

さて、現実として受け止める事にはとりあえず成功したが、この後どうするか、が問題である。


正直言って入りたくない。


なんかヤバイ予感がする、うん、かなり。

だって看板に『犬神怪異探偵事務所』なんて普通に書く人が経営してる所ですよ。というかなんかビルのぼろさ加減から言って、まず間違いなくお客さん多くはないでしょう。

なんというかあれです、、客のいないラーメン屋より、まだ客のいる定食屋に行きたくなる気分です。(この場合の定食屋は霊能力者関連という事で)


ああ、今すごくLIFEカードが欲しい。どうする? どうするよ私!?


悩んだ末、私は五百円玉の裏表で決めることにしました。

表が出たら覚悟を決めて入ろう。裏が出たら他のもう少しまとも?そうな霊能力者を探そう。

親指の上に乗せられた五百円玉は、綺麗にはじかれ、ぱしっ、と私の手の中に納まった。

恐る恐る手をどけてみるとコインは――――表だった。


「……ま、まぁ今のは練習という事で」


誰も聞く者はいないが、しいて言うなら自分に言い聞かせている。

再び親指の上に乗せられた五百円玉は、二度目も綺麗に宙を舞い、そしてまた表を出した。


「ニッ…2分ノ1ノ確率デスヨ? グウゼングウゼン」


もはや入りたくないという現所有者の一心だけで、何度も何度も五百円玉は宙を舞い、そして何度も何度も表を出した。

「……」

結局、運命(五百円玉)の意思?によって私は『犬神怪異探偵事務所』のドアをたたく事にした。


階段を上り、ドアの前に立つと、やはりドアにも『犬神怪異探偵事務所』のボードが貼られていた。

ここまで来て躊躇するのもイヤだったので、残った勇気を振り絞って小さくドアを2回ノックした。

正直この時私は、どうか何か適当な休業日で中には誰もいませんように、と心の中で願っていた。

数秒後、願いは叶わず、ドアはギギギィっとホラーな音を立てて、ゆっくり内側へ開いていった。

だが、そこにはドアを開けた人物がいなかったのである。


さっそく家には帰りたくないがどっか適当な所に帰りたくなった。

こんな時に発動するのねマイ帰巣本能。


「おい」


そんなことを考えながら一歩身を引いていると、何処からともなく声が聞こえてきた。

まだ幼い、少女のような綺麗な声。

だが何処かその声には高圧的な何かがあって、私はさらに一歩身を引いた。

「どっ…どこから……」

周囲を見回すも、声の主は見つからない。

マリーの声とは違う、だが近くから聞こえるのに誰もいないという状況は、昨日からあの声に恐怖心を植えつけられた私には耐え難いものだった。


「……その反応は私を侮辱しているのか?」

「へっ?」


よく聞くとその音源は自分の足元からすることが分かった。

目を下に向けてみるとそこには――――


――――背伸びしてドアノブを掴み、プルプルと震えながらドアを開けている小さな女の子が居た。


「――――」

「おい…放心してないで……自分で開けろ…もう足が……」

「はっ! ごっ…ごめんね、小さいから気づかなくて」

そのとき理解した。ドアを開けた人物は、居なかったのではなく、ドアに隠れて見えなくなるほど小さかったという事に。

私はとりあえずその少女をドアから解放するために自分で最後まで開けて、中へ入った。


中は意外と普通だった。といっても玄関からしか見えていないが、テレビドラマとかでたまに見る探偵事務所とさして変わらない。

足の低いテーブルを挟むように置かれた二つのロングソファー。本棚にもタイトルは見えないが大小さまざまな本が納まっている。もう少し置くに行けば、パソコンとかが置かれた大きなデスクが見えて、そこにこの探偵事務所の主が座っていることだろう。よかった、なんだか普通っぽい。

「おいこらそこの」

「ん? どうしたのかな?」

下から高圧的な態度と可愛い声を発してくるのは先ほどかなりがんばってドアを開けてくれた女の子だ。

背はすごく小さく、今はあまり言いたくないが、まるでお人形さんみたいだった。

黒くて長い髪は後ろで太い一本の三編みに編まれ、たとえは悪いが黒い海老の尻尾みたい。

その髪とは対象に、彼女は輝くように白いワンピースを着ていた。

これで笑っていれば抱きしめたくなるぐらい可愛かったのだろうが、その顔はどう考え、どの角度から見てもご機嫌斜めである。

私は目線を合わせるためにひざを曲げて手を置いた。

「何か言う事はないか?」

「あ、さっきはゴメンね。すぐに開けなくて、大変だったでしょう?」


「違う!」


空手や柔道などで一括するときのように、その小さな口からは空気を震えさせるような怒声が響いた。

「何か訂正する事はないか?」

「訂正?」

「さっき私がドアを開けてやったときに何か言わなかったか?」

さっきドアを開けたとき?

そのとき私が話した事といえば。


――はっ! ごっ…ごめんね、《小さいから》気づかなくて…………。


あっ、あれか。

「ゴメンね。気にしてたんだね。背が小さいこ」


「違う!」


また空気が震えた。

「断じで私は小さく等とは無い! あれだ、お前らがデカすぎるのだ! 私もこんな体じゃなかったら今頃は……っ!」

最後の言葉を言っている途中、彼女はまるでうっかり秘密を漏らしてしまったかのように口を押さえ、少しの間黙り込んだ。

「とっ…とにかくだ! 私は小さく等とは絶対にない! これは日本女性の標準体型だ!」

彼女は無い胸を精一杯張って断言した。それが日本女性の標準体型だったら日本男子はすべからくロリコンである。ん〜、背伸びしたい年頃なのだろうか?

「じゃあ、これあげるから許してくれない?」

私はかばんの中から小さな紙袋を取り出して彼女の小さな手の中に置いた。

「なんだ? これは?」

「開けてみて」

なんだか物珍しそうな彼女の顔を見ていると、さっきまで精神が限界寸前だった自分が小さくなっていくのが分かった。なんだか少しだけ世のロリコンの気持ちが分かった気がする。

彼女は綺麗に紙袋を止めていたテープをはがし、中身を取り出した。几帳面な性格のようだ。


「おぉ〜」


袋の中から顔を出したのは、私がさっき買った携帯ストラップだった。

黄茶色いトラ模様のネコがキュートなストラップだ。

彼女はそれを自分の視線と同じ位置に持っていって、歳相応に目をキラキラさせながらそのストラップを凝視している。

どうやら喜んでくれているようだ。

「こっ、これをもらってもよいのか?」

「うん、家にまだ似たようなの一杯あるから」

彼女は再びおぉ〜、と目を煌かせながらそのストラップを見て、ハッと我に返って、先ほどの高圧的な雰囲気を生み出した。

けど。

「よっ、よし。これでさっきの失言はチャラにしてやろう」

「ありがとうね」

そっぽを向いてしまったが、どうやら照れ隠しのようである。

ストラップ一つでここまで喜んでくれるとこちらも上げたかいがあったというものだ。

彼女は大事そうにワンピースのポケットにストラップをしまいこんだ。


「…ところでここに何のようなのだ?」

「あ」


本題からすごく逸れていた事に今気がつきました。



「人形1」が少し暗かったので、2は少し明るめにしてみましたw

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