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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 翌朝、道具師ギルド本部に向かう道中、シヴァリーは昨夜ラルドに聞かされたことについて考え込んでいた。



「第2王子が復権を目指しているらしい。自らを森の奥に追いやった他の王家の人間を倒して、自らが国の頂点に君臨しようとしているとか」



 それが本当なのだとしたら、第2王子がジェマを気に掛ける理由に不安が募る。ジェマを王家の人間と悟って抹消しようとしているか、もしくは自らが復権するための一助に利用しようとしているか。


 闇属性の魔力を持つ王家の血筋の者は、現状第2王子とジェマしかいない。ジェマが王家を追われた理由を調べたなら、王家の正当な継承者の象徴である闇属性の魔力を迫害する国王陛下、王妃、第1王子、第2王子はもろとも糾弾される。


 民は闇属性の魔力を持つ第2王子を恐れている。けれどそれは、畏怖だ。それに反国王、反王妃派閥の貴族たちにとっても、闇属性の魔力を持つ王家の人間の迫害は揺すりのネタになる。


 現状は第2王子の眠りの力が強大過ぎることを恐れて復権を言い出せない者たちも、ジェマの存在を知れば顔色を変えて縋りつくだろう。


 もしもそうなったとき、自分はどうしたら良いのか。


 シヴァリーにとって、そんなことは迷うべきことではなかった。


 王政国家に忠誠を誓う騎士の1人として。王政国家を支える民を守ることが騎士の務めだ。すなわち、ジェマを、民を全力で守る。



「シヴァリーさん?」



 ジェマに声を掛けられて、シヴァリーは肩を跳ねさせた。



「隊長、任務中の考え事は良くないですよ?」



 ユウが揶揄うように言うと、カポックが口角をほんの少し持ち上げる。



「新人に言われてちゃ世話ないな」


「う、悪かった。集中するよ」



 シヴァリーは深呼吸をして、周囲の警戒に戻る。その様子にカポックとユウは安堵の域を漏らした。


 そうして辿り着いた道具師ギルド本部。以前と同じように出迎えたチュベローズは、早速一行を奥にある応接間へ案内した。



「新しい証拠を手に入れたと聞きました。それは一体、どのような?」



 チュベローズは真摯な眼差しでジェマを見つめる。その瞳に、迷いはない。ただ真っ直ぐに、自身の部下たちの行いに向き合おうとしていた。


 ジェマはハナナから託された資料をチュベローズに差し出した。チュベローズはそれを受け取ると、ファイルを開いて中を確認する。



「こ、これは……」



 首謀者は道具師ギルドコマス支部長、アイレット・レース。そして関係者はギルド職員全員。誰もがその仕組みに疑問を抱かなかったという。


道具師たちに支払われなかった分の差額は、全てとある施設に寄付されていた。コマスの外れにある、孤児院。そこで暮らす子どもたちの生活費や、孤児院が支援している貧民たちへの援助金として寄付された。


 道具師たちは、自らが儲からないとしても彼らのためになるならばと黙認した。外部からやってきた道具師たちは、不服に思ってもそれを言い出すだけの気力を持ち合わせていなかった。



「これは、責めづらいですね」



 チュベローズは戸惑うように視線を資料の隅々に走らせる。



「はい。ですが、本来合意されていないにも関わらず勝手に報奨金を寄付に回していたことは不正と捉えられます。それから、ギルド支部長と孤児院との連絡役を担っていた職員に関しては他のことで糾弾しなければなりません」


「どういうことでしょう?」



 ジェマはもう1冊のファイルを取り出した。それは、寄付を受けた孤児院側の調査結果だった。



「地下に研究施設があり、子どもたちや貧民を実験台に悪質な研究をしていることが判明しました。また、人身売買や魔物の研究も行っており、その危険性や犯罪性の高さは騎士団として黙認できるものではありません」



 資料に記録されたおぞましい研究に関する報告。人体を切り刻み、魔物と結合させる。また魔石を人間に埋め込み、その反応を観察する。魔物同士を結合させ、その変化を記録する。



「私たちがまだ出会っていないだけで、これらの研究課程で生まれた者たちが森に放たれている可能性もあります。また、魔石を埋め込まれた人間は奴隷として扱われているほかに、兵器としての活用を検討する記録も入手しました」



 シヴァリーの言葉にチュベローズは吐き気を堪えるように手を口元に当てる。



「もしもコマス支部ギルド長がこの研究について認識した上で寄付を行っていたなら、立派な犯罪です」



 横領や着服だけでは済まされない大きすぎる事件。チュベローズは長く息を吐いた。



「至急、コマス支部の職員を1人も逃さず捕縛し尋問します。そして騎士団には孤児院で行われている研究の調査と関係者の捕縛と尋問を依頼します」


「ギルド本部長直々の依頼、承りました。カポック、ユウ、ジェマを頼む。私はすぐに国王陛下へ報告に向かう」


「了解!」



 シヴァリーは一礼すると、風のように去っていった。



「シヴァリー、真面目な顔してたな」



 ジャスパーが感心したように呟くと、ジェットも応援するように2本の脚を振る。ジェマは未だ、緊張した表情でチュベローズの青白い顔を見つめていた。



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