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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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情報屋ハナナ


 ジェマが目を覚ましたのは、翌朝になってからだった。



「ん……」


「ジェマ!」



 ベッドに飛び込んだジャスパーは、その頬に蹄を当てる。



「ジャス、パー……」


「ああ、我だ。良かった。急に倒れるから、驚いたぞ」


「ごめん、私も、よく、分からなくて……」


「ピピィッ……」



 か細い鳴き声に、ぼんやりとしていたジェマの頭がはっきりした。



「ジェット!」



 ジェマの呼び声に飛び跳ねて答えるジェット、ジェマはその小さな身体を抱き締めた。



「怖かったよね。ごめん。でも、凄かったね。ジェットは、ヒーローだよ」


「ピピィ!」



 ジェットは自慢げに胸を張る。


 ガマヌラが倉庫に近づいてきたとき、ジェットはラルドと共に息を殺していた。けれど倉庫の壁が破壊され、ガマヌラと目が合った瞬間、ラルドはシヴァリーから預かった笛を思い切り吹き鳴らした。


 ガマヌラを前に身体が硬直していたジェットも、その音に反応して慌てて糸を吐いてラルドごと闇の中に逃げ込んだ。


 ジェットは闇の中を自在に移動できる。ラルドも、ジェットから離れることさえなければ、闇の世界で迷うことはない。ガマヌラは入ることができない空間を咄嗟に思いついたジェットのお手柄だった。


 ジェマはジェットをもう一度ギュッと抱き締める。



「良かった。本当に。無事で良かった」



 小さく呟かれた声に、ジャスパーガシガシとジェマの頭を撫でてやる。



「特別に今日の夜ご飯は御馳走だからな。シヴァリーに頼んでラルドも呼んでもらってるし、シヴァリーたちも一緒に食べたいって。家の完成祝いも含めて、一緒に食事をしよう」


「うん。あ、でも、倉庫はどうなったの?」



 ジェマの言葉に、ジャスパーは肩をすくめて首を横に振った。



「ダメだった。酸を受けたものは全て処分するほかなかった。建物自体も倒壊ギリギリだから、必要なものだけ我とジェットでかき集めておく。あそこには、素材もいくつかあっただろう?」


「そっか」



 ジェマは少し落ち込んだように肩を落とす。スレートとジェマ、2人が失敗したものが集められた倉庫。ジェマはそこにいくと、スレートも同じように失敗と成功を繰り返していたことを感じることができて好きだった。


 中には、ジェマがまだ道具師になる前に遊ぶように組み立てた道具も残されていた。ジェマにとっては、どれもスレートとの思い出が詰め込まれた宝物だった。



「なるべく、残すからな」


「ピッ!」



 励ますようなジャスパーとジェットの声に、ジェマは力なく微笑んだ。



「ありがとう」



 その表情にジャスパーは胸が詰まったが、すぐに背を向けた。



「気にするな。それから、今日の夜、シヴァリーが迎えに来るまでは家から出ないで欲しいらしい。作業場にいるか?」


「うん。そうする。商品の補充もしたいし」


「分かった。ジェット、片付けに行くぞ」


「ピィッ!」



 ジャスパーとジェットが連れ立ってジェマの部屋を出て行く。ジェマはぼんやりと窓の外を見つめた。空は悲しいほどに青い。流れて行く雲を眺めていたジェマは、ペチンと自らの頬を叩いた。



「やれることを、やらないと」



 ジェマはまだどこかだるさの残る身体で作業場に向かう。ジェマ自身、倒れた理由は分かっていなかった。あの程度の戦闘には慣れていたし、ジェットの無事も確信していた。



「気が抜けたのかな」



 考えを振り払って、作業台にグシャッと材料を散らばらせて早速作業に取り掛かる。いつも置いていた忌避剤の類や、日用品を優先的に。常連客たちが欲しがるものを作りあげて行く。


 近隣の農家や酪農家、店舗経営者たちが定期的に買いにくる物は常に切らさないこと。それが〈チェリッシュ〉のルールだ。


 ジェマは黙々と手を動かす。この旅の間に、不安定な場所での作業に慣れたためか、手先の器用さが向上している。以前よりも素早く、そして精巧な作りや装飾を手掛けていく。


 装飾の模様にも、国内の各地の要素が取り入れられる。ジェマは【次元袋】から数冊のノートを取り出した。各地の図書館でハナナが見つけてくれた図柄のイラストを書き写したものだ。


 いつもと同じようで、少し違う。使いやすさはそのままに、デザインを変えていく。



「これは、いつも通りの方が良いかな」



 それでも職人たちが使うものに関しては、なるべく装飾すらも変えずに均一な形を心がける。職人にとって道具は命。それは自身も道具を使って道具を生み出すジェマにはよく分かる感情だった。


 使ってくれる人たちの顔を思い出しながら、1つ1つ丁寧に。


 途中、ジャスパーが持って来てくれたサンドイッチを食べながら小休憩を挟んで、再び作業に戻る。どれほど集中していたか。ジェマはジャスパーに肩を叩かれてハッとした。



「ジェマ、そろそろ出かけるころだ。着替えて用意しよう」


「うん、分かった」



 ジェマが部屋に入ると、真っ黒ながらも艶やかなワンピースが用意されていた。



「え、なにこれ」



 ジェマは驚いたものの、それに触れればすぐに何でできているのか分かった。



「ジェットが作ったの?」


「ピッ!」



 ジェットは自慢げに2本の脚を持ち上げる。ジェットお手製の、小細工付きのワンピース。ジェマはそっと袖を通してみた。



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