紫外線
暑い夏。どうやら早く過ぎ去ってほしい、と。
去年まで思うことが多かったんだけど・・・
「カナのあほ。なんで風呂の洗い方こんなに汚いんだよ」
「えー・・・?」
ユイの家に来て1週間が経つ。
時間が経つということはとても早く、わたしたちはもう打ち解けあっていた。
「俺の洗い方ちゃんと見とけよ」ユイはそう言った。
ユイは・・・
わたしのこと、どう思ってるんだろう。
急に来て迷惑と思ってるのかな。
うっとうしいとか考えるのかな。
・・・
分かんない。
ユイに聞きたいけど、なんか恥ずかしくてやだな。
気の迷いが生まれた。
「ちょっとレイちゃんとこ遊びに行って来る」
ぐるぐると回る頭が、気分転換という手段を思いついた。
レイちゃんの家で今までの事を話したりしよう。
そうしてもやもやを解決しよう。
決めた。
「あー・・・、うん。まあ早く帰ってこいよ」
「はーい」
大きな家に、扉の閉まる音がした。
「あははは!カナはいっつも面白いね」
「はーあ?」
レイコの家でのんびり過ごす時間。
ほとんどレイコに馬鹿にされている。
今は5時30分。
ユイには5時に帰ってくるよう言われたが、うっかり帰るタイミングを逃してしまった。
「はー、笑った笑った。てかカナ、早く帰んなきゃじゃん」
「あー・・・そうだね。帰らないと、夕飯の準備あるし」
「うん、いとしのユイくんが心配してるよ」
「ばか!」
レイコはそういって、机に腰掛けたままわたしに手を振った。
「ばいばい、また明日」
レイコの家を出て、公園に向かった。
レイコと話して、心のもやもやがなくなったんじゃない。
逆に増えてしまった。
色々考えるうちに増えて行ったようだ。
公園に着く。
夕方なのに空が青く明るい。
心地良い風が吹くけどそれも一瞬で、暑さがジリジリと肌に突き刺す。
公園のブランコに腰掛けて、ゆっくりとこいだ。
昔からブランコに乗ると酔ってしまう体質だ。
だからだろうか
クラクラする。頭が。
酔ってるの?暑いの?それとも・・・
「なにしてんのー?」
少し離れたところで声がした。誰?
「もうずぐ6時だよ、お嬢さん」
こんな海と山しかいない田舎。高校生の男が立っている。
一昨年中学を卒業していった人だ。覚えてる。
「・・・ですね。では」
絡まれちゃったらめんどうだし。さっさと帰ろう。
「ちょっと待ってよー」
振り返れば他に2人いた。合わせて3人。
なかなか田舎にもこんな人がいるのだと感心する。
「君、噂では男と2人で同居してるらしいじゃん。いいねえ」
ピクリと頬が動いた。
からかってるの?
こんなの反応したら負け、だから無視して帰る。
「今から隣町行くんだけど、一緒に行かない?」
・・・
すごく露骨なナンパ。
なのに
心が迷っていた。