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忘れてしまった私達  作者: 柊 終
序章:高校入学前の出来事
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怪盗と名探偵

「なら俺たちの雇い主も、もう分かってるんじゃない?」

雇われた理由も、あの噂の是否(ぜひ)も、と彼は問う。その金色の瞳を真っ直ぐこちらに向けたまま。

「ええ、貴方たちは先程自分で言っていた"老婦人”に雇われたんでしょう?依頼内容は、『色変わりの蒼玉』の回収と言った所でしょうか」

「当たりも当たり、大正解さ!さすがは名探偵だね」

すぐに返された答えに大して驚いてもいない様子で彼は言う。

そして代わりとばかりにこう問いかけた。


「なら、なんで俺たちはその依頼を受けたと思う?」


そう問われると、黙らざるを得ない。

何故?その言葉だけが頭の中を支配する。

先程覚えた小さな違和感がまた蘇って、私を蝕もうとする。

気持ちが悪い。吐き気さえ出てきそうだ。

「っそもそも、何故答えなければいけないのですか!」

そんなことに、今気づいた。

この質問には、いや、今までの質問にも答えなくて良かったことに。

叫んだ瞬間、さっきまであった違和感と気持ち悪さが吹き飛んでいくのを感じた。

何故だかは分からないが、目の前にいるノワが微かに目を見開いた。

まるで、何かに驚いているかのように。


ふと隣を見ると、そこにいたはずの瑠璃は壁際に立っている青年と何かを話していた。

瑠璃に話しかけようかと迷っていると、青年が私の視線に気づいたのか私の方を見る。

そして、何故か彼の方から針のようなものが飛んできた。

咄嗟に目をつぶって腕で顔を守ったが、針が刺さった衝撃も、痛みも感じない。

恐る恐る目を開けると、私の方に飛んできていた針をノワがつまんで止めていた。


「何のつもりだ?燐灰」

と、ノワが壁際にいる青年に問う。

その声には、さっきまでの声とは違い、静かな怒りが込められていた。

「ブランは俺だけの敵だ、お前のじゃない。他の誰にも譲らない。たとえ仲間だとしても、別の人間が俺が敵だと認めた者に手を出したのであれば排除する。そう言ったよな、俺は」

なんか勝手に私はノワだけの敵になってしまったらしい。

なるとは言っていないのだが。

そのまま突っ立っていると、壁際にいる燐灰と呼ばれていた青年が話し出す。

「安心しろノワ。俺はお前の獲物には手を出さない。さっきのは藍晶がブランは大丈夫か、と聞いてきたから確認ついでに投げただけだ」

大丈夫かっていうのは何についてだろう。

こっちはさっき投げられた針のせいでヒヤヒヤしたのだ。

確認ついでに針なんて投げないで欲しい。

そう思っていると、外が騒がしくなっていることに気づいた。


窓を見ると、大量の警察車両の回転灯の光が、カーテン越しに分かるように赤く光っている。

「うーん、時間切れかな」

背後でそんな声がした。

急いで振り向いても、彼はいない。

「こっちだよ」

声が聞こえた方を見ると、窓を開け放ち、満月が昇った空を背景に手を振っているノワと、そんな彼を見て少し呆れている風の燐灰がいる。

「じゃあね俺だけの名探偵。さっきの問いは、また後で答え合わせしよう」

「色々、迷惑をかけてすまなかった」

それだけ言って彼らは赤い光の海に飛び込み、消えていった。


後日、この美術館の警備員に話を聞いたところ、皆ノワが化けた警備員とは面識がなく、警察も彼らは呼んでいなかったらしい。

まあ、そんなことは終わった話だったが。

1╱27 色々修正

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