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不承転生  作者: 喜幸
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初めての死

どうもこんにちは、嬉幸(キコウ)と申します。

物語を考えるのが好きで、今回初めて投稿してみました。

完結することがあれば、それなりの長さになるかと思います。投稿頻度は不定期で、週一が目標です。“目標”です。

拙い文章になりますが、

よろしくお願いしますm(_ _)m

九條(くじょう) (とおる) 17歳 高校生。



───死にたい


俺がそう思い始めたのは、恐らく物心ついた時から。

現実に絶望したとか、自分に自信が持てないとか、そういう話ではなくて、ただ単純に生きることが無意味だとしか思えなかった


それでも今まで生きてきたのは、家族や友達に対する負い目や死に伴う苦痛への懸念があったから


今思えば、友達なんて作らなければ良かった。家族とももっと険悪な間柄でいればもっと早くに死ねたかもしれない


だけど今日、ついに覚悟が決まった。


姉がいたが2年前に事故死、

そして丁度先日、両親が事故で死んだ


自分が死神に思える程の身内の不幸ぶり


姉と両親が死んだ時は素直に悲しいと思ったし、ここが一般的にも死ぬに相応しいタイミングだろう


後腐れが残るのは悪いと思うから、

出来るだけ迷惑にならず、確実に死ねると思うこの方法を選んだ


自宅で首吊り。


苦しいと思うけど、苦しくない死に方を調べても出てこなかったし元々詳しくないから仕方ない。


生きたくない人も大勢いるだろうに、世間はその方法を教えてくれない。

死にたがりには厳しい社会なのだ


目の前には膝くらいの高さの脚がある椅子と、天井から吊るされた先端に輪っかを作ったロープ


ロープの強度も確かめたし、準備は万端。

俺は椅子に乗り、ロープに手を掛けた


すると、覚悟を決めた筈の心臓が暴れ、手が震え始めた


(どんくらい苦しいのかな…苦しいのは嫌だな)


深呼吸をしてから、首に輪っかをかける


「うっ…」

(気持ち悪い…)


尋常じゃない状況に吐き気を催し、変な唾液が口内に溢れる


「…っ」

十数秒の葛藤の末、激しい平衡感覚の乱れを感じた俺は焦り、不意に椅子を勢いよく蹴り飛ばしてしまった


その瞬間、重力に従い数cm落下する俺の身体


首に全体重が乗る


「うっ…あ゛っ」



(首の骨が痛い…)(喉が閉まって息ができない…)

(痛い…苦しい痛い…痛い)


思わず両手をロープに掛けそうになるが、踏み止まる

(苦…しい)

(あっ…)


想像以上の苦痛と共に、俺の意識は薄れていった


そして…

目を開けようとすると、どういう訳か瞼を上げるに成功した


「はっ…」

「うっ…あ、はぁ…はぁ…」

思わず両手で首を抑える


何故か首には一切の痛みがなく、酸素も十分に全身を巡っている様子だった


残るのは、精神に刻み込まれた苦痛のみ。

そして、落ち着いてきた頃に顔をあげると俺は真っ白な部屋にいることに気がついた。

一目では広さも曖昧に感じられる程真っ白い部屋。

唖然として周りを見渡していると、一人の女の子がいるのを見つけた


「…!」

警戒して身構える。

中学生くらいだろうか、

白髪に透明な瞳、真っ白の肌と服、

神秘的な雰囲気を纏う彼女はこう言った

「こんにちは」


「え、あ、こんにちは」

容姿に対してあまりに普通な挨拶に思わず挨拶を返してしまった


「私は神様だよ」

淡々と言葉を紡いだ少女

「え、かみ?」

「ああ、神さ」

なんと俺は神に会ってしまったようだ


「君は九條…あぁ」

なにか納得した様子の神に透は疑問符を浮かべる


「いや、失礼した。君は九條 透くんだね」

「は、はい。…じゃあ神様、僕は死んだんですね?」

「ああ、死んだよ」

「…じゃあ、此処は死後の世界とかそういうのでしょうか?」

「まぁそうなるのかな?」


透は混乱する頭を無理やり説得し、辛うじて会話を成立させた


「そして君をここに呼んだのは僕だよ」

「…なぜ僕を?」

「それは、自殺をした君に酷だとは思うけど頼みがあってね」

「…なんですか?」

1ミリも酷だとは思っていなさそうな声音で、申し訳なさそうな表情をする神を見ながら透は尋ねる


「それはね、君がいた世界とは別の世界へ行って、“魔王(まおう)”を倒して、その世界を救って欲しいんだ」


「…え?」

頭の理解が追いつかない


「じゃあそういう訳だから、頑張ってね」

「えっ」

そう神が言った瞬間、俺の意識は朦朧とし始めた

「何…を」


「あ、また自殺しようなんて考えても無駄だからね〜」

「…あ」

神のその言葉を最後に、俺の意識は完全に途切れた


…そして

目を覚ますとそこには広大な森が広がっており、その開けた場所に俺は倒れていた


しかしその森は確かに森ではあるものの、何処か異様な雰囲気を纏い、この世のものでなく感じられた


「ここは…?」


(…あの神は別の世界とか言ってたっけ)


「はぁ…くそが…」


せっかく苦痛を伴って死んだのに、最悪以外の感想が浮かばない

別に世界が変わったって、俺の生きる気力にはならないのだ


(…また首吊りの準備かな)

あの苦痛をもう一度と思うだけで気が重くなる


(…いや、そもそもあの自称神が易々と死なせねくれるとも限らない)


(また戻されて再出発なんて絶対に御免だ。そんなの絶対に病む)


(…魔王を倒せとか言ってたな、

ゲームでしか聞いたことないぞそんな単語…)

(ここに居ても何も始まらないし、何処か近くの町でも探そうかな)


そう考えていたその時、俺の視界は上から落ちてきた何者かによってシャットアウトされた


「!?」


戸惑ったのも束の間、俺は真っ暗な閉塞空間で圧迫され始めていることに気がついた


(なんだ…!?)

未知への恐怖による焦り


まずい、俺の本能がそう訴えた

必死に藻掻こうとするが意味をなさず、周囲の壁が迫ってきていることだけ理解できた


透の全身が迫り来る壁により潰されていく


「がっ…う゛ぁっ!あ゛ぁ゛…!」

(苦しい…痛い!痛い…痛い痛い…!)


ボキッバキバキ

俺の胴部分からなってはいけない音が響く


「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

耐え難い苦痛が俺を蝕んでいく


(痛い…)

(それしか、考えられない…)


──ぐちゃぁ


そんな音を最後に聞き、俺は完全に事切れた


…………


「がはっ!」


目を覚ますと、そこはさっきと変わらない真っ暗闇で閉塞空間だった


(俺は今、死んだはずでは…?)


そんなことを考えたのも束の間、また圧迫が開始する


(やばい…やばいやばいやばい)


(また死ぬ…痛いのが、来る…)


必死に藻掻く


だがその抵抗も虚しく、また痛みが来る


「あ''あ''あ゛あ''っ!!!」


それから程なくして、骨の折れることがして


それから、また痛みに溺れる…


──ぐちゃぁ


目を覚ますと、そこは真っ暗闇の閉塞空間だった。


(痛い…痛かった…)

…俺はどうして動ける?

確かに痛みでどうしようもなく辛いのに、狂ってしまえれば楽だと思うのに、冷静に考える余裕のある自分がいた


そして、また圧力が加わる


「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

(痛い痛い痛い)


──ぐちゃぁ


また痛々しい音がして、俺はまた目を覚ました


(くそっ!どうなってやがる…これもあいつの仕業か…!?それとも俺の頭がぶっ壊れて…?)

(…何にせよ、ここからどうにかして抜け出す方法を考えなければ)


(まず持ち物は…)

真っ暗闇で自分の衣服を漁る


(くそっ、自殺した時の装備のままか)

手触りからして使えるようなものは何も無いと結論づけた


(この状態から何とかしないと…)

(…っ痛い、痛い痛い痛い)

「あ゛っあ゛」


(あっ…また、死ぬ…)


──ぐちゃぁ


また目を覚ました

(いったぁ…まだ続くのかよ…)


次は俺を閉じ込める周りの材質の確認をしようと考え、とりあえず壁に触れた


(なんだこれ)

湿った植物の葉のような、すべすべだ


そして何より、

(意外と柔らかい…?)

優しく押してみると、マットのように沈む


(…試しにぶん殴ってみようか)

「おらっ!」

(いってぇ…!)

殴った瞬間、今まで柔らかかった筈の壁が明らかに硬化するのが分かった


拳を摩り、そしてそろそろタイムリミットだ


──ぐちゃぁ


そこから何回もの死を経験し、試行錯誤を繰り返すが外へ出られる兆しは一向に見えなかった


しかし、どういう訳か俺が絶望することも、狂ってしまうことも決してなかった。


そして30回は死んだかというところで、いきなり俺は外へ投げ出された


「うわぁ!」


何が起こったのか理解出来ず、咄嗟に俺を閉じ込めていた張本人へ目を向けた


「…うあっ」


それは、鋭い牙を持ち、俺が元居た世界でいう植物を巨大化させたような見た目だった。

しかも、それをツルのようなものが上から引っ張っている


その明らかにこの世のものではない…いや、元の世界のものでは無い怪物に透は身動きを取れないでいた


その怪物はこちらに向かうでもなしに、俺が数秒前に排出されたであろう大きな口を閉じながら徐々に上へ上がって行った


「…はぁ、ようやく出られた」

最初に見た森を明々と照らしていた日は、もう暮れかけていた

(…ということは、同じ時間を繰り返していた訳ではないのか)


(あれはあいつの差し金か…?それともこの世界の野生生物なのか?)

(…ああもう、こんな死に損ないを異世界に放り込んで放置とか、なにが神だよ)


頭の中で愚痴っていると急に脳に違和感を覚えた

「失礼するよ」



「なんだ…脳内に、直接…!?」


「さっきはいきなりこの世界に放り出して済まなかったね、何せ後がつかえていたもので。神も身体はひとつしかないんだ」


「…っ」


(この気味の悪い声は…)


「お察しの通り、さっきぶりの神様だよ」


「…っ、神…様、いきなりこんな所に放り出して、第一なんで俺が魔王なんかやっつけないとならないんですか…!」


「この世界の人たちが困っているからさ。君はその人たちを、助ける気はしないのかい?」


「はぁ…しないですね。何の義理があって僕がその人たちを助けなければならいんですか」


「ふふ、義理はないかもね。でも、君は助けざるを得ない筈だよ」

「…?」

「もう察していたようだが、君には“死んだ瞬間に身体を再生する能力”と“精神力を大幅に強化する能力”を与えた」


「…っ!」


(やっぱりか…どうりで心身共に異常なしなわけだ)


「この言葉も、私が与えた力の波長を介し君の脳内へ直接送り込んでいる」


「ぺらぺらと…!だから!魔王を倒して俺になんのメリットがあるんだって聞いてるんですよ!!そんなに助けたいなら、あなたが直々に魔王とやらを倒せばいいでしょ!?」


「…僕自身そうしたいのは山々なのだが、今の私には出来ない。そして、君が魔王を倒すメリットも一切ないね。だけど…倒さないデメリットが君にはあるだろう?」


「…は?」


「君が魔王を倒さない限り、私が与えた能力(呪縛)から君は解放されない。つまり、永遠に“死ねない”んだよ」


「冗談じゃねぇ…!」


「なんで俺がそんな目に遭わなきゃいけないんだよ!!おかしいだろ…!」


「うーん…強いて言えば、君が命を粗末にしたから、かな?」


陽気に、されど不気味な声音でそう応える神

「お前が言っていい言葉じゃないだろ…このクソ神が」


「発言には気をつけたまえ、じゃなきゃ一生死なせてあげないよ?」


「…」


「…まぁ本当のところ、君のように二つの能力に適合するものは極めて希少でね、

二つの能力の相性も、能力と君の性格の相性も良さそうだし、そんな逸材を見逃せなかったのだよ」


「…」


「反論はなしかい?まぁいいさ、僕は弱き者の味方だ。安心したまえ、君にも導きを与える」


「…導き?」


「ああ、君以外にもこの世界へ飛ばされたもの達がいる。その者らの目的も一貫して魔王討伐だ。」


「そのもの達と協力関係を築くことが出来れば、君の死が叶うのもそう遠く無いかもしれないね」


「…」


「先ずはこの森を抜けた先にある都市を目指したまえ、夜ならこの森も安全だろう。

他になにか聞きたいことはあるかな?」


「…約束だ」


「うん?」


「俺を思い通りに操りたければ、全てが終わった後、俺をこの世界(呪縛)から解き放つと約束しろよ…」


「ああ、もちろんさ。

それでは契約は成立、君も魔王を倒すことに尽力してくれるということでいいね?」


「…っ、1ミリも納得出来ないがな…わかったよ」


「よく自分の立場を理解している。君は賢いね」


(くそっ…いちいち腹の立つことを)


「…最後にもうひとつ聞かせてくれ」


「なんだい?」


「お前の目的はなんだ?何故お前は魔王を殺そうとする?」


「…」


「それは勿論、この世界の人々を助けたいからさ」

一瞬の沈黙の後、淡々とそう言葉を紡ぐ神


「この世界の神様がそう思うことは、君にとってそんなに不自然なことかい?」


「…それじゃあ期待しているよ、九條 透」


その言葉が終わると同時に、神が自分の頭の中への接続を解除したことを感覚的に理解した


「…」


正直神の行いにはクソ腹が立って仕方がないが、どう足掻いたって、俺はやつの掌の上。

そう判断するに十分な立場の差を思い知らされた


俺の目的はただ一つ、この全ての世界から逸脱する正真正銘の死。


ならば大人しく操られて、精々早死出来るよう尽くそう


そう決心した俺は、魔王討伐の旅に出るのだった



誤字などがありましたら、申し訳ありません。

見つけ次第、修正して参ります

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