とある一日_2
カナイ村とナオトリ村を結ぶ街道を歩く俺とコットン。
先だってレッドベアがうろついていた場所だ。
普段は行商人や荷馬車などが行き交う賑やかな街道だ。
「先日は魔獣退治ご苦労様でした。」
コットンはにっこりと微笑みながら軽くお辞儀をした。
「いいって、いいって。」
俺は手を振りながら、照れ笑いをする。
「お礼はその日に十分いただいたよ。」
レッドベアを退治したその晩に俺とミアとジャムは
祝勝会と称して、「桃豚亭」で盛大な祝杯をあげた。
しかも店主・・・コットンの親父さんだが、
気前のいい人で、頼んでもないメニューをおまけで沢山提供してくれたのだ。
「桃豚亭の料理は絶品だからね。あの日は盛り上がったな〜。」
「ね〜。ミアちゃん、ほかのお客様にまでお酒おごり始めちゃったしね。」
「いや、おごるのはいいけど、ぜんぶ俺の金なんだよな・・・」
「いいじゃない。報酬よかったんでしょ?ジャムさんから聞いたわ。」
ふふふっとコットンは優しく微笑む。
暖かい日差しを浴びながらゆっくりと歩く俺とコットン。
久々のナオトリ村ということもあり、内心ウキウキしながら歩を進める。
ナオトリ村までの道中は和やかな時間が流れていた。
15分ほど歩くとナオトリ村に到着した。
海に直接面しているため、潮の匂いが微風にのって香ってくる。
海の水面がキラキラと日差しを反射させ、民家の白い漆喰の壁を輝かせる。
『ナオトリ村』は漁業が盛んな漁村であり、新鮮な魚介類がこの村から王国などの都市部へ運ばれる。
「休日だけあって、人が多いな〜。」
人通りの多い目抜通りを歩きながらコットンに話しかける。
「そうね〜。ほとんどが観光客でしょうね。」
ナオトリ村の近くに温泉地としても有名な村があり、各地方から観光客が集まる場所でもある。
近くの温泉にゆっくりした後に、ナオトリ村で美味しい海鮮を愉しむ流れがあるらしい。
「俺も温泉にゆっくり浸かって、体の芯からあったまりたいよ。」
「いいわね〜。私も一緒に浸かろうかしら。」
「・・・おいおい冗談はよしなさい。」
困惑ぎみに注意すると、コットンは口を抑えて控えめに笑った。
出会ってしばらく経つが、彼女は本気とも冗談ともとれない言葉をよくこぼす。
特に最近は先ほどのように返答に困る冗談をよく言うようになってきた。
おっとりした性格なのだろうが、たまに人をからかうようなちゃめっ気もあるらしい。