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2日目

カナ(花菜)、ユイ(唯)、レイコ(鈴子)をよろしくお願いします!

「ユイユイユイこげたこげたこげた!」

「はっ?なにが!?」


夏休み2日目早朝。焦げ臭い朝が来た。


「なにがこげたんだよ!」

ユイが部屋から飛び出してきた。

キッチンで突っ立っていた私を見たユイは大急ぎで駆けて来た。

「め、目玉焼き・・・」

目玉焼き、作っている最中ごげてしまったのだ。

「・・・はあ?えええ・・・。しょうもないことで驚かすなよ・・・」

「ごめんなさい・・・」

私は家からもってきたエプロンを握り締めながらうつむいた。さすがに恥ずかしい。

「だいたいなあ、どうやったら目玉焼きという簡単な料理も出来ないんだよ。フライパンの上で適当に焼けばいいだけじゃねえか」

「い、いや、黄身まで火を通したほうがいいのかなとか思って」

「だからって目玉焼きはこげたりしねえんだよ」

ユイはぷんぷん怒りながらまっくろくろな目玉焼きを指差した。

寝ているときに飛び起きてきてくれたようで、寝癖が直っていないままだった。

「もうお前料理するな。別の事しかするな」

ユイはあきれているようだった。

だって

だって

「だってさ!」

つい大声で叫んだ。

「だって・・・、ちょっとぐらい、女の子らしいことしたかったから・・・」

「はあ!?」

立ち去ろうとしていたユイが振り返った。

「カナだって女子だもん!」

唖然とするユイの横をすり抜けて自分の部屋に戻った。





「あっはははははは!カナうける!」

「そこまでうけないよ」

私の、いや、みんなの幼なじみである親友、春田鈴子ハルタレイコがユイ家にやってきた。

「だって目玉焼きこげるとか(笑)うけるって」

「レイちゃんー・・・・!」

レイコはいつも私を馬鹿にする。そんなところがいいところでもあるが。

レイコは愛想も良い、前髪を真ん中で分けた髪の長い女子だ。

イケメンな性格もいいところ。

「ま、頑張ってみなよ」

「なにをよ・・・」

レイコは言い残して帰って行った。





「ただいまー」

近くのスーパーで今晩の夕食の買い物をすませてきた。

ユイは友達の家に行ったがまだ帰っていないようだ。

冷蔵庫に食べ物を詰め込んで、洗濯物を取り込みに外へ出た。

夕方6時となると、昼間より涼しげだ。

「きもちいなー・・・」

ぼっちでつぶやいた。

色々考える。

おかあさんなにしてるかなー

夕飯なに作ってくれるのかなー

ユイまだかなー

って。

洗濯物を取り込んでからイスに腰掛けた。

静まり返った家の中、時計の音だけたまにに聞こえる。

あれ?

ふとキッチンの前にある台を見つめた。

紙がある・・・

近くに歩み寄って白い紙を手にとった。

パサ・・・

なんだろう、これ、裏になにか書いてあるっぽい。

見てみようかな。

『カナ』

紙はノートかなにかをちぎったものだ。私宛だった。

「ユイ・・・?」

ユイかなあ、なんでだろう。


『カナ

 

 目玉焼き黒かった。あと苦かった。もったいないけど捨てた。

 今度は作り方教えてやるから早起きしろよ。

 あとエプロン似合ってなくない。

                   

              唯』


「なに・・・これ・・・」

箇条書きの殴り書き書かれた置手紙、あまり目立たないところにあった。

あの黒いの、食べてくれたの?

捨てたったるけど、もったいないって?

作り方教えてくれるの?

エプロンがなんで?

疑問符が頭の中でとびかった。


ガチャ


ドアの開く音と入ってくる風。

「おかえり・・・」

「ただいま」

ユイだ。

「ユイ!」

「?」

私の中でたまってしまった言葉を伝えたい。

「これ、なに!?」

「・・・」

「これ、なに!!」

「別に・・・」

ユイは言葉を詰まらせている。

「そのまんまだよ」

そう言ってユイは去り際に私の髪を手でクシャクシャとした。

「ユイったら!」

そう言っても返事はなかった。


ずるいよ、ユイ。

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