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ホップステップをすっ飛ばし

場面は重要だ。近代風に言えば「空気」となるだろうか。

話しかける言葉は同じでもその場の状況により結果も異なる。

例えばデスクワークでクソ忙しい時に「テレビ直して」なんて依頼が来たらぶちのめしたくなるのと同じだ。

そして人物の立場も重要だ。

先程の例で言えば依頼した人間が己よりも上の地位であるなら、忙しいを見繕ってまでも依頼を遂行しなければならない。


何が言いたいかと言えば。


状況把握能力は大切である、ということだ。







特に変哲もない朝だった。

青子はいつものように自転車をこいで学校へ登校する。

少し距離があることを恨むのもいつものことで、それも慣れた。いつものように学校近辺で歩いて登校する友人の塚地黄華(つかじこうか)を見つけ、背後から声をかける。

黄華のとなりに近づいたところで自転車を降り足並みそろえて校門を目指すのもいつものこと。

異常に気付いたのは学校近辺で生徒がやたら不自然だったことからだ。

足を止めて友人とひそひそ話し、学校と距離を取る生徒を多々見受ける。

普通に進む生徒もいるが、あたりを見回して疑問視。

同じく疑問視しながら青子と黄華は歩き続けた。


「事故?」

「そんなことないと思う」


不安になりつつ他愛もない話をいつもどおりする。

校門前に差し掛かって生徒たちが不自然だった理由がわかった。




「だぁーかぁーらー!探してる人がいんだよいけねぇのかっつってんだろ?!」

「貴方達みたいなのがいると迷惑なんです、自分の学校に行きなさい」

「いーじゃねーか今日くれぇよぉ!折原が言ってんだぜ?聞かねぇってのか」

「君たち、いいから校内から出て行きなさい!」

「禿は黙ってろ!」


ヤンキーと教師が攻防を繰り広げていたのだ。

殴り合いではないが、言い争いではある。

見ればヤンキー三人に教師は男女二人づつ取り込んでいる。

生徒指導の丸岡が先程禿と言われて落ち込んでいた。


「どうする?」

「裏門いこ」

「でも裏門からじゃ自転車置けないよ?」


裏門は中庭から通れば靴箱まですぐに行けるが、駐輪場は校舎に遮られている。チャリ通なら否が応でも表を行かなければならない。

実際、脅えながら端の方を通り駐輪場まで行っている生徒は何人かいる。

青子はその厄介な事実にため息を一つ吐く。

一緒に行くよ、という黄華の助けを受け入れ学校の敷地に足を踏み入れた。


「あ」


ヤンキーの一人が声を上げた。

同時に取り込み中だった一団の時が止まる。

何事かと赤斗の視線の先を辿れば、青子が自転車を引いて黄華と校門をくぐるところ。

その計7人の視線に気づき青子と黄華は焦った。


「え?黄華ちゃん何かした?」

「まさか入っちゃいけなかったとか?」

何だかんだ言いながら立ち止まらず二人は視線を振り切り早歩きで駐輪場を目指す。



「三宅青子さん!」


呼ばれたので青子は振り向いた。

その声は聞きなれない男子生徒の声。

振り向いたところで後悔した。


「ちょ、何で反応したの?!」

「うわー無駄な条件反射使っちゃったどうしよう」


見た目髪を赤色に染めて着崩した学ランダボダボズボン、しかもガタイはしっかりしている、まさしく不良の御手本。

あまりの事態に二人歩くこともできずおどおどする。

手の届きそうな距離まで近づいたらヤンキーが喋った。


「三宅青子さんですよね!?」

「ヒッ!」


ヤンキーなのにさんづけするんだ、と場に相応しくないことをこっそり黄華は思った。

青子は自転車のハンドルを強く握る。近づく男と距離を取ろうとできる限り身を引いた。

その様子も知らずヤンキーは叫ぶように言った。


「俺、折原赤斗っていいます!俺三宅青子さんのことが好きです!付き合ってください!」


「え?」


驚いて声を出したのは青子ではなく黄華の方だった。

青子はあまりの急な事態に思考が停止、何が起きたのか理解できてない。

折原赤斗と名乗った相手はあたまを下げたまま上げる様子はない。


「お、折原、コイツだったのか?」

「言ってたのと違うじゃないっすか!」

驚いたのは一緒にいたヤンキーもだった。

どうやら青子に向かっていったのが信じられなかったらしい。

彼女だと理解したうえできたのだと思っていた教師たちも驚いた。

さて、青子がいつまでも硬直しているわけでもない。

事態に慌てて対処しようとする教師とヤンキー達を見てだんだんと状況を把握してきた。


(ヤンキーに)

(絡まれた後)

(告白)


途端に怖くなった。何がどうとか具体的な言葉は浮かばない、ただ目の前の男の異状が信じられなくて更にわけがわからないくなってきた。



「いやぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!」

「あっちょっと!」

「ぅわぁ!?」

自転車と荷物を投げ出し(この時黄華の背後だったため自転車と一緒に倒れた)全力疾走で校内に向かう。

とにかく何が何だか分からない、逃げよう。

校舎に入れば無関係になる、青子は確信のない希望を抱いてとにかく教室を求めた。


その結果沈黙が後に残った。

本来公開告白を受けたなら「ヒューッ」なんて茶化しがあるが、この時ばかりはその現場を目撃してしまった人全員(ヤンキー除く)教師も含めて「ご愁傷様」と思った。


これから三宅青子の混乱と折原赤斗の苦悩が始まる。



「あの、三宅さんの友達だよな?!」

「ひへっ!?」


そして諸々を巻き込む事態もここから始まった。




===========

やっと接点ができた。長ッ

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