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芸術を愛する会

私、メリーナはただ今、アルバート皇太子の婚約者であるルシアーナ・ノーザランド侯爵令嬢と、皇宮の庭園で散歩を楽しんでいます。


皇宮の庭園は誰もが入れる場所という訳では無い。


ではなぜメリーナはこの庭園でのんびり散歩を楽しめているのか。


それはメリーナがルシアーナの義姉(あね)になる予定の人物であり、親しい友人でもあるからだ。


ローレン・ノーザランドと婚約した当時は、お互い見知らぬもの同士、声をかけるのにも遠慮があった。


親しくなったきっかけは『芸術を愛する会』の集まりに参加したことである。


刺繍好きのメリーナは、雑貨店の広告に会員募集中の紙を見つけ、この会の会員になっていたのだ。


皇后陛下主催の会だが、ルシアーナは皇后を手伝い、副主催として会員を(まと)めていた。将来、皇后からこの会を任されるらしい。


二人の趣味は違えど、芸術好きには変わりなく、瞬く間に仲良くなったのである。


◆◆◆


「──だけど、私は花の芸術が好きでしょ。メリーナちゃんを無理に付き合わせているのではと心配なの」


庭園の花を見て、うっとりとした表情で話すルシアーナ。


花からも刺繍の図案を考えられるから、全く退屈ではないわ。


「私は花も好きですよ。普段は入れない庭園に入れて嬉しいですわ」


花の香りも楽しみながらメリーナは答えた。


「それにしても、皇宮の庭園は広いですね。迷子になってしまいそう」


遠くに犯罪者を幽閉する塔が見える。塔からもこの庭園が見えているってことよね。


ローレンが言っていたリアンドル第二皇子にも、この庭園が慰めになっていればいいのに。


「そうね。私も最初は迷子になってしまって。アルバート様に助けられた思い出がありますわ」


「それは、とても心細かったのでは? アルバート皇太子殿下はルシアーナ様にとっての英雄なのですね」


幼い頃の出来事なら、この庭園で迷ったのはさぞかし怖かったことだろう。


私なら泣いていたかもしれないわ。


「そうなのよ! アルバート様は私の英雄であり、初恋の相手なの。アルバート様と婚約できたのは、私の人生最大の幸運だったのですわ」


夢見る表情で語るルシアーナは、誰がどう見ても恋する乙女である。


こんな可憐な女性と結婚できる、アルバート皇太子殿下は幸せ者ね。


皇太子妃教育も熱心に受けていたらしいし、将来は素敵な皇后陛下になると思うわ。


「そろそろ、皇太子殿下とのお茶会の時間ですよね?」


普段の日程から考えると、もうすぐアルバート皇太子殿下の自由時間である。


ルシアーナはアルバートの自由時間に、よく二人だけのお茶会を約束しているらしい。


「……あ! メリーナちゃんとのお話しが楽しくて忘れていましたわ。お兄様を呼びますので、このまま庭園で少しお待ちになっていてくださる?」


伝えて良かった。危うく皇太子殿下を、待ちぼうけさせるところだったわね。


慌てた様子で話すルシアーナに、メリーナは落ち着くように(うなが)す。


「ありがとうございます。皇宮の庭園を楽しめる機会はそうそう無いので、ゆっくりで大丈夫ですわ。私はしばらく庭園を散策させていただきますね」


大輪に咲いている花は、刺繍の図案にとても参考になるわ。もちろん、小さな花々が寄り添って咲いている様子も、刺繍にするにはちょうどいい感じ。


ローレンが来るのを待ちながらも、様々な花に目移りしてしまうメリーナ。


「ちょっとくらい移動しても大丈夫かな……?」


◆◆◆


色とりどりの花を眺めながら、フラフラと歩いていたら道に迷ってしまった。


動かずローレンを待てば良かったかも?


さほど動揺はしてないメリーナだが、自身の浅はかさに少し嫌気がさすのであった。


とりあえず、目立ってる塔を目指して歩いてみよう。


ごめんなさいローレン。私も自力で脱出できるよう頑張ってみるわ!

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