宝石の行方
「「はじめまして、怪盗ノワとその助手よ」」
私達は声を揃えて目の前に座っている男と、その背後にいるであろう者に言った。
どうやら言われた本人は驚いたらしい。目を見開いている。
「何を根拠に言っているのかが分かりません。それに、君たちは本当に探偵なのですか?」
あら、本当のことですよと言いながら私達は探偵手帳を取り出す。
そう、私のもう一つの顔は『探偵』だ。
ちゃんとそれを示すものこそが私達が持っている探偵手帳である(これなしで探偵を名乗っている場合、捕まってしまう)。
男は探偵手帳をまじまじと見て本物だと納得したのか
「探偵だというのはわかりました。ですが、私が怪盗ノワだという証拠はあるんですか?」
と言った。
もちろん、それに対する私の答えは
「ありますよ」
だ。証拠はある。ないのに人を疑うのは探偵失格だ。
除名処分になりかねない。
さて、こちらからも攻撃を行うとしよう。
「第一に、あなたが知っているはずのない情報を知っていたこと。これにはあのサファイアの前の持ち主の情報が含まれますね」
「あれは噂で流れてきたことを言ったまでです。噂ですから信じない方が良いかと」
早く認めた方が罪は軽くなるのに、あくまでもしらばっくれるつもりらしい。
ならば…
「第二に、あのサファイアの性質を知っていたことです」
そう言うと、一瞬男は固まった。
「それは、あの紹介文にかいて」
「ありませんよ〜」
言い訳をしようとした男の言葉を瑠璃が遮った。
「あの紹介文にはサファイアだということくらいしか書いてありませんでした〜」
瑠璃の言っていることは本当だ。
実際に見て瑠璃とも共有してあるし、写真も撮ってある。
つまり、
「あなたがあのサファイアの性質を知っているなんてこと、有り得ません」
「それは館長に教えられて」
「有り得ません。あの人が数日しか雇っていない人をすぐに信じるような性格に見えますか?」
そんなことを言うとどこもそうなのだけど、雇い主が数日しか雇っていない人に様々な秘密なんかは教えないだろう(一部、例外を除く)。
きっとあの館長はそうであるはずだ。
「…っなら、私が怪盗だという最大の証拠となるサファイアはどこにあるんですか!!」
追い詰められたのか、狂ったように男は叫ぶ。
だが、それも予想していたかのように彼女は言う。
「今、あなたが身に付けているじゃないですか」
男のベルトに付いている飾りを指さして。
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