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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 ジェマがジッと見ていることに気が付いて、チュベローズは曖昧に笑った。



「ありがとうございました、ジェマさん。あなたが告発をしてくださらなければ、きっとコマスの民たちに更なる犠牲を生んでいたことでしょう」


「いえ。私もまさかそこまでの事態になっているとは思いませんでしたから」



 けれど、思い当たる節が全くないわけでもなかった。魔物の生態系が異常になっている例は旅の間に何度か目にしていた。


ボアレットで遭遇したオアシスバトイデアの群れや、アラクネ種の集落で対峙したハンターハプテ、道中で見かけたナンブモス。あれほどまでに大繁殖したり攻撃的になったり、ましてや他の魔物の集落から誘拐したり。数十年に一度あるかないかの事態が重なって発生することが偶然であるとは考えにくかった。



「しばらくは騎士団や冒険者に森の情報収集をお願いした方が良いかもしれませんね」


「ええ。すぐに冒険者ギルドへも調査依頼を出しますわ。道具師ギルドの職員が片棒を担いでいたのですから。その対応をすることは当然の義務です」



 チュベローズは凛々しく頷く。けれど無理をしていることは、すぐに伝わった。



「私にも何か協力できることがあれば教えてください。魔物の情報や討伐方法、解体についての知識にはある程度自信がありますから」



 ジェマの言葉に、チュベローズはどこか力の抜けた笑みを浮かべた。



「貴女は、本当にスレートにそっくりですね」



 その懐かしむような笑みに、ジェマは首を傾げた。



「父とは仲が良かったのですか?」


「ええ。彼がまだ街での商売を盛んにしていたころはね。道具師ギルドで顔を合わせる度にお互いの新作を見せ合ってより良いものを作ろうとしていたものよ」


「街に盛んに来ていたのですか?」



 ジェマが知るスレートは、街に行くことはほとんどなかった。商売の大半をラルドの買い取りに任せて、店や家を空けることはほとんどしなかった。


 ジェマの肩の上で聞いていたジャスパーも、知らなかったスレートの姿に興味があるように目を見開く。



「ええ、ちょうど、貴女が生まれたころから街へ来ることは減ったわね。新商品の登録は欠かさずにしていたけれど、その帰りには娘が待っているから、とすぐに帰るようになったわ。知らない間に、こんなに可愛い子が生まれていたなんてね。貴女のお母さんは?」



 チュベローズの問いに、ジェマは肩をすくめた。



「いいえ、分かりません。父も私の母のことについては頑なに語ろうとはしなかったので」


「そう、なのですね」



 チュベローズはジッと考え込む。けれどジェマが居心地悪そうにしていると、フッと微笑んだ。



「ごめんなさいね。つい、旧友のことが気になってしまったのよ。これだけ、覚えておいてくれる? 貴女が困ったとき、私は貴女の味方をするわ。もちろん、ギルドのことは優先しますけどね」


「はい、ありがとうございます」



 ジェマはどこか擽ったそうに笑う。ここでもまた、スレートが繋いだ縁が結び直される。遠くの街でも、スレートがそこににた記憶のカケラはあった。けれどやはり、この街にはより多くカケラが存在するらしい。



「それでは、今日はこれで失礼します」


「ええ。また力を借りると思いますから、そのときはお願いしますね」



 チュベローズに見送られて、カポックとユウに護衛されながら自宅へと帰る。ジェマが自宅に到着すると、カポックとユウは一度帰るふりをして、森の中からジェマの安全を確認する。


 ヒュプノスのことも、道具師ギルドコマス支部のことも。まだ片付いたわけではない。


 けれどこれにて一段落、とジェマはベッドにぽふっと身を預けた。



「お疲れ、ジェマ」


「ジャスパーとジェットもお疲れ様。私、少し休んだら作業するから、2人は休んでて」


「いいや、我も食事を作ったり掃除をしたりせねばな」


「ピピィ!」



 ジェットもジャスパーの手伝いをする気満々。ジェマがホッと微笑んだとき、ジャスパーの視線がガマヌラによって破壊された倉庫の方に向けられた。



「あれも直さないとな」


「そうだねぇ」


「とりあえず、中に入ってた道具や素材だけ回収しておく。ジェマはこっちのことは気にせず、作業に集中してくれ」


「ありがとう」


「……物事には適材適所というものがあるからな」



 ジャスパーはそう言い残してジェットと共に去っていく。ジェマはその意味が分からなくて首を傾げたものの、すぐに頭を振って自分がやるべきことに意識を戻す。



「とりあえず、商品の制作の続きからだね」



 長期休業をしていた分、なるべく早くリニューアルオープンしなければならない。待っていてくれた人たちのために。


 ジェマは作業室に入ると、サファイア色のエプロンを着けて早速作業に取り掛かる。目の前の道具に集中して素材を加工したり、組み立てたり。ジェマにとっては何よりも楽しい時間だ。


 実用的な部分が完成すれば、旅の思い出を頭の中で反芻しながら1つ1つ、丁寧に装飾を施していく。


 なくても困らないけれど、あれば心が躍るもの。ジェマ自身も楽しげに装飾を付けていった。



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