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逆神六駆、29年ぶりの登校

 御滝中央高校。

 逆神六駆と小坂莉子が通う学び舎であり、彼らは2年生で同じクラス。

 ついでに出席番号が並んでいる。


 莉子が探索員の試験を受けに行った際、六駆を見て親し気に話しかけたのも、一学期の間彼らが学校行事などで常に列の前後として顔を合わせており、それなりの交流をもって世間話をする程度の関係を構築していたからである。


 なお、六駆は一学期が終わった後に、長い異世界周回者(リピーター)生活をする事になるので、莉子との再会の際も「ああ、昔よく話をしたお嬢さんだ」くらいにしか覚えていなかった。


 さて、二学期が始まる、本日。

 莉子も言っていたように、学生の探索員は、その活動が学業に支障をきたす場合、資格をはく奪される。

 具体的には、学校に行かずダンジョンに潜り続けたり、明らかな成績の低下が見られたりした場合がそれに該当する。


 それでは、我らが主人公、逆神六駆の様子を見てみよう。


「六駆くんってばぁ! もうそろそろ出ないと遅刻しちゃうよぉ! 布団から出てきてってば! もぉ!!」

「嫌だ! 10代の若い子たちって何考えてるか分からないから怖いんだもの!!」


 世界最強の男、学校に行きたくないと未だにごねていた。


「もぉぉぉ! お父さん! おじいちゃん! どうにかして下さい!!」

「よし来た! 莉子ちゃん、任せとけ!」

「ワシらじゃて、六駆の仕事がなくなったら死活問題じゃからのぉ!」


 そんな世界最強の男を学校に行かせたいがために、異世界周回者(リピーター)の先代と先々代が立ち上がった。


「悪く思うなよ! これもお前のためだ! 『彗星銃コメットラル』!」

「じいちゃんも本意じゃないぞ! 『赤火しゃっか』!!」


 布団に包まりワガママを言う子供にスキルを使って躾けようとする父親と祖父。


「何をされても僕は行かない! 『鏡反射盾ミラルシルド』!!」


 その攻撃を見もせずに、はね返す最強の登校拒否者。


「うぉぉぉっ!? お前、お前ぇぇ! 危ないだろう、オレが受け止めなかったら、今度は壁に穴が開いてたぞ!!」

「じいちゃんに火の玉投げ返して来るとか、コンプライアンス的にアウトじゃぞ!!」


 その攻防をじっと見ていた莉子、ここしかないと言う間隙を突く。


「……ふぅ。やぁぁぁっ! 『苺光閃いちごこうせん』っ!!」

「痛いっ!! あああ! 布団がぁ!!」


 逆神家三代が知恵を出し合って作ったスキル『苺光閃いちごこうせん』。

 異世界の神獣の頭を吹き飛ばすほどの威力を持つそれで、六駆の『鏡反射盾ミラルシルド』を貫いた。


 そのまま彼女の放つ熱線は六駆の頭に直撃し、勢いは衰えず布団を焼き尽くした。

 『苺光閃いちごこうせん』を煌気オーラを纏っているとは言え、生身で喰らって「痛い」で済む辺り、六駆の異常さが際立っている。


「ナイスだ、莉子ちゃん! 親父、消火頼む!」

「ワシに任せい! 『大降雨スコーラル』!」


「はいっ! お布団もなくなったことだし、行くよ? 聞き分けがなさ過ぎると、探索員協会に六駆くんの事を言い付けて、除名してもらっちゃうんだからね!!」


「……ちょっと行ったら、すぐ帰るからね?」


 こうして、逆神家の不毛な朝は終わる。

 その場にいる全員がスキルを使い、高度な攻防戦が繰り広げられた。

 軍配は優秀な弟子に上がった。


 ちなみにこの争いの原因は、何度も言うが、六駆が学校に行きたくないからである。


 こんなにしょうもない新たな日常の始まりもなかなかない。

 いい加減にしろ、逆神六駆。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「莉子!? 莉子さん!? 僕、高校でどんな感じだったっけ!? ブイブイ言わせてた記憶はあるんだけど!?」

「普通の男の子だったよ! むしろ、大人しいタイプだったよ!!」


 おっさんは、何故か自分の学生時代を美化する傾向にある。

 だいたい2パターンに分類され、「昔はヤンチャしてさぁ!」と訳の分からぬ功を誇る者と、「自分が学生の頃はあんなにマジメだったのに、近頃の若いヤツは!」と謎のマウントを取る者が存在する。


 六駆おじさんは前者であった。


 なお、彼にとって29年前。

 現世時間では40日ほど前の六駆は、クラスでも目立たないタイプで、非生産的な者の仲間に加わりアニメの話をしたりする、いわゆる陰の者だった。


 当然のことながら、今はもうアニメの話で盛り上がる事もできないので、本物の非生産的な生き物の完成形として、彼は学校のマイナスピラミッドの頂点を極めている。


「おはー! 莉子っち! あれ? 逆神くん? 珍しいね、2人で並んで登校とか!」

「お、おはよー、美姫ちゃん! いや、あの、六駆くんとはそこでたまたま出会って!」


 校門をくぐったところで、バッドエンカウント。

 莉子が友人と出くわした。


 莉子は、「六駆くんをどうにかしなくっちゃ!」という思いと、「でも友達に変な勘違いされたくない!!」という思いが頭の中で交錯し、早速ミスを犯していた。

 これは聡明な彼女には珍しい凡ミスであり、それだけ面倒な師匠の存在が彼女の精神に負荷をかけている事実の証明だった。


「えっ、なになに? 六駆くんって言った! 莉子っち、夏休みの間に逆神くんと何かあったん!? やばっ! 超気になるんだけど!!」


 確かに、夏休みの間に逆神くんとは共犯者同盟を結んで、ついでに異世界にまで出かけて行った仲なので、何かあったかと問われると、あり過ぎて説明ができない。


「ち、違うよぉ! 六駆く……逆神くんとは、同じ探索員だから! そ、そう! たまにダンジョンで顔を合わせてたの!!」


 莉子の友人の美姫は「なるほどー」と納得する。


「そっか! そう言えば、莉子っち探索員になったんだったね! いやいや、数少ない高校生探索員が友達とか、鼻が高いよ! ってか、逆神くんもなんだ!? 意外かも!」


「あ、はい。あの、莉子さんには本当に良くしてもらってまして。もう、彼女なしでは現実世界を生きていけないと言うか。とても大事な人です。はい」


 六駆おじさん、性格が変わっているが、無事に陰キャとしての立ち位置に復帰。

 人間、29年の時を経ても意外と何とかなるものである。


「ちょっとぉ! 六駆くん!! 何を言ってるのかなぁ!?」


 六駆が現世の社会に溶け込もうとすると、ダンジョンで見せる雄々しい獅子の姿は消え去り、子猫のようになるのは莉子も知っている。

 知ってはいたが、失言をするとは聞いていない。


「やばっ! やっぱり2人って特別な関係なんじゃん! 莉子っち、おめでとう!!」

「やっ! ホントに違うの! 全然違うから!! 六駆くんとは何でもないんだってば!!」


「そんな! 莉子、僕を見捨てないで!!」

「うるさいなぁ! 空気を読んで! 後でちゃんと相手してあげるから!!」


 おっさんに空気を読めと無茶な注文をする莉子さん。

 やる気のない中華料理屋にオシャレなイタリアンは作れない。

 そんな事も分からなくなっていると気付いた莉子は、今更ながらに背負い込んだ師匠と言う名のお荷物の重さを実感していた。


 「「もう家に帰りたい」」と、共犯者同盟の意見は一致していたと言う。

「なかなか良かった!」

「続きが気になる!」

「更新されたら次話も読みたい!」


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