第五話:友達と少女
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、一切関係ありません。なお、この作品には一部同性愛的な表現を含みますので、嫌悪感を抱かれる方はご注意ください。
4校時目がやっと終わり、昼食の時間になった。
シオリとミヅキは、ミヅキの友だちと食べようと思っていたが、シオリは何故かいろいろな人に誘われた。
クラスメイトの女の子、違う学科の男子生徒…ミヅキはまた胸がむかむかしてきたが押し黙っていた。
シオリは丁重にそれらの提案を断り、ミヅキに向き直った。
「一緒に食べよう?」
ミヅキは何も言わず小さく頷いた。ミヅキの友人である生徒はその様子を見ながら待っていたのか、廊下から手招きした。
ミヅキの友だち二人を先導に階段を上っていく。そして人があまり来ないせいか暗い所まで来た。
小さめの扉のノブを回すとそこには屋上があった。今日は他に誰もいないらしくその場所は静かだった。
円を描くように座り、弁当を開き食べ始めた。
昼食をとりながら、少女たちは授業のことやクラスのこと、家のことを話し始めた。
ミヅキはシオリの方を見て、お弁当はどうやって出したのだろうかと考えていた。
シオリは他の二人の話を聞きながら一生懸命に相槌を打っていた。手には水色の箸と小さなお弁当を持っていた。
黙っているミヅキに気付き、シオリは心配そうにミヅキを見た。
「大丈夫?具合でも悪いの?」
「え、平気だよ!具合なんて全然悪くないし。」
「そう?それならいいけど…。」
それでも心配そうに切ない顔をするシオリに、頭を撫でてから、ありがとうと言った。
シオリは照れながら笑った。昨日見たような綺麗な笑顔だと思った。
「そういえばさ、ミヅキとシオリちゃんて仲良かったんだねー?」
「うんうん。意外だったよ。」
本当は昨日会ったばかりで、今日だってこの学校に来るのは始めたなのだからそういうことになる。
周りの人間にはシオリの人間関係は特定の人間と仲良くしているということを認知させていなかった。
だから先程のようにシオリはたくさんの人間に声をかけられたのだった。
「シオリと私は親友だもんねー!」
ミヅキは今『シオリ』と呼び捨てにした。それで何かシオリを独り占めしているような感覚になった。
優越感に浸っている反面、シオリにどう思われるか不安だった。
「そうだよ!私たち、すっごく仲いいの。」
シオリはとても嬉しそうに二人に向かって言った。少しばかり顔が赤かった。
「嫌いなものを知ってるんだから……生トマト!」
ふふ、と笑いながらシオリは本当にミヅキの嫌いなものを当ててみせた。
その答えが当たっていることを知っていた友人たちは驚いていた。
それ以上にミヅキは驚いていたが、魔法使いだしわかるのかもしれない、もしかしたら適当に答えたのだろうとまとめた。
そうして話している間に予鈴が鳴り、四人は屋上から急いで自分たちの教室に戻った。
階段を下りる時にシオリの方からミヅキの手に、手を伸ばし繋いだ。
二人は少し顔を赤くしていたが、教室に入る前までは手を繋いだのだった。
(なんだか苦しいっていうより…むしろ…。)
ミヅキは何故か自分の鼓動が早くなったような気がした。
今回、五話はいつもより短めです。読んでくださりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。