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とにかく混乱するしかない

不幸な話だが、好意は人により最高の満足を得られたりとてつもない重荷になる。

その理由としては好意の発信源、つまり好きだと表現する者の評価に左右される。

イケメンに好かれても悪い気はしない、デブでブスだとものすごく不快感を味わう、そんな一般論が純粋な気持ちにアクセントを加えてしまう。

かなしいかな、好意自体は純粋なものだと言うのに。




紫織はげんなりする青子と黄華に心配を通り越してドン引きした。

一女性としてその白目剥き出しはヤバいよ、と言いかけた口を閉じる。

数分前の惨事を知らない訳ではないのだから当然といえば当然の反応だ。異常ではあるが。

寧ろ知らない方がおかしいくらい瞬く間に学校中で広まった。

不良が押しかける時点で異様なのに喧嘩ではなく告白を吹っかけられたら混乱するのは察しがつく。

生憎この学校は不良に優しくない校風と規律を持ち合わせているので今の今までヤンキーとの関わりは無かった。

あったとしてもこの学校伝統大魔神先生(本名:白神勝則(しらがかつのり))プレゼンツ座禅でシバかれる。


ただ一つ疑問が。


「コッコがなんでフラフラなの?」

「ミーコに逃げられた」

「ゴメン、マジゴメン」


聞けば絡まれた時二人で登校してて、告白受けた後青子は全力疾走して逃げ、残された黄華にヤンキーが質問攻め。先生とのつかみ合いも少しあったとか。


「しかもあいつら内部分裂してたし、写真と違うじゃないっすか!とか言ってた」

「写真?!何処の流用?!」

「わかんないよ、大魔神先生に回収されてとりあえず帰ったみたい」


紫織は青子の行く先を憂う。親友がこんなにもうちひしがれるのは見たくない。

いいタイミングに授業は始まる。それぞれ自分の割り当てられた席につく。

青子は授業どころではない、混乱してたまらない疲労に襲われる。

教師は青子を指名しようと見たが、暗いオーラを出しながら俯せて小刻みに震える彼女を見て思わず「保健室行きなさい、直ぐに!」と叫んだ。

いえ大丈夫です、と絶え絶えな声で返された時の教師の顔は歪んでいた。

それ以上強いることなく、早朝の授業は続いていった。








一時間目が終わり10分休憩。


緑はいろんなことで気が気でない。赤斗がまさか学校に来て告白するとは。

三流顔、特に際立つ要素はない三宅青子の何に惚れたのか、と、本人に失礼な事を脳内で愚痴る。

頭を抱える様子は友である中島に怪訝がられたが、緑はその視線すら気付かないほどテンパっていた。


「おい、やべぇぞ」


桃井が携帯の画面を見ながら青ざめる。

他の学校の友人からのメールらしい。

何々どうしたと、中島含め複数男子がたか。緑は行かなかった。その気力もない。


「三宅が告白されやヤンキー、他の学校で相当目ェ付けられてるって」

「マジで!?」「えー?!」


大声で言われた情報はクラス中に響く。緑は「知ってるよ!」と叫びそうになったが堪えた。

不本意ながら興味のない生徒の耳にも入る。

当然同じクラスである青子も聞いてしまった。三宅さん大丈夫?とあまり話さない女子にも心配される始末。

もうやだ、と黒い異常なオーラを発しながらも桃井の言葉につられる。


「〇〇学園二年の折原赤斗、周りの学校の奴からカツアゲは勿論、喧嘩売ってはしょっちゅう問題起こしている、絡まれたらおしまいと言われてるんだと!」

「うわー、やっべぇ」

「教師に言われてないから退学されてないだけで、仮に退学したらもっと悪行する可能性大!」


ついでにアイツごまかしの技術はハンパないからな…とこれも口に出さず思う。

それどころではない、どうすれば他人事で押さえられるか考えなければ、とまた緑は唸った。


「どーすんだよおい、三宅が振ったらどーすんだよ」


少なくとも5人分の視線が追加された。青子は動揺するも返事を探す。

振ったらどーするか。

考えてなかった、それだけ話がはびこる男なのだ。

断るなら無理強いは確実。

学校を荒らすか、襲われるか、何か囮にされるか……

少なくとも好転の兆しゼロ。

絡まれた時点でこちらの負けだったのだ。


「あーーもう訳わかんないーーっ!!」

「ミーコ落ち着いて!」

「やだよーなんでこーなるのさぁーっ」


もう悪あがきしかなかった。

あまり話したことの無かった男子も青子が気の毒で慰めと励ましをかける。


「三宅、もし学校が戦場になっても三宅のせいじゃない」

「仮に爆竹来たらすぐ警察に通報してやるから」

「とりあえず大魔神に頼んどこうぜ」


あー、うーと唸る青子には通じなさそうな慰めだった。

というか自分達で守ってやらないのか、と紫織は聞こえるか聞こえないかの声でツッコミ。


「つーか付き合うの?あいつと」

「無理無理無理無理無理無理!」

「すっげえ拒絶だな」

「いや、わからんこともない」


ついに青子はあーもーどうすればいいの!?と泣き出してしまった。

とにかく今はひたすら宥めるしかない。

クラス中が無駄に一致団結した。


「てか逆にこの学校に絡まれた情報が無いとか珍しいって」

「俺らがわかってねぇか大魔神避けてるかどっちかだろ」

「警察署が近くにあるもんねー」

「思えばこの学校かなり平和だったんだな」

「あぁ、こんなときになってありがたみを感じるとは…」


その平和が崩れる、と考えると緑はさらに頭痛が酷くなった気がした。

遠い目をしながらこれから起きるであろう大惨事を案じる。

頼むからこのほとぼりが早く冷めるようにと祈るばかりだった。

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