知らない幼なじみ
レカミア=アメリカに変更しました
「は?」
呆気にとられた顔をしながら小さく呟く曜。
そんな彼を見て、私はさらに言う。
「確か、貴方は中等部からの内部進学生ですよね?ならばこのことも知っているのかと思いましたが……」
一旦そこで言葉を切り、彼の様子を伺う。
まださっき空いた口が塞がっていないようだ。
「そうですか、知らないんですねぇ」
にこりと笑い、そんなことを口にすると、彼の顔がみるみるうちに赤に染まった。
「やめておけ、曜。口喧嘩で月花に勝てるなんて、思わない方がいいぞ」
口を開こうとした曜を灰簾が止める。
「それに、今回はお前が悪い。素直に謝れ」
「そ〜ですよ〜。いくら記憶を失っていたとしても、私たち四人は『あそこ』で生まれ育った、幼なじみなんですから〜」
灰簾に言い返そうとしていた曜は、瑠璃の言葉を聞き、ピシリと固まった。
なんか目すらも動いてなくて、呼吸が止まっているんじゃないかと心配になるくらいだった。
もはや石像か?と思っていると、彼の首がギギ…ギ…と音がしそうなくらいな動きで、こちらを向いた。
「『あそこ』出身の…幼なじみ…?」
さすがに声はロボットみたいに不自然にはならなかったようだ。
だが、先程までの他人を見下すような響きは消え、少しの戸惑いと不安。そして──
(希望?)
何故、と考えようとしたが、それは彼によって遮られた。
「本当に、そうなのか?」
さっき喧嘩を売ってきたとは思えないほど、自信の無い声色だった。
だが彼の目はさっきとは違い、真剣そのもので、私が答えるのをただひたすらに待っている。
(仕方ない)
私は本当のことを言うことにした。
「貴方が言っている場所が、瑠璃が言っている場所と一緒なら本当ですよ。ただ、私が覚えている限り、貴方のような人はいなかったと思いますが…」
そう言うと、彼は私に質問をしようと口を開く。
「なら質問に答えてくれ。そっちのが確認しやすい。とりあえず、『ラピス』は何?」
「『ラピス』は、瑠璃が『あそこ』にいた時に与えられていたコードネーム。レカミア語で瑠璃を表す、『ラピスラズリ』からとられた」
「じゃあ、『ナイト』は?」
「灰簾のコードネーム。レカミア語で灰簾石を表す、『タンザナイト』からとられた…って、いつまで続けるんですか?」
このままやっていたら埒が明かなそうだ。
もうすぐで授業開始十分前になってしまう。
「じゃあ、これで最後だ。俺のコードネームは?」
「は?」
分かるわけがない。さっき知らないって言ってたの、聞こえてなかったのかな?
でも、問題を出されたからには解かねばならない。
ある意味、探偵としての性だろう。
いつの間にか、私は思考の渦に呑まれていった。
『あそこ』でのコードネームの付け方には規則性がある。瑠璃なんかはいい例だろう。
『あそこ』では宝石の名前、もっと詳しく言うと鉱石の名前がコードネームになっていた。
今は、私や瑠璃、灰簾も『あそこ』から逃げたけど、コードネームを皇国読みにしてそこから下の名前の一部をとった。
曜も同じならば、元の宝石の名前が分かればいいのである。案外簡単かもしれない。
その時、ある宝石の名前が頭に浮かんだ。
(直感だけど、いくしかない)
「『ディアン』、でしょうか…」
皇国=日本です
問題
月花のコードネームはなんでしょう
正解は次の後書きか、本編の中で