星空と夢
こちら幕間となっております(立ち位置的には2章導入でもいいと思う)。
太陽の光に照らされた草原の中を、私は誰かに手を引かれながら走っていた。
「ほら、こっち。はやくはやく!」
そんな声が私たちを呼ぶ。
私の手を引いている子が、少し手を握る力を強める。
「ごめん、ちょっとだけすぴーどあげるね」
だいじょうぶ?と、拙いながらも聞いてくる。
「うん、だいじょうぶ。はやくるりとかいれんにおいつこう」
黙っていた私も、拙い言葉遣いでそう返す。
すると、少しづつだが確実にスピードが上がり、あっという間に呼んでいた子のところに着いた。
「おそいよ〜げっか〜」
そう私のことを呼ぶのは青い髪の幼い少女だった。
きっと、小さい頃の瑠璃だろう。
「そうだぞ✘✘、もっとはやくでてくるんじゃなかったのか?」
そう、瑠璃の隣に立っている金色の髪の少年が言う。
息を切らしながら私は言う。
「ちがうのかいれん、✘✘はわたしのことまっててくれたの」
久しぶりにその名前を聞いた。
それは、この少年の名前だった。
あの時は大して変わらない身長だったけど、今はどこまで伸びたかな。
そう思いながら見ていると、急に世界が暗転する。
暗い、監獄のような場所。そんな所に私達はいた。
「ねえ皆、ここから出ない?」
その一言で、ここがどんなの場面かなんて察しがついた。
「出れるんですか?月花」
瑠璃がそう問う。
「出れるはずだ。考えてもみろ、瑠璃。俺達の『能力』を最大限活かし切れば出来る。そうだろ?」
灰簾に説明を取られて、しかも質問までもされてしまった。
答えようとする私を遮って✘は言う。
「そういうことだ。とりあえず、出たい人ー、てーあーげホイ」
彼がそう言うと、瑠璃、灰簾、私、それと彼が同時に手を挙げた。
「決まりだな」
と、得意げに彼は言う。
するとまた、世界が暗転する。
そして今度出てきたのは、地平線まで星空が広がり、
地面は土ではなく、水の上に立っているような、そんな空間。
足を一歩踏み出すとそこから水の波紋が広がり、やがて消える。
(ここは…)
「ここは時と世界の狭間。君は生身の人間だから、あまりこんなとこには来ない方がいいよ」
声が聞こえた方を向くと、そこにはこの星空を集めたかのような黒い髪に、柘榴のような赤い瞳の少女が立っていた。
「ここは時と世界が交差する、そんな場所。だから君はここにいてはいけない。大丈夫、元の世界には送ってあげられるから、帰りのことは心配しなくていい。ここのことは君の記憶の中からは消させてもらうけど」
そんなことを矢継ぎ早に言う彼女。
「それじゃ、向こうに送るね」
彼女がそう言うと、私の足下に円が描かれ始めた。
「待って、あなたの名前は…!!」
円が完成する前に、そう叫ぶ。
「私は柘榴。多分忘れるだろうけど名前だけは教えてあげるよ」
丁度そこまでで円が完成してしまい、最後の一言だけ、聞き取ることは出来なかった。
「じゃあね、お母さん」
「まさかお母さんが来るなんて、思ってなかったなぁ。どうやってここに来たんだろ。正規の方法ではないなぁ、どう考えても。正規の方法で来たのであれば、魂に強固なバリアが張られるからなぁ……。誰かに飛ばされてきたのかなぁ。……後でお母さんに聞いてみよう」
─とある少女の独り言