表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私こそ大悪役《ラスボス》にふさわしい! ~魔王も魔物もいない、魔法もスキルもステータスもない異世界を、ぼっちが1人でビルドアップ~  作者: 大恵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/22

吸血鬼はつかれてしまった!

 吸血鬼は医者。


 いせかい の ほうそく が壊れかけ始めている。


 どうしてナコチ様は困っておられるのだろう。と、もてなすダイタムも尋ねていいのか困っている様子だ。


「そろそろクライロウネも戻ってくると思うので」


 1人で遊びに出ているようだが、ダイタムは心配している様子はない。

 

「ひとりで? ま、まあ人間どころかクマと殴り合ったって、負けはしませんが……ウェヒヒヒ」


 吸血鬼の力は、見た目の肉体と関係がない。体重を乗せた分だけ、殴ったり蹴ったりの威力が上がるなど誤差の範疇に収まってしまう。

 むしろウエイトが少ないクライロウネの方が、ダイタムより動きが速く的が小さく、厄介な存在になるかもしれない。


「ええ。怪我の心配より、服を汚して帰ってくるほうが困りますよ」


 ダイタムもやはり心配はしていない様子だ。

 

「ウェヒヒヒ……。今度は服とか持ってきますよ」

「助かります」

「なので、クライロウネちゃんのサイズを調べないと……ウェヒヒヒ」

「……え、ええ」


 スプリング付きテープメジャーを出したり引っ込めたりする那蠍(なこち)に、ダイタムは若干の警戒を見せる。


「ただいま、ダッド! あ、ナコチ様!」


 クライロウネは那蠍(なこち)を見つけると、迷いなく飛びついてきた。


「ウェヒヒヒ。こんばんは」


「ナコチ様! チョコ! チョコ! ナコチ様、チョコ! ナコチョコ!」

那蠍(なこち)ョコ新発売みたいになってる」


 クライロウネの目的は那蠍(なこち)ではなく、チョコである。


「こら、いかんぞ。クライロウネ」


 わがままを言うダイタムを回収し、解放された那蠍(なこち)はお菓子を手渡した。

 


「それでナコチ様。よろしかったら、滞在されていきませんか? おとといナコチ様が滞在できるようにお部屋をおつくりいたしました」


「それはいいですね。ウェヒヒヒ。とはいえ、残念ですが夜が明けると、私もいったん帰らないといけないので……あまり滞在の意味がありませんね」


 すぐではないが、日が昇る時刻が近づいている。

 昼になれば、ダイタムとクライロウネは日が当たらない部屋で就寝しなくてはならない。

 吸血鬼は人間と違って、夜を明かすならぬ昼を使い果たすことは難しい。


 日光への耐性のなさももとより、力の低下が相対的に激しすぎるからだ。

 せっかくの吸血鬼の能力が下がっては、夜の活動に制限がかかってしまう。


「ナコチ様! じゃあそれまで遊びましょう。お友達ができたの! 紹介するね!」


 お菓子を食べて満足したクライロウネが、そういって部屋を飛び出していった。


「ほうほう……。ウェヒヒヒ、と、友達……」


 那蠍(なこち)の返事を聞く前に、クライロウネはチョコを片手に部屋を飛び出して行った。


「娘は申し訳ない。どうかお付き合いします」


「え、あ、ウェヒヒヒ。はい」


 ダイタムに頭を下げられ、那蠍(なこち)は逃げ出せなくなった。

 正直言うと、那蠍(なこち)はクライロウネの紹介とは言え、あまり友達を紹介されたくなかった。

 友達の友達と会うというのは、あまり共感を得られないだろうが、とてもストレスがかかる。

 紹介されたんだから、友達になればいいじゃん。というのは、ある程度は人付き合いできる人の言い分である。


 まして、那蠍(なこち)はまだクライロウネと友達と言えるか怪しい。

 クライロウネは恩人として好意を持っているだろうが、なかよし友達という段階に達していない。と、那蠍(なこち)は思っている。


 そんな人からの友達紹介とか辛い……。


 那蠍(なこち)は逃げることもできず、どんな人を連れてくるのかと戦々恐々だった。

 クライロウネと同じくらいの子供だろうか?

 大人かもしれない。

 まさか、ロリコンのおじさんを連れてくるのでは!


「ね、NTR反対!」


「え? ど、どうされましたか? ナコチ様」


 不安にかられた那蠍(なこち)の妄想が捗り叫ぶと、ダイタムが心配そうに様子をうかがってくる。

 と、その時、クライロウネが戻ってきた。


「ナコチ様! お友達、いっぱい来たよ!」


「いっぱい!」


 大勢に来られては困る、と那蠍(なこち)は身構えたが、クライロウネが連れてきた友達たちは白く半透明でふわふわと浮いていた。

 顔の形がうっすらわかるくらいで、足はなく、クライロウネの周囲を守るように飛び回っている。


「お友達とは……その方たちですか……」


「そうなの。お友達が欲しいなあって思ってたら、みんなが集まってくれたの!」


「よ、よかった。人じゃなかった……。いや、それゴーストじゃないですか!」


 元気よくツッコミを入れている那蠍(なこち)

 幽霊の類いは怖くない。

 人がいっぱい来る方が怖い。


 幽霊と知って急に回復する那蠍(なこち)を見て、ダイタムは安心したように説明した。


「ここは古戦場だったこともあり、戦死者が葬られた穴があったようで、そこでクライロウネの友達になってくれたそうです」


「さ、さらっと説明してますが、娘さんが憑りつかれているという発想はないので?」


「ああ、たしかに最初こそそれを心配しましたが……」


 ダイタムがちらりとクライロウネを見る。

 つられて那蠍(なこち)も見てみると、ゴーストたちはクライロウネを守るように周囲を旋回している。

 それに意思は感じられない。


「……ウェヒヒヒ。完全にクライロウネの支配下というわけですか」


 亡霊たちは自我を失っている。

 那蠍(なこち)は状況を理解した。


「ウェヒヒヒ……。たぶんですが、私がここにダンジョンコアを置いたせい」


「ダンジョンコアですか?」


 説明していなかったな、と那蠍(なこち)は改めてダンジョンコアについて簡単に説明した。


「なるほど。それで遺体が魔物化……埋められていたので、幽霊となって地上に出てきていたというわけですね」


「そう。そ、それに死んでからずいぶん時間が経ってるし、意志も記憶もない。もちろん魂もないから、クライロウネの思うまま……いわば、残留思念を使ったお人形遊び」


 説明を受け、さすがのダイタムも顔を顰めた。

 娘は無邪気に死者を冒涜しているのでは? そう考えたのだが……。


「安心して。重ねて言うけど、魂も意志も記憶もない。つまりエネルギーだけ。パンを焼いて出てきた煙みたいなもの。煙はパンじゃないし、食べることもできない。それと同じこと」


「そうですか……。ナコチ様がそうおっしゃるのであれば、そうであるのでしょう」


 那蠍(なこち)のフォローは納得できたが、ダイタムは心情として抵抗があるようだ。


「ねえ、ナコチ様! でも私はみんなとお話できるよ」


「それはクライロウネちゃんの才能かと」


 那蠍(なこち)はちょっとだけウソをついた。


 クライロウネの呼びかけに対し、クライロウネが無意識に会話の反応を想像して、それを読み取ったエコーが届いているだけだろう。

 クライロウネが「遊ぼう」と話しかければ、クライロウネが遊びたいから遊ぶと返事してくれるという期待を読み取り、そのまま「遊ぶ」と返事をするだけだ。

 そこに意志はなく、クライロウネに都合よいだけの存在。それがこのゴーストたちの正体だ。


 真実はともかくと、那蠍(なこち)はクライロウネを褒めることにした。


「クライロウネちゃん、すごい。幽霊が発生したのはダンジョンコアのせいだけど、その子たちに仮初とはいえ存在の蓋然性を高めた」


 友達が欲しいと思っていただけで、そのように振舞う幽霊を確定化させた。

 限りなくゼロと呼んでいい何かに、わずかな存在の片鱗を与える力。

 

 ダンジョンコアの活動と、クライロウネの願望と才能に、この古城と古戦場という背景が加わり、ゴーストが具現化した。


「ウェヒヒヒ。クライロウネちゃん、お友達いっぱいでよかったね」


 那蠍(なこち)はクライロウネの頭を撫でながら、たっぷり褒めた。

 吸血鬼が医師となるという想定外があったが、クライロウネが吸血鬼らしい死霊使い(ネクロマンサー)となったので、那蠍(なこち)は満足した。


 なおこの間、ガスガスとゴーストが那蠍(なこち)にぶつかっているのだが、物理的に作用しないため、クライロウネも那蠍(なこち)も気にしていない。

 離れて見ているダイタムは、なんの影響もないとはいえ亡霊の体当たりを受けながらも動じない那蠍(なこち)を見て、さすがナコチ様などと感心している。


「コワ……」


 お茶の追加を持ってきてこの光景を目撃したカルハントが、最も常識的な反応をしていた。

 なお、彼も骸骨なので、この怖い光景を構成する一つであることを付け加えておく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ