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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 一度騎士団詰め所に戻って、シヴァリーとハナナはジェマの知識を借りながら改善案の提案書を纏めていた。



「熱さ対策に屋根を付けるというのはどうだ?」


「良いかもしれません。ゴミがその高さから出ないように意識することもできますから、そもそも廃棄をしない意識作りにも繋がるかもしれません」



 ハナナの意見にシヴァリーが大きく頷く。そもそも物を壊れるまで使うことができるなら、集積場はなくて良くなる。貧民街の人たちは困るかもしれない。けれど無駄のない社会で人も物も充足するなら、それが本来あるべき姿だ。


 貧民街もいつかはなくなって、皆が平等になる社会。シヴァリーは理想郷を脳裏に思い浮かべると、小さくため息を吐く。結局は金や物を持っている貴族や商人たちが私財を投じて隣人愛を見せないことには何も変わらないことも知っている。



「集積場に管理者を付けることはできませんか? 道具師ギルドと連携をして道具のメンテナンスに対して何か手立てを立てるとか。ここに放棄される前に既に欠損している場合がありますから、そこに対する対応も必要だと思うんです」


「確かに。ここの環境だけが問題とは限りませんからね。ですが、道具師ギルドですか」


「こうなれば、街の安全のためだとか言って、騎士団と道具師ギルド、冒険者ギルド、商業ギルドと、色々集めた方が良いかもな」



シヴァリーは首を傾けて筋を伸ばす。ハナナはその仕草に苦笑いを零した。



「重圧のあまり肩凝りですか?」


「そんなところだな」


「そんなときには、これが良いですよ!」



 商会の叩き売りよろしく、ジェマの腰に下げられた【次元袋】からなにやらボールが付いたタオルのようなものが取り出された。



「これは【すとれっちー】という商品なんですけど、このチャック付きの袋に入っているボールを痛むところに押し当てながらタオルを引いたりスライドさせたりすると、好みの力加減で刺激することができるんです」


「へえ、こんな商品まであるのか」



 ジェマは【すとれっちー】の中からボールと、ボールの位置を固定するために入れてある2つのリングを取り出して、タオルをシヴァリーに手渡す。



「はい! それから、このチャックを開けてボールとリングを取り出しても使うことができます。このリングをタオルの端に通して、リングの間にあるタオルの長さを肩幅に合わせてください。それからリングを握って、横にぐいーっと伸びてみてください」


「こうか?」



 シヴァリーは言われた通りに身体を伸ばす。



「おぉ、これは気持ち良いな。普通に手を組んで引っ張るよりも伸ばし加減が自由で楽だ」


「なるほど。これは良いですね。タオルを手に巻き付けるよりも、このリング独特の柔らかいグリップの方が疲れません」



 調べ物で肩が凝ることが多いハナナも興味津々。普通のタオルでもできるけれど、そこにほんのひと工夫加えられていることでほんの少し楽になる。



「これ、実は私が初めて発明して登録を申請した商品なんです」



 ジェマは小さくはにかんだ。今まであまり市場に出回ったことがないほど、あまりにほんの少しの工夫がされただけ。けれどそこには使う人への配慮がギュッと込められている。



「初めての発明で、どうしてこれを作ろうと思ったんですか?」



 ハナナの問い掛けに、ジェマはどこか気恥ずかしそうに頬を掻く。



「お父さんに、プレゼントしたんです。いつも肩が辛そうだから。お父さんは私からのプレゼントを全部大切に身近なところに置いてくれるんです。だから、ただのプレゼントじゃなくて、お父さんがずっとそばに置いておけるように形を変えられる物の方が良いかと思ったんです」



 ジェマは子どもながら一生懸命に考えた子の商品を、大切そうにシヴァリーから受け取った。



「使わなくなったら普通にタオルとして使っても良いですし、チャックがついている部分を再利用してポーチにすることもできます。そうやって、どんな些細なものでもほんのひと手間で長く使えるようにしたいんです」



 メンテナンスやリメイクの依頼を安く引き受けるのが【チェリッシュ】の特徴。より良いものをより安く。そして長く使える設計をすること。スレートもこだわっていたところだった。


 素材は全て動植物や魔物、精霊たちのおすそ分け。その1つ1つが大切な命だったり、希少なものだったりする。無駄に殺すことなく、好意も無駄にせず。その心の痛みを考えること。スレートのそばでジェマが学んだことだった。



「素材1つ1つにも、道具に関わる全ての人にも。ずっと幸せでいて欲しいんです」



 ジェマの瞳が柔らかく伏せられる。シヴァリーはその表情を見ると肩をすくめて優しく微笑んだ。そしてジェマの頭をぽふぽふと撫でた。



「分かった。ジェマがそう思うのなら、私も頑張るから。一緒に、この街で道具が誰かを不幸にすることがないように、考えてみようか」



 シヴァリーの言葉に、ジェマはパッと表情を明るくした。その無邪気さを含んだ表情に、シヴァリーは少しニヤける。ハナナは思わず小さくため息を漏らしながらも、シヴァリーに1枚の書類を手渡した。



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