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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 シヴァリーとナンが窓に寄り、ユウがジェマのそばを守る。けれど窓を注視したジェマは、パッと表情を明るくして影に駆け寄った。



「スレイ!」



 ガラガラと窓を開け放つと、そこに立っていたのは、確かにスレイ。スレートの墓を守るためにお留守番をしてくれていた土のゴーレムだ。ジェマに託された任務は毎日の墓参りと掃除。そして墓荒らしが現れたときには敵を殺してでも墓を守る。


 騎士たちは警戒を解く。魔石付与魔道具ではあるものの、ジェマにとっては大切な家族の一員だ。


 声なき守り手は、穏やかに微笑む。その手には近くの丘に生えている花で作った花束。その花束をジェマに差し出し、墓を指さした。



「そうだね。まずはただいまだね」



 ジェマはジャスパーとジェットを見る。ジャスパーは左肩に、ジェットは右肩に飛び乗る。二人を乗せたままスレイから花束を受け取ったジェマは、家の裏手にあるスレートの墓へと向かう。


 スレートの墓石は綺麗に磨き上げられ、お供え物には泥団子と木の実、お水。花で飾られたそこは、周りの草むしりまで丁寧に済まされている。



「スレイ、ここを守っていてくれて、ありがとうね」



 ジェマは背伸びをして、スレイの頭に手を伸ばす。けれど小さなジェマには届くはずもなく。



「ふっ」



 ジャスパーが思わず笑うと、ジェマは頬を膨らませた。スレイはその様子に、静かに身を屈めて膝をつく。ジェマは嬉しそうに笑って、改めてその頭を撫でた。



「ありがとう、スレイ。本当に優しい子だね」



 本来、魔石付与魔道具であるゴーレムには意思が発生しない。けれどスレイは名付けによってジェマの意思を受け従属している。ジェマのように魔力が高い者が名付けを行い、魔石に高い魔力が流されると、主人とした者の性格や意思を写し取る個体が稀に現れる。


 数年に一度のことだが、ファーニスト家では当たり前のこと。スレートが作るゴーレムにもいつも意思が宿っていた。それが珍しいことだと知っていたからこそ、二人はその事実を秘匿としていたけれど。



「それにしても、スレイは大きいな」



 ジャスパーが呟くと、ジェマは胸を張る。



「お父さんより大きいと思うよ」


「威圧感は強いかもな」



 ジャスパーは前脚を組んでうんうんと頷く。ジェマはその様子にホッと息を吐いて目を逸らす。



「サイズ間違えたとは、言えないよねぇ」



 寝かせて作っていたため、寸法を見誤ってしまった。本当はスレートと同じくらいの背丈にする予定だったのだが、どこで数値を測り間違えたのか、気が付かないまま完成させてしまった。



「とにかく、ただいましないとね」



 ジェマはスレイから受け取った花束を、スレートの墓に供えた。ジャスパーも【次元袋】を漁って、保存食用に作っておいた焼き菓子を供える。ジェットはキョロキョロと2人を見て、考え込む。そしてしゅるしゅると糸を吐いて2本の脚で編み編み。



「ピピッ!」



 スレートに会ったことはないけれど、ジェマの大切な人はジェットにとっても大切な人。完成させたのはジェマとジャスパーの形をしたぬいぐるみ。



「ジェットのぬいぐるみも置こうよ」


「ピィ?」



 ジェットが良いのかな、と首を傾げると、ジェマはふわふわの頭を撫でた。



「ジェットだって、家族だもん」


「ピピィ!」



 嬉しそうに2本の脚を上げたジェットは、早速しゅるしゅると糸を吐いてぬいぐるみを作りあげる。ジェットのぬいぐるみと、スレイのぬいぐるみ。スレイは目をキラキラと輝かせて、太くゴツゴツとした指でジェットのふわふわした頭をつつくように撫でる。



「よし、それじゃあ、手を合わせて」



 ジェマに倣って、ジャスパーとジェット、スレイも手を合わせる。その後ろで、シヴァリーたちも手を合わせる。



「ただいま、お父さん。全員無事に帰ってきたよ。それと、おじいちゃんとおばあちゃんにも会えたよ。可愛い孫だって言ってもらえた。すっごく優しい人たちだったよ」



 ジェマは声を弾ませる。初めて会うことができたジェマの家族。血縁がないことを知るシヴァリーは気まずそうに目を逸らす。



「それから、たくさんの人に出会うことができたよ。お父さんが昔会った人とか、たっくさん」


「我も、懐かしい友人に出会えた。契約者にも、会わせてやりたかったな」


「ピピィ!」



 各々旅の報告をして、お参りを終える。そして互いに笑い合って久しぶりの家族の時間を楽しんだ。



「そうか。これも、家族なんだよな」



 シヴァリーは小さく呟く。ナンはその背中を叩く。戦災孤児として生きてきたナンにとっての家族は、第8小隊の面々だ。血縁の家族も大切ではあるけれど、それだけではないことを知っている。ジェマとスレートの間にあるものは知らないはずのナンに励まされて、シヴァリーは自分の浅い考えを笑った。


 ジェマはシヴァリーとラルドを振り返り、家の方を指さした。



「家の探索、続きをしましょう!」


「ああ、案内してやる」



 ラルドが先頭に立って、再び家の中に戻る。その背中を、スレイが手を振って見送った。誰もいなくなると、スレイは墓の前にしゃがみ込む。墓石をジッと見つめ、そっと撫でた。



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