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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。4  作者: こーの新


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 ジャスパーが再びシキョウの元に向かってから。ジェマは重力の精霊魔石を入手したらすぐに道具を完成させるため、準備を進めていた。



「魔力回路の構築以外は先にできるからね。ジェット、【次元袋】を作ってくれる? いつものお財布のサイズで」


「ピィッ!」



 ジェットはジェマのお願いに、しゅるしゅると糸を吐き、それをせっせと編んでいく。完成した【次元袋】に、ジェマは木製のプレートを括りつける。ブロックがいくつも並び、大小いくつもの歯車に固定されている。そのすぐ隣には連動して動く木の小さなハンマー。




「ピピィ?」



 ジェットが不思議そうに首を傾げると、ジェマはにこやかに微笑んだ。



「これはね、重力の精霊魔石が感知した重さの数だけハンマーが揺れるんだよ。それに連動して、このブロックが動いて重さを表示できるの」


「ピピィ」



 本来闇に飲まれてしまう【次元袋】には重さの概念が存在していない。けれど重力の精霊魔石であれば闇属性から作られているため、その概念を超越してしまう。さらに精霊たちの力も含めて、普通では在りえないことが実現される。



「問題は、一度増えたらもうその表記が減らないこと。最大重量を提示して証拠にしたいっていう使い道だから仕方がないけど、どうしても使い捨てみたいになっちゃって」



 ジェマが悔しさを滲ませると、ジェットも共感するようにぺしょりとその場に伏せた。


 道具師として、できることならその道具を長く大切に使ってもらいたい。そのために構造を工夫したり、メンテナンスの依頼を受けたりしている。



「今回のことが終わったら、またリメイクしようかな」



 ジェマはぼんやりと窓の外を眺める。街の中心通りにはたくさんの商店が軒を連ね、新しい物がたくさん売り買いされていく。その一方で、街の外れにある集積場にはまだ使えるのに捨てられた物が山積みにされている。



「ちょっと、見にいきたいな」



 ジェマはほんの少しの心の余裕と共に暇を持て余す。ジャスパーが戻るまでの間だけ、と決めてそろりと騎士たちの部屋を覗いた。



「あの、お出かけをしたいのですが」



 すぐにカポックとユウが用意を始める。



「どちらへ?」


「集積場の方へ。この街の道具の再利用について知りたくて」



 ジェマの言葉にカポックの眉間に皺が寄った。



「あそこはスラム街に近い。あまり気安く近づくと、犯罪に巻き込まれざるを得ない。あまり不用意なことはしない方が良い」



 カポックの言葉にユウの手が止まる。その視線がシヴァリーに向けられると、シヴァリーはハナナを見やった。



「ハナナ、同行できるか? 俺も行こうと思うが、情報収集ならハナナもいた方が良い」


「分かりました。用意します」



 シヴァリーとハナナが用意を始めると、ユウの手も動く。カポックはしばらくジッとジェマを見下ろしていたけれど、ジェマは真剣に見つめ返すと諦めたように剣を腰に差した。



「絶対に俺たちから離れないでください。誘拐されれば、たとえ救出できたとしてもその組織を壊滅させない限りには一生追われる身となりますからね」



 カポックの言葉の重みに、ジェマは慎重に頷いて返す。シヴァリーはその様子に小さく微笑んで、ナンに視線を向けた。



「ここのことは任せた。特にジェマの部屋に不審者が侵入することがないように警戒しておいてくれ」


「分かりました」



 ナンが元気よく返事をすると、シヴァリーは大きく頷く。そしてハナナ、カポック、ユウを振り向いた。



「それじゃあ、行くか」


「はい!」



 ジェマを中心にした隊列を組み、集積場へと向かう。そこには案の定まだ使える物たちの姿が。


 すぐそばの貧民街では、この集積場に捨てられたものを使って生活をしている様子だった。



「なるほど」



 ジェマはいくつかの物を拾い集めると、それを全てその場で解体し始めた。



「ジェ、ジェマ? 何をしているんだ?」



 シヴァリーが戸惑った様子で声を掛けるけれど、ジェマは全く気にする様子もなくその中身をよくよく観察した。


 外だけを見るとまだ使えそうだった物たちだったけれど、蓋を開けてみれば中が溶けていたり、何やら黒く変色していたり。



「やっぱりです。ここは直射日光が当たりますから、熱さに弱い部品が使われている道具の劣化が早いんです」


「それが、どうかしたのか?」


「劣化している物を使い続けると、爆発事故や有毒ガスの発生という事態も考えられます。ここでは貧民街の方たちが集積場に集められた物を拾って再利用していることもおおいですから、事故が発生する可能性が高くなります」



 ジェマの言葉にシヴァリーは眉を顰めた。その瞳は憂うように貧民街のほうに向けられる。



「集積場で比較的質の良い物と拾って生活が出来ていることで、どこの街よりも貧民街が栄えているとおもったが。そんな危険があったとはな」



 実際、シヴァリーの言葉は間違いではなかった。他の貧民街が存在する街では、日常生活もままならないような場所も多く存在する。貧民街が存在しない街になれば最も良いけれど、それが実現できない内はコマスの貧民街が最もマシだと誰もが思っていた。


 シヴァリーは少し考え込むと、すぐに顔を上げた。



「すぐに解決策を考えて提案しよう」


「ありがとうございます」



 ギュッと拳を握りしめたシヴァリーを、カポックがジッと見つめていた。



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