侵入者
「遅かったですね、瑠璃」
紙袋片手に小走りでこちらに近づいてくる彼女を見ながら言う。
「そう言わないでくださいよ〜、見つけるの大変だったんですから〜」
そんなことを言いながら紙袋の中身を探っている。
なにか探しているのだろうか。
「てれれてってて〜はい、これ」
変な効果音と共に渡されたものは、小さなケースに入ったコンタクトレンズだった。
「これは……」
「『虹彩変色レンズ』〜。これがあればあっちの仕事も楽にやれるかな〜なんて」
もちろん自分の分も買いましたよ〜と、 のんびりと言う瑠璃。
「よく、こんなのを買えましたね」
だってこのレンズは「裏」でしか流通していない、とても便利な、しかし貴重な代物だからだ。
瑠璃が買いに行った時に「とても素敵なもの」と言ったのも頷ける。
だってこれを使えば別人にだってなれるのだから。
これは見かけ上では一種のカラーコンタクトのように見える。もちろんそれも機能の一つだ。
これにはもう一つの機能がある。
虹彩パターンを変えられるのだ。
虹彩は人によって違い、同じ人などいない。
つまり、虹彩パターンが違ければ同じ顔でも別人になれる、そんな便利なものだった。
そんなものだったこともあり、私は内心偽物でも掴まされたのかと思った。
でも、すぐにその考えを否定した。
この子に限ってそんなことはありえない。
だって彼女は…
「ねぇねぇ月花、あれって私達が出動した方がいいやつです?」
瑠璃から質問が飛んできた。
あれとは…と思っていると、瑠璃が館長たちの方を指した。
「ちょうどレンズがあるから、いいんじゃないですか?月花」
うう…やっぱり見抜かれてた。
「瑠璃にはかないませんね」
そう言うと嬉しそうにする瑠璃。
思わず頭を撫でてあげたくなった。
その時だった。
辺りに警報音が鳴り響いたのは。
『侵入者を発見、1階第六展示室にて侵入者を発見』
そんな機械音声とともに警報がなり続ける。
すぐに警備員と館長が反応し、機械音声が示した場所へ走っていく。
「私達も行きましょうか」
瑠璃も頷き、私と一緒に走り出す。
そして着いたところは美術館の奥の奥、知る人ぞ知るみたいな場所だった。
そして真ん中に置かれたガラスケースの中には展示品などはなく、部屋の中には少数の見物客とガラスケースを見下ろしながら喚いている館長の姿だけが取り残されていた。
出来れば昨日に投稿出来れば良かったんですが、出来なかったので今日投稿
11╱26 瑠璃の口調が違かったので修正。