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私こそ大悪役《ラスボス》にふさわしい! ~魔王も魔物もいない、魔法もスキルもステータスもない異世界を、ぼっちが1人でビルドアップ~  作者: 大恵


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19/22

若者たちは浄化されてしまった!

「はあ……。わけわかんない……」


 変態王子(ダフォーア)を説得、いや丸め込んで……いや、変態王子は勝手に自分でいろいろ決めた後、那蠍(なこち)は地球へと帰還した。


 変態王子は愛馬に逃げられたショックから立ち直ると、ハイギルー=セダムの背に乗せてくれと懇願したがもちろん拒否された。

 そして父親である王に、馬との合体の許可を貰ってくると、那蠍(なこち)の許可も貰ってないのに先走って説得すると帰っていた。


「あれ……大丈夫なのかな?」


 廃嫡されなければいいけどと、那蠍(なこち)変態(他人)事ながら心配した。


 ハイギルー=セダムは部族の元に帰ると、晴れ晴れとこの姿で生きていくと宣言。

 父親の族長と部族民を驚かせた。


「もういい。寝る」


 いまごろ部族内と、ネリス王国では上を下への大騒ぎだろうが、そこまで面倒を背負いこむ気はないと那蠍(なこち)は不貞寝した。

 

 + + + + + + + + +


 翌日。

 那蠍(なこち)はいつものようにジョギングを終え、シャワーを浴びてから喫茶店へモーニングを食べに訪れる。


「おはよう。那蠍(なこち)ちゃん。いつものだね」

「ウェヒヒヒ……はい」


 はいの返事は小さかったが、ウェヒヒヒだけでマスターの老紳士はいつものメニューの調理を始めていた。


 いつもの席に座り、お冷で口を湿らす。

 そこは観葉植物が置かれたパーテーション用の棚があり、他の席から見られにくい那蠍(なこち)のお気に入りの場所だ。

 

 しばし待っていると、那蠍(なこち)の位置から見えない場所にあるテレビから気になるニュース内容が耳に届いた。

 おそらく朝の報道バラエティだろう。

 軽い調子でとある街の話を伝えていた。


『──夏休みということもあり、若者たちが夜遅くまで出歩くわけですが、この街では変わりつつあります』


 女性アナウンサーが紹介する街は、那蠍(なこち)が呪いという程で、三人の若者に能力を与えた場所だった。

 ふと思い起こす。

 

「どうしたのかな? あいつら、なにかやらかしたのかな? ウェヒヒヒ…………あ、ど、ども」


 彼らは悪人ではないが、軽薄そうな人物だった。

 力を得て暴走したか、悪用でもしたか。

 名前も伝えないでよかったと思いながら、老ウェイトレスによって運ばれてきたカフェオレに口をつけた。


『現在、この街では落書きがほとんど消されています。なんとこれはやったのは、たった三人の若者だというのですから驚きです! その方々とは』


『はーい、大姐御ぉ〜。見てる〜?』


「なこっちっ!」


 なんで? こいつら? 熱ぃ!

 思わず口走った圧縮言語は、偶然にも那蠍(なこち)の名になっていた。


 ちょっとやけどした舌を水で冷やしながら、席から立ちテレビの見える位置へと移動する。

 テレビの中であの三人が照れくさそうに、それでいてどこか誇らし気な表情でマイクを差し出されてインタビューを受けていた。


『いや、俺たち……実はっすね、最初はアレを描いている側だったんすよ」


『え? そうだったんですか?』

 

 インタビューしているアナウンサーが、三人の自白に目を白黒させている。

 きっとそんな自白を、打ち合わせで言ってなかったのだろう。

 話が違うという顔で、画面外のディレクターか誰かに目配せしている様子が映り込んでいる。


 そんなテレビの都合も考えず、三人はマイクを握って話さず独白を続ける。


『で、気に入らないのとか、他のやつらが描いたの消してから、俺たちが描こうと思ったんですが……』

『消してたら、なんか、近所のおじさんが勘違いして、俺たちにいろいろお菓子とかくれたんすよ』

『そしたらなんかもう、描こうって気にならなくて……』


 アナウンサーも、『そ、そうだったんですかー』と話を合わせているが、ただのボランティアへの取材だったつもりだったので、苦し紛れの反応に見えた。


『すんません。ここで謝ります。今まですんませんでした』

『すいません!』

『反省してます』


 三人はこの場を借りて……などという考えは彼らにはないだろうが、そろって素直に頭を下げた。

 この行動は報道バラエティーのコメンテーターたちに好評だった。


「な、なに、浄化されてんの、こいつら……。た、たしかにそんな悪人って感じじゃなかったけど」


「おや? 那蠍(なこち)ちゃんの知り合いかい?」

 

 那蠍(なこち)の様子に気が付いた老ウエイトレスが、サラダとバニラアイスにチョコまで追加されたハニートーストの皿を持って尋ねる。

 心なしか、老ウエイトレスは嬉しそうだ。

 

「ウェ? ウェヒヒヒ……」

 

 那蠍(なこち)はなんと返事していいか分からず、とりあえず笑って誤魔化した……つもりだったが、思わず(うなず)いてしまっていた。

 

「あら、そうなのね、うふふふ」


 そのため老ウェイトレスは、那蠍(なこち)にも友達がいたのだと勘違いしてしまったようである。

 これを否定できる度胸は、那蠍(なこち)にはない。


 幸い、見た目はともかく更生してボランティアをやっている人とテレビでは扱われているので、悪い男たちに引っかかったとは思われていないようだ。


 ずこずこといつもの席に戻り、ニュースに耳を傾けながらハニートーストを食べ始めテレビの続きに耳を傾ける。


『彼らの行動と市民の活動により、街は急速に治安をとりもどしつつあり──』


 アナウンサーの話によると、ここ数日で街が激変したという。

 いくら落書きを消したからと、そんなことになるだろうか?

 ましてテレビというのは、緊急性のないこの手のニュースだと初動が遅い。

 情報提供があってから会議にかけて、取材や裏取りするかどうかを決め、自分たちで集めた情報を精査してからまた会議……と、いう過程を得てやっと出てくる。


 会社と言う小回りの利かなさから、SNSでは「もう知ってるよ!」とか「ネットではもう拡散されてる」とか「テレビおせー」とか「オールドメディアw」など言われてしまう。


 実際に報道したくないから、すっとぼけて引き延ばしている場合もあるだろう。

 だが、今回はそんな事案は考えられない。

 なにか、緊急性かよほど先駆けして報道したい理由が他に──。


「い、一度、確認してみないと」


 いつかは三人の様子を確認しようと思っていた那蠍(なこち)は、これを機会に件の街へ行く事を決意した。

 できればあまり人と交流したくないのだが、先送りするのは那蠍(なこち)の性格ではできない。


 いつもより早くハニートーストをもきゅもきゅと咀嚼して食べ尽くし、少し慌てている様子で喫茶店を後にする。


 ────那蠍(なこち)が退店し、片付けた皿を洗う老ウエイトレスの後ろで、テレビでは三人の若者がフレームアウトしてからも、まだ現場の映像が続いていた。


『現地の帆馬アナウンサー。なんでもその街では、不可解なことがおきているとか?』


 スタジオの司会進行が、新たな話題がこの街にまだあることを尋ねた。

 現地のアナウンサーは若者たちにインタビューしていた時とは打って変わり、深刻そうな表情で答える。


『はい。街の治安向上に先程の若者と地元の尽力があるのは確かなのですが、今月に入ってから多くの行方不明者が出ており、その大半が反社会的なグループという情報も…………』


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