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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 店の中に戻ったジェマたちは、ラルドの解説を受けながらすっかり綺麗になった店舗や作業場を見て回る。作業場に入ると、ジェマの表情が明るくなり、ジャスパーが大きく肩を落とした。



「この棚の前の籠は何ですか?」


「仮置き用の籠だ。前にジェマが作業しているところを見た時、仮置きする場所がなくて手間取っているように見えたからな」



 ラルドの言葉は確かに正しい。ジェマはいつも、作業をするためのスペースが足りないとぼやいていた。けれどジャスパーは知っている。それがジェマの自業自得だということを。



「使い終わったものを片付ければスペースは足りていたんだ。現に、スレートだって狭いと言ったことはなかったぞ」



 頬を膨らませて前脚を組むジャスパー。ジェマはその声が聞こえないふりをしてラルドの解説に目を輝かせ、2人の様子にシヴァリーは笑いを必死に堪えた。



「なるべく元々あった材料を再利用するようにはしたから、全く新しいというわけでもない。それから、これ」



 ラルドは1つ、棚を開けた。その中には、【カタスギ7】に納められたスレートの作品たち。



「瓦礫の下に埋まっていたものを掘り出したんだ。これは、大切なものだろう?」



 ジェマは1つ1つ指を差しながら数え、最後の1つまで数え終えるとホッと息を吐いた。



「全部ある。全部、集めてくれたんですね。ありがとうございます」


「構わない。ジェマがスレートさんのことをどれだけ大切に思っているのかは分かっている。それに、お礼ならスレイにも言ってやれ。探すときに1番の働きをしたのはスレートだからな」



 ジェマはラルドの言葉に驚いて目を見開く。スレイにはそんな機能はつけていない。予期せぬ行動が起こりやすいものではあるが、それでも想定の範疇を肥え過ぎていた。



「本当のところはどうなのか分からないが、魔力を頼りにしていたらしい。シュレッドさんは魔力の流れを探知をすることが得意らしくてな。スレイの行動には、魔力の誘引が関わっているとかなんとか」



 ジェマは考え込む。スレイに流れている魔力はジェマの魔力だ。けれどスレートが作った魔道具や魔石付与魔道具に込められているのはスレートの魔力。



「親子だからなんでしょうか」



 ジェマがぽつりと呟くと、ラルドは頷いた。



「そうかもな。親子関係にあると魔力が混同しやすいっていうのは、割とよく聞く話だ。うちの店でも、娘が買った魔石付与魔道具の宝箱を父親が開けてしまった、なんて事件があったな」


「家族なのに、見られたら困るものがあるんですか?」


「どちらかといえば、家族だから見られたくないものとか、知られたくないものがあるんだろうな」


「そういうものですか」



 ジェマにとって、家族に隠し事はしたいしたくないではなく、できないことだった。ジャスパーは嘘を見抜くことが得意だし、ジェットは感情や思考を共有してしまっている。ジェマが何か隠したいと思ったところで、意味がない。


 ぼんやりと考え込んでいたジェマは、うんうんと頷く。家族というのも、多種多様なものだ。


 2人の会話を聞きながら、ジャスパーとシヴァリーは考え込んでいた。親子関係にある2人の魔力が似ていて間違えられる事例は知っていた。けれど、その原理が分かっていない。


 現に血縁関係がないはずの魔力が干渉しあっている。これは普通ではない。これまでそういうものだと語られていたけれど、誰もそれを確かめたことはなかった。この発見が新たなものになれば、また一つジェマを守る術が増える。


 2人はただ黙った視線を交わし合う。そして頷き合えば、何事もなかったかのようにそれぞれ周囲の空気に合わせる。その振る舞いには慣れすら滲み出ている。



「そうだ、ジェマ。居住スペースの方にも少しだけ手を加えさせてもらったんだ。見にいく?」


「居住スペースにも?」



 居住スペースには被害が出た場所はなかったはず。被害があっても、廊下くらいなもの。ジェマの部屋やスレートの部屋には何もなかった。



「シュレッドさんからのお詫びでもあるんだけどさ」



 そう言われて案内されたのは、ジェマの部屋。いつものベッドの隣に置かれた、なにやら大きめの椅子。ジェマがとりあえず座ってみると、ラルドが少し位置を調整する。するとジェマの身体がすっぽりと椅子の中にハマってしまった。



「寝られる椅子。シュレッドさんに依頼されて取り寄せたんだ。本当は作業場に置きたかったけど、それはジェマの保護者の許可が必要かと思ってな」



 その配慮にはジャスパーが大きく頷いた。毎日作業場で眠るような生活をされては堪ったものではない。できる限りお日様の光を浴びてほかほかになったベッドでゆっくり休ませてあげたい親心だ。


 ジャスパーがあまりにも頷くものだから、ジェマは苦笑いを浮かべた。



「使うときだけ持っていくようにすれば良い?」


「ああ。そうしてくれ。それ以外のときに使おうとしたら、我が部屋まで戻すからな」



 人間の力がジャスパーの浮遊魔法に適うわけもない。ジェマは諦めたように笑って、ジャスパーの頭を撫でた。



「ありがとう」


「ふん。後でシュレッドさんにも言っておけよ?」


「うん。分かってる」



 ジェマがしばらく椅子の感触を楽しみ、大人たちがそれを見守っていると、店舗スペースの方から何やらガタンッと大きな音がした。



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