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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 数人の騎士たちと共に森に入ったシヴァリーは〈チェリッシュ〉の入り口のドアをノックした。



「ジェマ、ジャスパー、ジェット、準備はできているか?」



 周囲を警戒する視線を巡らせていたシヴァリー。そのとき、カチャッと静かに入り口のドアが開いた。



「で、できました」



 どこか恥ずかし気なジェマ。その姿にシヴァリーは息を飲んだ。黒髪と同じ艶やかな黒のドレス。全身が真っ黒であることで際立つサファイア色の瞳と髪飾り。



「綺麗だ」



 シヴァリーは、他に当てはまる言葉を知らなかった。


 シヴァリーの言葉に照れ臭そうにはにかむジェマ。その姿はいつもの凛々しいジェマでも、子どもっぽいジェマでもなく、どこか大人びていた。


 他の騎士たちもポーッとジェマを見つめていたが、ハッとして頭を振って邪念を振り払う。上司の想い人になんてことを、なんてゾッとした隊員たちを見てシヴァリーは苦笑いを浮かべた。



「じゃあ、行こうか」



 シヴァリーたちはジェマを守るためのフォーメーションをいつも以上に崩さない。ジャスパーはシヴァリーの肩にちょこんと座って、ジェマには聞こえないように声を潜めた。



「何か分かったか?」



 昨日ジェマが意識を失ったとき、確かに感じたのは強力な魔力。ジェマの魔力に、よく似たものだった。



「ジャスパーが睨んでいる通りだと思います。本人に確認は取れていませんけど、睡眠系統の闇魔法を操るのはあの人だけですから」



 あの人。この国の第2王子であるヒュプノスだ。第8小隊を使ってジェマを守ろうとしたり、昨日のように眠らせたり。何を考えているのか分からない男だ。


 隠されてはいるが、ジェマが自身の妹であることに気が付いている様子もある。ジェマに何をしてくるか分からない危険人物に対して、ジャスパーとシヴァリーは警戒するに越したことはなかった。



「それから、例のコマスの件ですが」



 シヴァリーの言葉に、ジェマが駆け寄る。



「何かあったんですか?」



 シヴァリーとジャスパーはさっきの話も聞かれていたのかと顔を見合わせたが、ジェマの興味はコマスの件だけに向けられている。その興味があるところに真っ直ぐすぎる姿に、シヴァリーは静かに唇を噛んだ。



「シヴァリーさん?」



 ジェマに呼ばれてハッとしたシヴァリーは、慌てたように言葉を紡ぐ。



「ちょうどさっき、ハナナが調査から戻ったんだ。それで、道具師ギルドの不正の証拠を掴んだらしい。それをまずジェマではなくて、ハナナの雇い主に渡す必要があってさ。その証拠をどうされるかは、まだ分からない」


「そう、ですか」



 ジェマはハナナからその裏の顔と立場を聞かされていた。だから、不満になんて思うことはなかった。ただ素直に、ハナナが板挟みになってしまったり、苦しい思いをしないことを願った。



「ハナナは今、その雇い主のところに行ってる。だけど、きっとすぐに戻って来るからな。そうしたら、そのドレスも褒めてもらおう」


「はい!」



 ジェマは心を躍らせて嬉しそうに頷く。その様子に目を丸くしたシヴァリーは、こそこそとジャスパーはに耳打ちする。



「これは、もしや?」


「いや、久しぶりに会えて嬉しいだけだな」



 ジャスパーは苦笑いを浮かべる。シヴァリーはガクッと肩を落として、呆れたように、けれど安心したように微笑んだ。



「ジェマらしい、か」


「ああ。それに、そんなに急いで大人になられても困る」



 ジャスパーがふんす、と前脚を組むと、シヴァリーはくすくすと笑った。


 そうして一行は会場である〈エメラルド商会〉の応接間に到着した。そこにはラルドとエメド、ラルドのメイドのリュカ、第8小隊の面々、そして〈ロースト食堂〉のローストとシュレッドも集まっていた。



「リュカ!」



 ジェマは喜んで駆け寄る。リュカはあわあわしていたが、ラルドが背中を押してやるとジェマに向かって照れ臭そうに微笑んだ。



「おかえり、ジェマ」


「うん、ただいま!」



 森から出ることが少ないジェマと、メイドの家系に生まれてラルドに仕えることしか知らなかったリュカ。お互いが、お互いにとって初めての友達。久しぶりの再会は、どこか気恥ずかしさのある空気を纏っていた。


 2人はそこからお互いに何も言い出せないまま、静かに手を握る。ラルドはその様子を見て優しく笑うと、リュカの頭を撫でた。



「リュカ、今日はメイドとしてではなく、ジェマの友人として祝いなさい。分かったね?」


「はい! ラルド様!」



 ペコッと頭を下げるリュカ。ラルドは頷いて、ジェマに視線を向ける。その頬と耳は、静かに赤らんだ。



「あー、その、なんだ。昨日は助けてくれてありがとうな」


「いえ。それに、私は途中で気絶してしまったようなので」


「それでもだ。シヴァリーから、仔細は聞いた。助かった。ジェットにも、お礼を伝えておいてくれ」


「それなら、大きな生肉をあげると喜ぶと思います」



 ジェマはへにゃっと微笑むと、ラルドはその姿にぽーっと見惚れる。そして慌てて咳払いをすると、ジェマの頭にぽんっと手を置いた。



「そのワンピース、似合ってるぞ」


「ありがとうございます! ジェットが作ってくれたんです!」



 自慢げなジェマの言葉に、ラルドの目がキラリと輝く。



「そうか、ダークアラクネの糸で。ホールアラクネの糸で作られた服飾品は珍しくないが、これは珍しいな」



 ラルドは興味津々といった様子でジェマのワンピースを上から下までチェックする。揃いも揃って素材に目がない2人。小さくため息を漏らしたエメドがラルドの首根っこを掴んで回収していった。



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