表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/46

#32 そう言えば八尺様の本名って何ていうの?

 第1、第2階層を難なく突破した俺達は、そのまま第3階層へと足を踏み入れる。今回は配信映えを意識して、スピードは抑え目、パワー重視で挑んでいる訳だが、思っていたよりも、この塩梅(あんばい)を保つのが難しい。


 今まではがむしゃらに怪異の力を引き出していただけだったのが、コントロールしようと思っただけでこれほど困難になるとは。やはり怪異化は一朝一夕でどうにかなるものではなさそうだ。


 俺は周囲の気配に気を配りつつ、八尺様に問いかける。能力を制御する上で何か役立つ情報でもあるといいのだが。


「ねぇ、八尺様。能力の制御に関して、何かコツみたいなものってあります?」

「ぽ? ぽぽぽ~。ぽぽぽぽぽ、ぽぽぽぽ……(コツ? コツって言われてもな~。私は意識してコントロールを身につけた訳じゃないし、怪異化のことも話に聞いただけだから……)」


 どうやら八尺様も、能力のコントロールについては明るくないらしい。確かに、彼女は怪異本人だし、能力は怪異の象徴のようなものだから、初めから使えたはず。後天的に能力を使えるようになった俺とは、そもそも条件が違う。


 と、ここでふと思い至ることが一つ。ターボばあちゃんに絹川芳恵という名前があるのだから、八尺様にも、本名が在るのではないか。


 一度頭を()ぎったらなかなか振り払うことが出来ず、このままでは集中力を欠きそうなので、俺は八尺様に尋ねることにした。


「八尺様って、本名は何て言うんですか?」

「ぽっ!?(えっ!?)」


 八尺様はまさかそんなことを聞かれるとは思ってもいなかったと言う様子で、俺の顔を見詰める。あまりの驚き様に、聞いたらまずかったのではないかと不安になった。しかし、一度口に出してしまったことをなかったことには出来ない。俺はフォローのつもりで、返答の是非を有耶無耶(うやむや)にする。


「ああ、いや。答えられないならいいんです。怪異にはいろいろと事情もあるでしょうし」


 怪異にもよるのかも知れないが、やはり名前と言うものは重要だ。八尺様の場合は、その見た目を表す言葉がそのまま名前として使われているタイプの怪異なので、下手に別の名前が広まると存在が揺らぎかねない。あまりにも自然に一緒にいるので、つい忘れてしまうところだった。


「ぽ~、ぽぽ。ぽぽぽ。ぽぽぽぽ(あ~、うん。そうだね。そう思うよね)」


 八尺様はしばらく、モジモジと何か考えるような素振りを見せる。


「ぽぽ、ぽぽぽぽぽぽ。ぽ、ぽぽぽぽぽ、ぽぽぽ……(別にね、名前を教えられない事情がある訳じゃないんだ。ただ、今までそんな風に扱われたことがないから、ちょっと驚いちゃって……)」


 尻込みはしているようだが、NGという訳ではないらしい。今までは、どこか一歩引いた大人な感じに見えていた八尺様が、今は不思議と同年代くらいに見える。それくらい、挙動が幼いと言うか、可愛らしいのだ。


「……もし、八尺様さえよかったら、名前、教えてもらっていいかな」


 これは俺の我侭なのだろう。花子さんと芳恵さんだけ名前呼びで、一人だけ八尺様のままなのが、俺は嫌なのである。だからこそ、俺はあえて敬語を使うのをやめた。芳恵さんはともかく、八尺様はそう歳が離れているようには見えない。同列に扱ってあげるのが、この場での最善と言えるはず。


 八尺様はその場で(うつむ)いて、しばし考え込んだ。たっぷり10秒以上かけてから、意を決したように、俺の目を見詰める。


「……ぽぽ、ぽぽ(……大崎(おおさき)澄香(すみか))」

「……それが八尺様の本名?」


 こくりと、彼女が頷いた。


 恐らく、彼女にも生前に様々なことがあったのだろう。もし、この身長が生前の姿に由来するのなら、周囲の人間からまともに名前で呼んでもらえたか怪しいところである。


 だとしても。大崎澄香。いい名前じゃないか。彼女の清らかな心を映しているようで、実に似合っている。


「澄香さんか~。きれいな名前だね。俺はその名前、好きだよ」

「ぽっ……」


 澄香さんの顔がゆでだこのように真っ赤に染まった。俺は咄嗟に理解する。これは何かやらかした、と。


 案の定、後ろから花子さんの視線が刺さった。花子さんの様子は、以前の男性迷惑YuiTuber(ユイチューバー)に向けられたものに勝るとも劣らない。これをなだめるのには、相当の苦労をしそうである。


 飛び掛ってくる花子さんから何とか身を守りつつ、俺はこの場を納める手段を、必死に考えるのだった。

読んでいただきありがとうございます。


このエピソード良かったよ!という方は☆評価、ブクマ、いいねなどよろしくお願いします。また、誤字脱字などあればいつでもご報告くださいませ。

感想、レビューなどあると今後の執筆の励みになりますので、どしどしお送りください。


もしよろしければこちらもお願いします!

『最強魔導士の星婚ステラリガーレ~異世界から召喚された勇者に恋人を奪われた上にパーティーを追放されたけど、英雄エルフを嫁にしたら最強超えて究極になった~』

https://ncode.syosetu.com/n6249mb/


こっちはシリアスです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ