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不承転生  作者: 喜幸
5/5

仲間

5話目です。

誤字などがありましたら、申し訳ありません。

見つけ次第、修正して参ります。

「蓮さんは高校生ですよね?」


「う、うん…途中から学校には行けてなかったけど、3年生だったよ」


「僕は2年生でした。年下ですね」


「そうなんだ…で、でも敬語じゃないくてもいいよ…」


「本当?」


「うん」


「わかった。じゃあ俺も極力普通に話するね」


「…い、印象変わるね」

少し頬を染めながら彼はそう言った


「…いやはや驚いたよ」

唐突に脳内に声が響く


(「!…ずっと聞いてたのか」)


「ああ、君はさっきの口論において、扉越しの、表情すら伺えぬ相手の状況を一瞬で把握し、手段を問わず適切な回答を導き出し続けてみせた。

…彼を解放するという目的のために君は初め本気で殺害も視野に入れてね。」


(「…」)


「ぼくが与えた精神力に加え、人間離れした洞察力と判断力、そしてそれらを組み込んだ常識に縛られない思考回路。

君はあの場面の全てにおいて常軌を逸していた。

神業と言って差し支えないほどにね…ふふ。

しかも、人間離れした洞察力と判断力。これらは先天的なものでは無く、君が自分を隠すため周囲に合わせて生きていくうちに培われたものだろう?素晴らしいよ…」


(「...お前がここまで興奮してるのは初めて見たよ、気味が悪い。」)


「ふふ、久しぶりに喜びを味わったからね。少し取り乱してしまったよ。君はぼくの期待以上だ…」


(「何でいきなり喜び出したのかは知らないが、今は消えてくれ。蓮さんとの会話が済んでいない」)


「え、えっと…どうしたの…?」

その瞬間、ハッとして意識が現実に戻る

「あ、すみません…」

顔を赤くして目を逸らす蓮さんに呼応して心臓が少しだけドキリと鳴る


「…」

ダメだな、これじゃあ友好関係を結ぶ上でも支障が出る。もう二度と意識しないようにしなければ。大丈夫、俺はその術を知ってる。今までだってそうやって生きてきた。自分の心を、誤魔化すんだ...


それから看病をしてくれた家主にお礼を言い、蓮さんと街に出ることにした。

蓮さんは相変わらずキョドりまくりだったけど、お礼をしっかりと言葉にしていた。


蓮さんよりも玄関から先に出ようとすると、「待って」と呼び止められた


「…蓮さん、外やっぱり怖い?」


「う…あ、あの…」


「ん?」


「透くん…」


少怯えているように見えた彼に俺は極力優しい表情でいた


「手、握ってくれない…かな?」


「いいですよ」

少しだけ頬を染める彼に俺は優しく彼に手を差し伸べた。


すると蓮さんは「ありがとう」と微笑み、俺の手を取りながらゆっくりと立ち上がった


握られた蓮さんの柔らかく華奢な両手はほんのりと暖かかった。ほんの少し前の俺だったら彼を意識してしまっていたかもしれない。


「大丈夫」と声をかけながら、左手で蓮さんの手を握り、右手で玄関の扉ののぶを握る。


そのままゆっくりとのぶを回し、扉を開いた。そして外へと踏み出した。


「外だ…!」


「やりましたね、連さん!」


「うん...!君のおかげで僕はまた少し強くなれたんだ...本当に感謝だよ」


「蓮さんの努力あってこそだよ。僕は少し手助けしただけだから。...手、離すけど平気?」


「も、もう少しだけこのままで...」

蓮さんは顔を俯かせて小さくそう呟いた


「わかった。まだこの世界について分からないことだらけだし、こっちの方が俺も安心かも」

街中で手を繋いでいたって特に不都合にはならないし、信頼関係を築く上でも好手だと考え了承した。


そのまま住宅街を歩いたが、その間に平気になったのか自然と蓮さんは手は離し、行く宛もなかったためブラブラと世界を見て回りながら蓮さんと話をした。

「蓮さんはこの世界のどういうことまで知ってる?」


「えっと、ここに来る前神...?って名乗る女の子から色々聞かされたよ。改めて、あれって全部本当の事だったんだね...あ、あと不思議な体験もしたんだ。」


「不思議なこと?」


「うん。窒息して苦しくて仕方なかったのに、目を覚ますと一面真っ白な部屋で気が動転してたのに、あの子が僕に手をかざすと急に落ち着いたんだ。まるで全部がずっと前の記憶だったみたいに整理された。」


「ああ、蓮さんも聞かされたと思うけど、

その神と名乗る女の子は、こっちの世界に連れてきた俺たちに力を与えることが出来て、こっちの世界の人達に先天的に力を与えることも出来るみたいだった。

力を与えられるってことは、その力を自分も使えるってことなんだと思う。

その力はたしか神啓(しんけい)って言ったかな...」


「そっか...僕はそんなところ行きたくないって拒否したのに無理やり連れてこられたんだよね...神様ってみんなあんなに横暴なのかな...」


「そうなんだ…その自称神が言うにはこの世界の神は自分だけだって言ってたよ」


「そ、そうなんだ...ね、ねえ、透くんはその、神様のこと信じる...?」


その事については一度考えたことがある。

そして今、改めて少しだけ考えてみたけど答えは今までと変わりなかった。

「俺は、今のところ信じてるよ。今のところあの神の言うことやることに矛盾は無いし、人間を見下してる辺りが正に神って感じだ。」


「透くんの神様のイメージって一体...」


「まあ信じるにしろ信じないにしろ、現状俺が死ぬ術は無さそうだし...従うしかないんだけどね。」


「えっどういうこと...?」

唖然とした表情でこちらを見つめている


「あ、言ってなかったっけ...俺の与えられた神啓は「死ねなくなる能力」と、「精神強化」...?だっけ。自殺したのに、死ねなくなるなんて笑えるよね...はは。」


「...」

蓮は唖然とした表情で透を見つめる


「...魔王を殺せば俺を解放するって神に約束を取り付けた。それをあいつが約束を守るかは知らないけど...それでも今はそれに縋るしかないかったんだ。」


「そっか...透くんは死ぬために...」

蓮さんは俯いて悲しそうな表情をしていた

「うん...あ、でも安心して。蓮さんが好きに生きていけるようになるまでは必ず生きて付き合うって約束するから。」


「う、うん...」

蓮は引き攣った声で苦笑いを浮かべた


「ああ...それにね、少しだけ、生きることに意味を見い出せる気もしてるんだ。魔王討伐って、この世界にとって大義だと思うし」


「そ、そっか...透くんはすごいなぁ...」

蓮は目を逸らして辛そうな表情を浮かべた


(フォローを入れたつもりだったんだけど...何か間違ってしまったのだろうか...)


「さっきから好き放題言ってくれるじゃないか」

突然頭の中へ響いてきた声

(「...何か用か?」)


「ああ、君が神であるぼくと交信していることは黙っておいてくれ。」


(「ん?隠しておかないといけない理由があるのか?...それに、最初から思っていたが、お前が全員と意思疎通が出来るのならそれで招集するのが一番手っ取り早いだろ。」)


「何でもだ。これは命令だよ。君は断れる出来る立場じゃないはずだ。」


(くそ、偉そうに「...わかったよ」)


「心の中の不服は聴かなかったことにしよう。ふふ...やはり君は従順で助かるよ。」


「ねぇ透くん...」


「あ、なぁに?」


「僕は...今はあんまり元の世界に戻りたいと思ってないんだ」


「そっか、じゃあやっぱりこの世界で暮らしていきたい?」


「...うん。この世界の人達は優しいらしいし、それに...」


「それに?」


「...君と一緒に居られるからね!」

彼は一泊を置いて、勇気を振り絞るようにしてにっこりと笑顔を浮かべた。

朝日が彼の顔を優しく照らし、少し冷たい風が髪をなびかせる。


俺は素直に可愛いと思いながら、「そう言って貰えて嬉しいよ」と微笑を浮かべながら答えた


彼は直ぐに顔を背けてしまったが、またすぐにこちらへ向き直り、可愛らしく笑っていた。


俺たちは歩きながら続ける。

「蓮さん、神から色々聴いたって言ってたよね?」


「うん、透くんもそうじゃないの?」


「ああ...実はなんか時間が押してるとか言われてあんまり聞けなかったんだよね。あのいい加減神。」


「そ、そうなんだ...じゃあ、僕が知ってること教えるよ。」


「そうだね。そうしてくれると助かるよ」


「うん、じゃあまずは...えっと、魔王と勇者の事は知ってるんだよね?」


「ああ、それは...辛うじて教えて貰えた。」

交信の事は悟られないようにしないとだな、面倒くさい縛り付けやがって...


「そっか、じゃあ神様がくれた力...えっと、この世界では神啓って呼ばれてるんだっけ」


「ああ、それについても何となく聴いたな。それは大丈夫」


「うん...じゃあ魔術については?」


「ああ...それはあまり詳しくは知らない。教えて貰えるかな?」


「うん!」

彼は嬉しそうに返事をした


「えっとね、魔術っていうのは、この世界の大気中に蔓延る“魔素(まそ)”っていう物質を一時的に体内に取り込んで、それを魔力に変換して、そこからまた人体を媒介として様々な形に変換させる術のことだよ。」


「本当にゲームの世界みたいだな、その魔術っていうのは誰でも使えるものなのかな?」


「ううん、神啓を受けた者しか扱えない術だって言ってた。ええと、それに付け加えて神啓の特性に近い属性しか扱えないんだっけ...」


「属性?」


「うん、属性。確か全部で四つ。

一番スタンダードな“()”、次に双極をなす“(ひかり)”と“(やみ)”、そして稀有で独立した(とく)

神啓を持つ者はそのどれかに該当していて、その属性固有の魔術を扱えるらしいよ」


「へぇ、俺と蓮さんは何属性なんなんだろ」


「僕は特...らしい」


「え、わかるの?」


「う、うん...神様が言ってた」


「そっかぁ、俺の属性は何かな...神啓の特性が反映されるなら闇とか当てはまりそうだけど...あ、そういえば蓮さんの神啓ってなんだっけ」


「あ、そういえば言ってなかったね...僕は透くんみたいに強力じゃないけど、見ててね」

そう言うと蓮さんは道で立ち止まり、集中するように目を瞑った


「...」

透は何が起こるのか、少し緊張しながら見守った。

そして、次の瞬間...


「...!」

彼が目の前から消えた。

目を瞑ってからは本当になんの前触れもなく、そこに立っていたはずの彼が姿を消したのだ。


「れ、蓮さん...?」

驚いて周囲を見渡していると、

「ぷはぁ!」と息を大きく吐くような音が後ろから響いてきた。

「お、おお」


「はぁ...はぁ...」

今さっきまで俺の目の前にいたはずだった彼はいつの間にか背後で何故か息を切らしていた。


「だ、大丈夫?」


「う、うん...これが...僕の...神啓...」

蓮さんは息を切らしながら辛うじて言葉を発した。


「一旦落ち着いて、そこのベンチで少し休もう」

そういい、蓮さんに肩を貸して道端のベンチに一緒に腰を掛けた。


「ふぅ...ありがとう、落ち着いたよ」

彼は少し紅潮しながら微笑みを浮かべた


「蓮さんの神啓は、“息を止めている間視認されなくなる”ってこと?」


「うん、多分それで合ってると思う。」


「息を止めている間っていうデメリットがきつそうだけど、汎用性のある力だね。」


「うん...ごめん僕、運動もまともにしてこなかったから肺活量も少なくて酷いんだ...」


「...ひとつ、確かめておきたいんだけど蓮さん。」


「...なぁに?」


「蓮さんは俺の魔王討伐に着いてくるって言ってくれたけど、あれは、討伐を手伝ってくれるって受け取ってもいいものなのかなって。

それに、本当に無理に付き合わなくてもいいんだよ?外に出られた今、気が変わったて言うなら蓮さんの好きに生きたっていいんだ。その条件を踏まえた上で、蓮さんの答えを訊きたい。」


「...何言ってるの、気が変わったなんてことひとつもないよ。それに、君の迷惑にならないなら手伝わせても欲しい。

そのためなら運動して、肺活量だって上げるよう努力するよ。

...言ったでしょ?僕は君と一緒に居られるからこの世界に留まるんだって。」

呼吸を落ち着かせた蓮さんは、にこやかに肯定の意を見せてくれた。


肯定の意を有難く受け取りつつ、これまでで一番饒舌になった彼に驚いていると、俺が何かを言い出す前に蓮さんは突然「はい」と言いながら右手を差し出してきた。

「これは...?」


「改めて、これからよろしくねの握手だよ。」

蓮さんは少し照れながらも、はっきりと、嬉しそうにそう言った


「ああ、よろしく蓮さん。」

そうして俺は、彼の手を右手で強く握った。

前回の投稿からかなり時間が空きました。すみません。

物語の大筋は決まったので、投稿頻度は少し回復すると思います。


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