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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 ジェマたちは急いでコマスを出発する。アグリクルトへと繋がる大河に掛かる橋を渡り、山岳地帯へ。マジフォリア王国の中央に聳えるこの山を越えてしまえば、すぐにファスフォリアへ到着する。



「こっちだよ」



 ジェマたちが乗る馬車を先導してくれるのは、エメド。エメドも自分の荷馬車に大量の商品を積み込んでいる。それはレップも同じで、ジェマの用事を片付けつつ自分たちの商売のことも忘れることはない。流石は国が誇る商売人たちだ。


 エメドがいつも使っているという山越えのルートを辿りながら、ジェマはぼんやりと、隣を流れる大河を見つめる。ジャスパーはその視線に気が付くと、ふよふよと飛んでジェマの鼻をくいっと押した。



「本当は、行きたかったんだろう? アグリクルトへ」



 ジャスパーの見透かしたような言葉に、ジェマは肩をすくめた。そして外には聞こえないように声を潜める。



「本当はね。でも、先のことを考えたら、アグリクルトへ行くよりもコマス支部の不正を報告することの方が大切だから」



 ジェマのはっきりとした意思に、ジャスパーは小さくため息を漏らしてその頭を撫でてやる。



「たまには自分のわがままで動いたって良いんだからな?」


「ありがとう。でも、大丈夫。今回ばっかりはレップさんとエメドさんにも協力してもらうんだから。2人の予定を大事にしないとね」



 2人でひそひそと話をしていると、、馬車のそばを守っていたカポックがそっと馬車の中に顔を覗かせた。



「ジェマさん、こっち」



 手招かれて、ジェマはカポックが指差せた方へと視線を向ける。そちらに広がっているのは、広大な運河のそばに見えるたくさんの田畑。



「あれは……」


「アグリクルトです。この山からだと、海の方まで一望できるんです」



 カポックの言葉に、ジェマはごくりと唾を飲む。その様子にカポックは珍しく小さく口角を上げた。



「もし、ジェマさんが行きたいなら。そのときはまた護衛をしたって良いです。任務を貰えるかは分からないですが」



 カポックはどこか照れ臭そうに言うと、手綱を操って馬車から少し距離を取る。ジェマはカポックの言葉に胸がホクホクしていた。


 いきなり決まった王命による護衛を務める騎士たちとの旅。ジェマの常識は騎士たちにとっては非常識であることも多くて、ジェマのやり方に戸惑う様子も多かった。少しずつお互いの要望を伝え合いながら、どうにかここまで無事に、そして互いを尊重しながら旅をすることができた。


 ジェマはホッと息を吐いた。



「楽しい旅になったみたいで、良かった」



 ジェマの言葉にジャスパーも頷いた。



「ああ、そうだな。騎士たちはよく言っていたぞ。他では学ぶことができないことを学ぶことができたと」


「そっか。騎士さんたちの役に少しでも立てたなら、良かったかも」



 ジェマの脳裏に、徐々に魔物の解体技術が上がっていく騎士たちの嬉しそうな顔が浮かぶ。誰もが任務をこなしながらも、ジェマに教えを請うたり、ジェマの戦闘技術を盗もうと鍛錬に身を置いたり。それぞれがそれぞれの方向性でジェマから影響を受けていた。



「私も、良かったな」



 ジェマは小さく呟いて、遠ざかっていくアグリクルトを見つめた。その視線はどこか吹っ切れたようで、ジャスパーはホッと息を吐いた。



「我も良かったと思う。ジェマが、大切だと思える人が増えたからな」



 ジャスパーの言葉に、ジェマは恥ずかしそうに頷く。



「うん。私は、この部隊の騎士さんたちが、みんな大好き」



 ジェマの言葉に馬車の外で声を聴いていたジャスパーとハナナ、カポックは顔を見合わせて笑い合う。


 森の中で家族しか知らずに生きてきたジェマは、友達なんていなかった。けれどこの旅の中で騎士たちと関わる中で、友達というのはこういうものなのだろうか、なんて考えるようになっていた。



「それにね、おじいちゃんとおばあちゃんに会えたのも、嬉しかったな」


「ああ。我もそれは同じだ。スレートのこともきちんと伝えることができたからな」



 ジャスパーは知っていた。スレートが常々実家の両親の身を案じていたことを。自身が王妃から狙われるようになってからは特に。実家の両親を盾に取られでもしたらどうしようかと悩み、王家に実家のことを知られないために帰省を諦めていた。



「いつか、ジェマにも会わせたいんだ」



 ジェマが寝付いた夜中、スレートがそう言ってどこか楽しそうにしていた姿。ジャスパーはそっと瞼を閉じてあの日のスレートの表情を思い出す。父でありながら、息子でもある。二面性を抱えた表情を見たのは、初めてのことだった。



「ジャスパーは、お友達にも会えたもんね。良かった?」


「そうだな。まあ、良かった、かもな」



 ジャスパーは躊躇いながらも頷く。もしもジャスパーたちの力が集まることを誰も恐れないのなら。かつてのように5柱の精霊で旅をしたかもしれない。そんなことを妄想しながらも、ジェマの嬉しそうな笑顔を見ればそんな考えは吹き飛んでしまう。



「色々な出会いがあった、良い旅だったな」


「うん。私もそう思う」



 ジェマとジャスパーは互いに微笑み合う。2人の間に静かな空気が流れる。タイヤが地面とぶつかる音に混じって、ジェマの肩の上でお昼寝をしていたジェットの寝息が馬車の中に響いた。



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