クラス発表
「おや〜?遅かったですね〜月花」
体育館から走ってきた私をニヤニヤしながら見る瑠璃。
「瑠〜璃?」
「なんでしょうか〜?」
知らんぷりしながら聞いてくる。分かってるくせに。
「絶対分かってて起こさなかったでしょ」
「何の事ですか〜?」
またしらばっくれた。
もう、瑠璃ったら。
「そんなことより〜、クラス発表見に行きませんか〜
?もうすぐ発表されますし〜」
口調は同じでも、目は泳いでいる。
すごくわかりやすい嘘だ。本人も分かっててやってるのかな?
仕方ない、乗ってあげよう。
「そうだね、自分が学年の中でどのくらいなのかも分かるし、見に行ってみよっか」
そう言うと瑠璃はほっとした表情になり、
「早く行きましょ〜、掲示板の前がいっぱいいっぱいになってしまいますよ〜」
と言った。
「分かった。早く行こう」
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私達が入学したここ、明長学園は、広い校舎の敷地(すごく広い。屋上に立って見てみると、見渡す限りの全てが学園の土地である)が初等部、中等部、高等部、大学部に分かれている。
これだけでもすごいと思えるが、他にすごいところは沢山ある。
例えば、私達が今朝荷物を運び込んだ寮だろう。
あの寮は特定の部活動に入っていないと入れない、という訳ではなく、誰でも入れるのだ。
もちろん、家賃なんかない。
さらに、バイトもあり(高等部以上のみ)だし、学費も安い。
ただ、デメリットをあげるとするならば、偏差値が高いことと、校内でのクラスは順位順だというところだろうか。
まず一番上にSクラスという、学年で上位5人しか入れないクラスがあり、その次にAクラス25人、Bクラス30人、Cクラス30人と続いていき、最下位のクラスがFクラスである。
クラスは月に1度のテストによって変動し、上のクラスに上がったり、下のクラスに落ちたりもする。
皆、最下位のクラスにはなりたくないようである。
それもそうか、と考えを巡らせていると、
「あっ、発表の人達が来た!!」
という声が前の方から聞こえた。
見ると、大きな紙を持った大人たちが掲示板に紙を貼っていくのが見えた。
皆、それを息を詰めて見守っている。
そして貼り終わったのか、大人たちが撤収していくと同時に、見ていた人達の反応は二つに分かれた。
友達らしき人と抱き合いながら喜んでいる人。
それから、虚ろな目でじっと掲示板をみている人。
私はそのどちらでもなかった。
ただ、Sクラスと書いてあるところに自分と瑠璃の名前を見つけて、
「ぬ?」
思考停止しただけである。