いつも通りの日常
こちら月花と寝てた男の子視点となります
「じゃね」
そう言って、俺はさっきまで一緒に寝ていた女の子と別れた。彼女も誰かを待たせているらしく、「では」と言って足早に立ち去っていった。
(俺も、あいつ探さないとか…)
そう思いながらその辺を歩く。
すると、あいつはすぐに見つかった。
「おい、助けてくれ曜」
「相変わらずの人気者だな、灰簾」
笑いながらそう言うと灰簾は思いっきり嫌な顔をし、お返しだとばかりに「お前もな」と言う。
「だってこの方が、お互い見つけやすいだろ?」
俺が灰簾を見つけた方法は実に簡単。『人だかりを探す』、これだけだ。
もちろんこんな方法、普通の人間ならできない。
だが、幸い俺たちは世間から見ると『かっこいい男子』になるらしい。
この学校の中等部に入ってから、毎日顔に笑顔を張りつけ、やたら高く甘ったるい声でピーチクパーチク騒いでいる女子に囲まれた。
最初はうんざりしていたが、高等部に入学した今では、もう慣れてしまっていた。
「でも、流石にうるさいからなぁ…」
だから、『これ』を使うのにも躊躇なんてない。
「『散れ』」
そう言った途端に、灰簾や俺の周りに集まっていた女子達が、「もう興味を無くした」とばかりに散っていく。
「すまん、迷惑をかけたな。いつも通りのか?」
ようやく人がいなくなり、自由に歩けるようになった灰簾が言う。
「ああ、もちろん。多分明日か、早くても彼女らがクラスに入ったくらいには解けるようにしといた。つまりはいつも通りだ」
そう返すと灰簾は、「そうか」とだけ言って、掲示板方面に歩いていく。
どうやら見に行くらしい。俺も着いて行くことにした。
まだ貼り出されていないにも関わらず、すごく人が集まっていた。まるでお正月の神社みたいだ。
「これは…見るだけでも一苦労だな」
あんな人混みを抜けないと見れないなんて…。
そんな俺の気持ちを察したのか、「人がいなくなるまで待つか」と聞いてくる。
もちろんイエスだ。あんなところに入って、もみくちゃにされたくない。
ふと、あの人混みの中に、懐かしい人影が見えた気がした。
(誰だ、今のは…?)
いつだったか、誰だったか、思い出そうとしても出てこない。
ただ思い出せるのは、とても大事な人だった、ということくらいだった。