視線回路
「はあっ はっ・・・ っ」
いつも犬が吠えているおうち
山之内さんのおうち
オレンジ色がお気に入りな人のおうち
アパート
坂道
坂道
坂道
左折したら
ユイの家。
景色がビュンビュンと変わるうち、無意識に家に帰っていた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・、っ」
夕日がキラキラ反射して光る海の水面。
波打ち際を目で追う。
「おっせーよ」・・・
「っ・・・?」
ユ・・・
「ユイ・・・?」
振り返ると背中にジリジリ当たる夕日の光。
目の前には駆け寄って来た、ユイの呼吸。
「ごめ・・・」
「おっめー馬鹿だろ!!!」
びくっ!
ユイは久々に真剣な表情をしてる・・・
ユイ・・・
怒ってる?
「どこほっつき歩いてんだよ!今何時だと思ってる!?6時過ぎてっからな!約束では早く帰ってくるって言ってたよな!?いつもお前5時には帰ってくっけど、おせえの分かってんの!?」
堰を切ったようにユイの口から言葉がでてくる。
「っごめん・・・。公園行ってて・・・」
「・・・・・」
「で・・・、考え事してて・・・・」
「・・・・・」
「ナンパ・・・されて・・・」
「・・・っナンパ!?」
「・・・うん」
自分でも驚いてるけど、ユイもまた驚いている。
「はーっ・・・・。お前なー・・・」
また怒られる。
そう思って目をつむった。
ふわり
香る香り
これは、ユイの柔軟剤。
「・・・っ、ユイ!?ユイユイユイユイ」
わたしの頭を軽く包むユイの腕。
「ユイ!ユイユイユイユイユイ」
「うっせ、黙れ阿保」
「あ、阿保!?阿保だけど・・・」
「阿保を通り越してる。」
そういって彼は彼の頭をわたしの頭にのせる。
顎が突き刺さって痛い・・・
「いっ、痛い痛い!」
「罰だ」
ぎゅーっとユイの腕で頭を締め付けられた。
「いってえー!!!」
「あはは、痛がるが良い」
ユイが目の前にいる。
ユイが触れている。
今晩の夕食は喉を通るだろうか
今晩は、よく眠れるのだろうか